意味
「閑雲野鶴(かんうんやかく)」とは、地位や名声といった世俗的な欲を捨て去り、自然の中で自由気ままに暮らす様子という意味です。
大空を漂う雲と野原に遊ぶ鶴の姿を重ね合わせており、しがらみのない隠遁生活への憧れや、恬淡とした穏やかな感情が込められています。
- 閑雲(かんうん):静かに浮かび風に漂う雲。
- 野鶴(やかく):人に飼われず野山で遊ぶ鶴。
語源・由来
出典は、中国の書物『全唐詩話』に記された、唐の僧侶・貫休の逸話です。
ある時、貫休が時の権力者に自作の詩を献上したところ、「詩の『十四州』を『四十州』に書き直せば会ってやる」と理不尽な要求をされました。
しかし貫休はこれをきっぱりと拒絶します。
そして、「私は静かに浮かぶ雲や一羽の鶴(閑雲孤鶴)のようなもの。どこの空へでも飛んでいけます」と言い放ち、その場を去りました。
権力に媚びず、自らの信念のままに生きたこの気高い振る舞いから、世俗に縛られない自由な境地を表す言葉として定着したと考えられています。
使い方・例文
「閑雲野鶴」は、定年退職後などの悠々自適な生活や、出世を望まないマイペースな生き方を指す場面で使われます。
- 定年後は田舎に移り、閑雲野鶴の日々を送る。
- 都会の喧騒を離れた閑雲野鶴の暮らしに憧れる。
- 彼は出世に興味がなく、まさに閑雲野鶴の境地だ。
類義語・関連語
「閑雲野鶴」と同様に、自然のままに自由に過ごす状態を表す言葉には以下のようなものがあります。
「閑雲野鶴」と類義語の違い
いずれも世俗を離れた自由な生活を指しますが、生活の実態が伴うかどうかに決定的な違いがあります。
| 語句 | 重視する要素 | 具体的な行動の有無 | ニュアンス |
|---|---|---|---|
| 閑雲野鶴 (かんうんやかく) | 自然との調和・無欲 | なし (心のありよう) | 孤高・浮世離れ |
| 悠々自適 (ゆうゆうじてき) | 心の平穏・気ままさ | なし (生活全般) | 穏やか・満ち足りた |
| 晴耕雨読 (せいこううどく) | 自然に合わせた 労働と教養 | あり (耕作と読書) | 実践的・素朴 |
対義語
「閑雲野鶴」とは対照的に、欲にとらわれた状態を表す言葉には以下のようなものがあります。
- 名利奔走(みょうりほんそう):
名誉や利益を得るために、あくせく走り回ること。 - 汲々忙々(きゅうきゅうぼうぼう):
心に余裕がなく、一つのことに必死になって立ち働くさま。
英語表現
(as) free as a bird
鳥のように何にも縛られず、したいようにできるという意味の英語の言い回し。
束縛の無い点は「閑雲野鶴」と重なるが、俗世間を離れて暮らすという意味は含まない表現。
Since he retired to the countryside, he has been as free as a bird.
(退職して田舎に移ってから、彼は鳥のように自由に暮らしている。)
閑雲野鶴のもとは、詩の改作を断った貫休の言葉
貫休に詩の書き換えを求めたのは、呉越の建国者である銭鏐だったと伝えられています。
貫休が献上した詩には「一剣霜寒十四州」という句があり、銭鏐は「十四州」を「四十州」に改めれば会おうと言ったといいます。
貫休はこれを拒み、次のように言って立ち去りました。
州亦難添、詩亦難改。然閑雲孤鶴、何天而不可飛
(州を増やすことも詩を改めることもできないが、静かな雲や一羽の鶴のような私に、飛んで行けない空などあろうか。)
貫休はこのあと蜀に入り、蜀の王建に詩を献じて厚く遇されました。
浙江一帯を治めた有力者の要求を退けた貫休の態度が、後の「閑雲野鶴」という言葉につながりました。











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