日々の仕事や人間関係に追われ、「いつかすべてを忘れて、のんびりと暮らしたい」と願うことはありませんか。
世俗のしがらみから解き放たれ、心のままに過ごす自由な境地を、
「閑雲野鶴」(かんうんやかく)と言います。
意味
「閑雲野鶴」とは、世の中の束縛から離れて、自由にのんびりと暮らす心境や生活のたとえです。
名誉や利益にとらわれず、自然の中で悠々と過ごす隠遁(いんとん)者のような生き方を指します。
- 閑雲(かんうん):静かに空に浮かぶ雲。風のまにまに漂う自由な様子。
- 野鶴(やかく):野原に遊ぶ鶴。飼い慣らされておらず、大空を自由に飛び回る鶴。
どちらも「誰にも縛られない自由な存在」の象徴です。
語源・由来
「閑雲野鶴」は、中国の古い詩や文章の中で、俗世間を離れた隠者や高潔な人物の生き様を表現する言葉として生まれました。
唐の時代の詩人・劉長卿(りゅうちょうけい)の詩などにも、これに近い「孤雲将(もっ)て野鶴」という表現が見られ、古くから文人たちの理想像として愛されてきた情景です。
中国では古くから、空を漂う「雲」は無心で自由なものの象徴とされ、「鶴」は俗世に染まらない高貴な鳥とされてきました。
特に「野鶴」は、鶏(ニワトリ)のように人に飼われて餌をもらう不自由な存在との対比として、野生の誇り高さと自由を表しています。
この二つを組み合わせることで、「地位も名声もいらない、ただ雲や鶴のように自由に生きたい」という理想の境地を表現しています。
使い方・例文
現代では、主に「定年退職後の悠々とした生活」や「田舎でのスローライフ」を表す際によく使われます。
また、現役世代であっても、出世競争に関心がなく、マイペースに我が道を行く人を指して使うこともあります。
例文
- 長年勤めた会社を定年退職し、これからは「閑雲野鶴」の生活を送るつもりだ。
- 彼は都会の喧騒を嫌って山奥に移り住み、まさに「閑雲野鶴」の日々を楽しんでいる。
- 出世には全く興味を示さず、趣味に生きる彼の姿は「閑雲野鶴」そのものだ。
類義語・関連語
「閑雲野鶴」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 悠々自適(ゆうゆうじてき):
自分の思うがままに、のんびりと心静かに過ごすこと。「閑雲野鶴」よりも日常会話で広く使われます。 - 晴耕雨読(せいこううどく):
晴れた日には畑を耕し、雨の日には本を読んで過ごすこと。田園での自由な生活のたとえです。 - 行雲流水(こううんりゅうすい):
空行く雲や流れる水のように、物事に執着せず、自然の成り行きに任せて行動すること。 - 孤雲野鶴(こうんやかく):
「閑雲」が「孤雲(ぽつんと浮かぶ雲)」になった形。意味はほぼ同じですが、より孤独感や孤高のニュアンスが強まります。
対義語
「閑雲野鶴」とは対照的な意味を持つ言葉は以下の通りです。
- 名利奔走(みょうりほんそう):
名誉や利益を求め、あちこち走り回ること。世俗の欲にとらわれている状態であり、無欲な「閑雲野鶴」の対極に位置します。 - 汲々忙々(きゅうきゅうぼうぼう):
一つのことに一心に務め励んだり、あくせくと小忙しく立ち働いたりするさま。精神的な余裕がない様子を表します。 - 塵垢の情(じんこうのじょう):
世俗的な名誉や利益を欲しがる心のこと。「閑雲野鶴」が捨て去ろうとする心です。
英語表現
「閑雲野鶴」を英語で表現する場合、自由で静かな生活を表すフレーズを用います。
living a quiet and free life
- 意味:「静かで自由な生活を送る」
- 解説:隠遁生活やスローライフを説明的に表現したものです。最もニュアンスが伝わりやすい表現です。
- 例文:
After retirement, he is living a quiet and free life in the countryside.
(退職後、彼は田舎で悠々自適な生活を送っている。)
free as a bird
- 意味:「鳥のように自由な」
- 解説:何の束縛も受けない自由な状態を表す慣用句です。「野鶴」のイメージに通じます。
- 例文:
Now that the project is over, I feel as free as a bird.
(プロジェクトが終わり、鳥のように自由な気分だ。)
鶴にまつわるエピソード
中国の道教的な思想において、鶴は「仙人の乗り物」とされるほど特別な霊鳥です。
千年の寿命を持つとされる鶴は、単に長生きなだけでなく、俗世の汚れを知らない「高潔さ」のシンボルでもありました。
そのため、役人としての出世コースを捨て、山野に隠れ住む文人たちは、自分自身の姿を誇り高い「野鶴」に重ね合わせ、詩に詠むことを好んだのです。
まとめ
「閑雲野鶴」は、空に浮かぶ雲や野に遊ぶ鶴のように、何ものにも縛られず自由に生きることを表す言葉です。
現代社会において、完全にしがらみを断ち切ることは難しいかもしれませんが、心のどこかに「閑雲野鶴」の精神を持っておくことは大切です。
忙しい日々の中でふと空を見上げたとき、この言葉を思い出せば、少しだけ心の荷物を下ろしてリラックスできるかもしれません。





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