浅瀬に仇波

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ことわざ
浅瀬に仇波
(あさせにあだなみ)
異形:浅瀬に徒波

8文字の言葉」から始まる言葉

中身のない人間の声ほど、やけに耳障りに響くもの。
思慮が浅く、よく喋って騒ぎ立てる人の様子を表す言葉が、
浅瀬に仇波」(あさせにあだなみ)です。

意味

「浅瀬に仇波」とは、考えの浅い人ほど、やたらとよく喋って騒ぎ立てるという例えです。

川の浅瀬で波がパチャパチャと騒がしく音を立てる様子を、中身のない人間が軽薄に振る舞う姿に重ね合わせています。
冷ややかなあきれの感情を込めて使われることが多い言葉です。

  • 浅瀬(あさせ):川や海の水が浅い場所
  • 仇波(あだなみ):風もないのに立つ波や、立ってすぐ消える無駄な波

語源・由来

川の流れに目を向けてみると、水の深さによって波の立ち方がはっきりと違っているのが分かります。
水の深い場所はゆったりと穏やかに流れますが、底の浅い場所では、石などの小さな出っ張りにぶつかるたび、白く泡立って騒がしく音を立てるものです。

昔の人はこの自然の風景を見て、人間の性質とよく似ていると感じました。
そこから、知識や考えが浅い人ほど、少しのことで大騒ぎしたり、知ったかぶりをしてよく喋ったりする様子を自然の川に例えて表現するようになりました。

使い方・例文

実力が伴っていないのに、口数だけは多い人を冷ややかに見る場面で使われます。

  • 会議で最も声が大きいのはいつも彼だが、内容が伴っていない。まさに浅瀬に仇波だ。
  • 大口を叩くわりに結果が出ない。浅瀬に仇波な人間だ。
  • 騒がしいわりに何も決まらない会議は、浅瀬に仇波そのものだ。

類義語・関連語

「浅瀬に仇波」と同様に、中身のない人が騒がしいことを表す言葉には以下のようなものがあります。

  • 空き樽は音が高い(あきだるはおとがたかい):
    中身が空っぽの樽を叩くとよく響くことから、教養のない人ほどよく喋る例え。

「浅瀬に仇波」と「空き樽は音が高い」の違い

どちらも中身のない人がよく喋ることを表しますが、例えのベースとなっているモチーフが異なります。

語句モチーフ
浅瀬に仇波浅い川の流れ
空き樽は音が高い空っぽの容器

対義語

「浅瀬に仇波」とは反対に、実力のある人は静かで落ち着いていることを表す言葉には以下のようなものがあります。

  • 深き川は静かに流れる(ふかきかわはしずかにながれる):
    思慮深い人はむやみに騒ぎ立てたり多弁になったりしない例え。
  • 能ある鷹は爪を隠す(のうあるたかはつめをかくす):
    本当に実力のある人はみだりにそれをひけらかさない例え。

英語表現

Empty vessels make the most sound.

中身が空っぽの容器ほど、叩くと大きな音が鳴るという物理的な事実から、知識や中身のない人ほどよく喋ることを表す定番のフレーズ。

He never stops talking, but says nothing worth hearing. Empty vessels make the most sound.
(喋り続けるが、聞く価値のある言葉が何一つない。まさに浅瀬に仇波だ。)

Shallow streams make the most noise.

「浅瀬に仇波」とまったく同じように、浅い小川ほど大きな音を立てて流れる様子から、思慮の浅い人が騒がしいことを表す表現。

She barely knows the subject, yet lectures everyone around her. Shallow streams make the most noise.
(ほとんど知りもしないのに周囲に講釈を垂れてばかりいる。浅瀬に仇波とはこのことだ。)

西洋にもある「静かな川」の例え

「浅瀬に仇波」の裏返しにあたる「深き川は静かに流れる」と同じ発想は、遠く離れた西洋にも古くから存在します。

英語の格言である「静かな水は深く流れる(Still waters run deep)」はラテン語を起源としており、1400年代の文献にはすでに記録が残されています。劇作家のシェイクスピアも、1590年頃に書かれた歴史劇の中で「川が深いところでは、水が滑らかに流れる」というセリフを残しました。

ただし、シェイクスピアのセリフは人間の落ち着きを表したものではなく、「水面が穏やかに見える人間ほど、心の中に謀反を隠している」という警戒の文脈で使われています。

日本の「浅瀬に仇波」は、9世紀に編纂された『古今和歌集』に収録されている素性法師(そせいほうし)の和歌に由来します。日本のことわざも西洋の格言も、川の流れの深さと波の立ち方という物理的な事実を、人間の内面の例えとして応用しています。

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