意味
「歌は世につれ世は歌につれ(うたはよにつれよはうたにつれ)」とは、歌(流行歌)は世の中の時勢や成り行きにつれて変化し、世の中のありさまもまた、歌の流行に影響されて変化していくという意味です。
「世」は時代や社会情勢を指し、「つれ」は「連れる(伴う、一緒に行く)」という意味です。
時代が歌を生み出し、その歌が人々の心や社会の空気を形作っていくという、文化と社会の相互作用を表現しています。
語源・由来
古典に出典のある言葉ではなく、誰が言い始めたかも分かっていません。
使い方・例文
「歌は世につれ世は歌につれ」は、流行歌の歌詞や曲調と、その当時の社会情勢を関連付けて語る場面で使われます。
- 昭和のヒット曲の力強さを聴くと、まさに歌は世につれ世は歌につれだと実感する。
- 歌は世につれ世は歌につれで、流行歌にSNS時代の悩みが表れている。
- 失恋ソングから公衆電話が消え、歌は世につれ世は歌につれを痛感した。
英語表現
「歌は世につれ世は歌につれ」が持つ「文化と社会の双方向の作用」を完全に表す単一の英語のことわざはありません。
しかし、西洋の芸術論における2つの有名な定型表現を組み合わせることで、それぞれのニュアンスを説明できます。
Art imitates life
意味:芸術は人生(現実)を模倣する。
芸術は現実を写し取るものだという、アリストテレスの模倣(ミメーシス)論の考え方を言い表す表現です。
現実の出来事や人々の感情が作品に取り入れられるという、「歌は世につれ」の側面に当たります。
The movie is a perfect example of how art imitates life.
(その映画は、いかに芸術が現実を模倣するかを示す完璧な例だ。)
Life imitates art
意味:人生(現実)は芸術を模倣する。
オスカー・ワイルドが1889年の評論『嘘の衰退』(The Decay of Lying)で「人生が芸術を模倣するほうが、芸術が人生を模倣するよりはるかに多い」と説いたことで知られる表現です。
作られた歌や芸術が、人々の価値観や社会のあり方に影響を与えていくという「世は歌につれ」の側面を表しています。
Sometimes, life imitates art in the most unexpected ways.
(時として、現実は最も予期せぬ形で芸術を模倣する(影響を受ける)。)
「歌は世につれ」は江戸時代から言い習わされていた
文化3年(1806年)から弘化3年(1846年)までの世の中の出来事を書き留めた見聞録『浮世の有様』に、「歌は世につるゝものとて、古より云習はせ」という一文があります。
(歌は世の移り変わりにつれて変わるものだと、昔から言い習わされてきた)
書き手はこれに続けて、近ごろの流行り歌は遊里や芝居から出たものばかりだと嘆いています。
ここで昔からの言い習わしとして引かれているのは、前半の「歌は世につれる」だけです。
後半まで付いた形は、戦前の1933年刊の『俚諺大辞典』に「歌は世につれ、世は歌につれる」として、前半だけの形と並んで載っています。
「歌は世につれ世は歌につれ」の前半は江戸時代の記録に見え、対句の形も1933年にはすでに辞典に載っていました。










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