あらかじめ用意された台本を読み上げているかのように、一瞬のつっかえもなく言葉が次々とあふれ出てくる人がいます。
そんな見事なまでの流暢な話しぶりを例えたのが、
「立て板に水」(たていたにみず)です。
意味
「立て板に水」とは、すらすらとよどみなく話すことのたとえです。
単に早口であることではなく、途中で言葉につかえたり言いよどんだりすることなく、極めて流暢に言葉が出てくる様子を指します。
基本的には弁舌の巧みさを称賛する言葉ですが、状況によっては「口先だけで誠意がない」という皮肉として使われることもあります。
語源・由来
垂直に立てかけた板に水を流すと、途中でとどまることなく一気に下まで流れ落ちていきます。
「立て板に水」は、この水がよどみなく滑り落ちる物理的な現象を、人の口から言葉がすらすらと途切れずに出てくる様子に例えた言葉です。
使い方・例文
「立て板に水」は、実況や演説、熟練のセールストークなど、話しぶりが非常に滑らかである場面で使われます。
- 緊張しやすい私から見ると、人前で立て板に水のごとく話せる彼が羨ましい。
- 謝罪の場での立て板に水な弁明は、かえって誠意がないように聞こえた。
類義語・関連語
「立て板に水」と似た意味を持つ言葉には以下のようなものがあります。
- 懸河の弁(けんがのべん)
急流の滝のように、よどみなく勢いよく話すことのたとえ。 - 能弁(のうべん)
話しぶりが巧みで、よどみなく滑らかに話すこと。 - 達弁(たつべん)
話すことが巧みで、言葉がすらすらと出てくること。
対義語
「立て板に水」と反対の意味を持つ言葉には以下のようなものがあります。
- 横板に雨垂れ(よこいたにあまだれ)
水平にした板に雨水が落ちるように、言葉がつっかえながらポツリポツリとしか出てこない様子。 - 訥弁(とつべん)
話し方がなめらかでなく、つかえがちなこと。
英語表現
have a silver tongue
意味:巧みな弁舌を持つ、口が達者であること。流暢さと説得力の両方を含む慣用表現。
- 例文:
She has a silver tongue — she can talk her way through anything.
彼女は立て板に水で、どんな場面でも言葉に詰まらない。
rattle off
意味:よどみなく次々と言葉を繰り出すこと。
- 例文:
He rattled off the entire presentation without glancing at his notes.
彼はメモを一切見ずに、立て板に水のごとくプレゼンをやり遂げた。
流暢さが生む不信感
「立て板に水」は本来、見事な話術への称賛ですが、日常会話では「口先だけで誠実さがない」という皮肉として使われることがあります。
人は、相手が言葉を選びながら言いよどむ「間」や「つっかえ」に、感情の動きや真実味を見出す傾向があります。
まるで録音を再生するかのように滑らかな弁舌に直面すると、逆に「あらかじめ用意した言葉ではないか」という警戒心が生まれる。
弁明や謝罪の場でこの言葉がネガティブに響くのは、その皮肉な裏返しです。






コメント