「あの人の説明、まるで立て板に水のようにスラスラと淀みないね。」
「彼女のプレゼンテーションは、いつも立て板に水で聞き入ってしまう。」
このように、誰かが非常によどみなく、滑らかに話す様子を表現する「立て板に水」という言葉。
一体どのような情景から生まれたのでしょうか?
この記事では、「立て板に水」の意味や由来、使い方、そして関連する言葉などを分かりやすく解説していきます。
「立て板に水」の意味・教訓
「立て板に水」とは、弁舌が非常に流暢で、よどみなくスラスラと話すことのたとえです。
立てかけた板(立て板)に水を流すと、途中で引っかかったり止まったりすることなく、一気にサーッと流れ落ちますよね。
その水の流れの様子を、言葉がよどみなく滑らかに出てくる話しぶりにたとえています。
主に、話術の巧みさや弁舌の爽やかさを肯定的に評価する際に使われる比喩表現です。
特に深い教訓を含むというよりは、その話しぶりを見事に描写する言葉と言えます。
「立て板に水」の語源 – なぜ「立て板」?
このことわざの語源は、その言葉通りの情景にあります。
「立て板」、つまり立てかけた板に水を流しかけると、水は抵抗を受けることなく、一気に下まで流れ落ちます。
途中で滞ることがありません。
このスムーズで止まることのない水の流れを、言葉が次から次へとよどみなく出てくる巧みな話しぶりにたとえたのが、この「立て板に水」という表現です。
非常に的確で分かりやすい比喩ですね。
「立て板に水」が使われる場面と例文
この言葉は、人前で話す場面や、説明、弁明など、よどみなく話すことが求められたり、評価されたりする様々な状況で使われます。
- 講演会やプレゼンテーションでの見事な語り口。
- 難しい内容を分かりやすく、スムーズに説明する様子。
- 討論や交渉などで、相手を説得するような流暢な弁舌。
- 都合の悪いことについて、よどみなく言い訳や弁明をする様子(やや皮肉を込めて使われることも)。
- 落語家など、話術のプロフェッショナルの語り。
例文
- 「彼の講演は、まさに立て板に水のごとく、聴衆を引きつけてやまなかった。」
- 「彼女は、複雑な企画内容を立て板に水のように説明してくれたので、よく理解できた。」
- 「彼は問い詰められると、立て板に水で言い訳を始めた。」
- 「さすがプロの噺家(はなしか)だ。立て板に水の語り口に、すっかり引き込まれた。」
「立て板に水」の類義語
流暢な話しぶりを表す言葉は他にもあります。
- 能弁(のうべん) / 雄弁(ゆうべん):
意味:話すことが巧みで、説得力があること。
ニュアンス:「立て板に水」が話し方の「スムーズさ」に焦点を当てるのに対し、こちらは話の内容や説得力も含めて評価する言葉。 - 舌を振るう(したをふるう):
意味:思う存分に弁舌を振るうこと。活発に話すこと。
ニュアンス:勢いよく、積極的に話す様子を表す。 - 滔々と述べる(とうとうとのべる):
意味:水がよどみなく流れるように、言葉が次から次へと出てくるさま。
ニュアンス:「立て板に水」と非常に意味が近く、よどみない話しぶりを表す。やや硬い表現。
「立て板に水」の対義語
話し方が下手だったり、言葉に詰まったりする様子を表す言葉です。
- 口下手(くちべた):
意味:話すのが不得意なこと。また、その人。
※ 流暢さとは正反対の状態。 - 訥弁(とつべん):
意味:話し方がなめらかでなく、途切れがちなこと。口下手。
※ 「立て板に水」とは対照的に、言葉がスムーズに出てこない様子。 - しどろもどろ:
意味:言葉の調子や話の筋道が乱れて、はっきりしないさま。
※ 動揺したり準備不足だったりして、うまく話せない様子。 - 言葉に詰まる:
意味:言うべき言葉が出てこなくて、話の途中で黙ってしまうこと。
「立て板に水」の英語での類似表現
英語には「立て板に水」の直接的な比喩はありませんが、流暢な話しぶりを表す表現はあります。
- talk a blue streak
意味:(直訳:青い稲妻のように話す)早口でよどみなく、立て続けにしゃべること。時には「しゃべりすぎ」というニュアンスも含む。 - eloquent
意味:雄弁な、説得力のある。話術が巧みで人を引きつける様子。 - fluent
意味:流暢な、よどみない。言語などを滑らかに話せる様子。 - speak smoothly / effortlessly
意味:滑らかに話す/楽々と話す。
「立て板に水」に関する豆知識
落語家や講談師、アナウンサーなど、話術を職業とする人たちの見事な語り口を称賛する際によく使われる表現です。
長年の修練によって身につけられた、よどみない語りの技術は、まさに「立て板に水」と言えるでしょう。
まとめ – 「立て板に水」の流れるような弁舌
「立て板に水」は、立てかけた板を水が流れ落ちる様子にたとえて、弁舌が非常に流暢でよどみないことを表す、的確で分かりやすいことわざです。
聞いている人を引きつけるような、見事な話しぶりを肯定的に評価する際に使われます。
基本的には褒め言葉ですが、あまりにスラスラと話す様子が、かえって内容の薄さや不誠実さを感じさせる場合には、皮肉として使われる可能性もゼロではありません。
とはいえ、多くは話術の巧みさへの感嘆を表す言葉として、そのイメージを捉えておくと良いでしょう。
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