意味
「郷に入っては郷に従え(ごうにいってはごうにしたがえ)」とは、新しい土地や組織に入ったら、自分のやり方に固執せず、その場所の風習やルールに従うのが良いという意味です。
自身の価値観を一旦横に置き、その場のやり方に順応することで、周囲との摩擦を減らし、円滑な人間関係を築くための知恵として用いられます。
語源・由来
鎌倉時代後期に成立し、江戸時代の寺子屋で教科書として広く使われた『童子教』の記述に由来します。
その中にある「入郷而随郷、入俗而随俗(郷に入りては郷に随い、俗に入りては俗に随う)」という教えが広まり、現在のことわざとして定着しました。
使い方・例文
「郷に入っては郷に従え」は、新しい環境のルールを受け入れる場面で使われます。
- 転職先では郷に入っては郷に従えで、彼らのやり方に合わせる。
- 郷に入っては郷に従えと言うし、この村のしきたりを守ろう。
- 海外の食文化には驚いたが、郷に入っては郷に従えで挑戦してみた。
類義語・関連語
「郷に入っては郷に従え」と似た意味や関連する言葉には以下のようなものがあります。
- 長いものには巻かれろ(ながいものにはまかれろ):
勢力のある者には逆らわず、大人しく従っていた方が得策であるということ。 - 寄らば大樹の陰(よらばたいじゅのかげ):
力のある者に頼るのが安全であり、利益も得られるということ。 - 住めば都(すめばみやこ):
どのような土地でも、住み慣れればそこが一番良い場所だと思えるようになるということ。
対義語
「郷に入っては郷に従え」と反対の意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 我を通す(がをとおす):
周囲の状況やルールに関わらず、自分の考えややり方を最後まで押し通すこと。
英語表現
When in Rome, do as the Romans do
直訳:ローマにいるときは、ローマ人のするようにしなさい。
意味:自分がいる場所の習慣ややり方に従うべきであるという教え。
I usually eat early, but when in Rome, do as the Romans do.
(私は普段早く食事を済ませるが、郷に入っては郷に従えだ。)
「郷に従え」は訪問の心得の一つだった
『童子教』で「郷に入りては郷に随い」の句が置かれているのは、よその土地や家に入るときの心得を並べたくだりです。
少し前には「入境而問禁(境に入っては禁を問え)」、少し後には「入門先問諱(門に入っては先ず諱を問え)」という句があります。
前の句は、よその土地に入ったら、まずそこで禁じられていることを尋ねなさいという教えです。
後の句は、人の家を訪ねたら、まずその家で口にしてはいけない諱(= 目上の人や先祖の実名)を尋ねなさいという教えです。
『童子教』はこの句に「主人を敬う為なり」と理由を添えています。
この並びは、中国の『礼記』にある「入竟而問禁、入国而問俗、入門而問諱」(国境に入れば禁令を、国に入れば風俗を、家の門に入ればその家の諱を尋ねる)とよく似ています。
「郷に入っては郷に従え」は、よそに入ったら先に尋ねて相手に合わせるという、一続きの作法の一つとして子どもたちに教えられていました。















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