意味
「三幅対(さんぷくつい)」とは、三幅でひと組になる掛け軸、またそれを並べて掛ける形式を指す言葉です。
「さんぶくつい」とも読みます。
転じて、三つがそろってひと組をなすものを指す場合もあります。
- 幅(ふく):掛け軸や絵画を一幅、二幅と数えるときの単位。
語源・由来
「三幅対」は、もともと仏画を掛けるときの形式を指す言葉でした。
中央に信仰の中心となる本尊を置き、その左右に2体の夾侍菩薩(= 本尊の両脇に控える菩薩)を対にして掛けたことに由来し、本尊が何かによって左右の組み合わせが決まっていました。
- 本尊が釈迦のとき:文殊と普賢の2菩薩
- 本尊が弥陀(= 阿弥陀如来)のとき:観音と勢至の2菩薩
- 本尊が薬師のとき:日光と月光の2菩薩
本尊が仏でない場合にも同じ形式が使われ、福禄寿を中央に置いて松竹や鶴亀を両脇に配した組み合わせもあります。
やがてこの形式にならって、仏画以外の三つ組の絵や、三つがそろって一組をなすもの全般にも使われる言葉になりました。
使い方・例文
- 床の間には、本尊を囲む三幅対の掛け軸が静かに掛けられていた。
- 三人の子どもたちは、まるで三幅対のようにいつも一緒に並んで歩く。
類義語・関連語
この言葉と同様に、掛け軸を組みにして数える言葉には、次のようなものがあります。
- 対幅(ついふく):
一対に仕立てた書画の掛け物で、双幅と同じ意味です。
広くは三幅対・四幅対なども含め、組みにした掛け物の総称としても使われます。 - 双幅(そうふく):
二幅で一対になる書画の掛け物です。
対幅とも呼びます。
「三幅対」と類義語の違い
「三幅対」「対幅」「双幅」は、いずれも掛け軸を組みにして掛けることを表す点で共通しますが、指す幅の数に違いがあります。
| 語句 | 幅数 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 三幅対 (さんぷくつい) | 3幅 | 中央の本尊と左右の菩薩による代表的な形 |
| 対幅 (ついふく) | 2幅 (広くは3幅以上も) | 一対の掛け物。広くは三幅対・四幅対なども含めた総称 |
| 双幅 (そうふく) | 2幅 | 二幅で一対の掛け物(対幅と同じ) |
英語表現
triptych
三枚の板を蝶番でつないで一組にした絵、またはその形式を指す語。
三つでひと組の作品や人を指す用法もあり、三幅対の「三つそろって一組をなすもの」という意味にも重なる表現。
The altarpiece was painted as a triptych, with the Virgin Mary in the center panel.
(その祭壇画は三幅対の形式で描かれ、中央の画面には聖母マリアが配されていた。)
国宝「観音猿鶴図」は、南宋の画僧が描いた三幅対
三幅対の実例として知られる作品に、中国・南宋時代の画僧牧谿が描いた「観音猿鶴図」があります。
中央に岩の上に座る白衣観音、向かって右に子を抱いた母猿、左に鶴を描いた3幅の掛け軸で、京都の大徳寺に伝わり、1951年に国宝に指定されました。
観音の図には「道有」、猿と鶴の図には「天山」という印章が押されており、これは室町幕府第3代将軍足利義満がかつて所蔵していたことを示す印です。
桃山時代の画家長谷川等伯は、大徳寺などで牧谿の絵にふれてその画風を学び、独自の水墨画を開きました。

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