意味
「太平楽(たいへいらく)」とは、好き勝手なことやでたらめなことを言って、のんきにしていることや、勝手気ままに振る舞うことを指します。
相手の無責任な物言いや態度をやや呆れながら評するときに使うことが多く、名詞のほか「太平楽な」という形容動詞としても使われます。
語源・由来
「太平楽」は、もともと雅楽の曲名です。
中国から伝わった唐楽の一つで、鎧や兜を身につけた四人の舞人が鉾や太刀を手に勇ましく舞う「武の舞」の代表格とされ、天皇の即位の礼など祝いの席で演奏されてきました。
この曲は悠長な曲とされていました。
ここから、周囲の事情を気にせずのんびりと構える態度になぞらえて、勝手なことを言ってのんきにしている意味に転じました。
使い方・例文
この言葉は、「太平楽を並べる」という形でよく使われます。
- 彼はいつも根拠もなく太平楽を並べて、周りを困らせる。
- 借金を抱えているのに、彼はいつも太平楽な顔をしている。
- みんなが対策に追われる中、彼女だけ太平楽に構えていた。
類義語・関連語
この言葉と同様に、深刻に考えずのんびりと構える様子を表す言葉には、次のようなものがあります。
- 勝手気まま(かってきまま):
他人の迷惑を考えず、自分の思うままに振る舞うこと。 - 左団扇(ひだりうちわ):
働かずに楽な暮らしをすること。 - 安閑恬静(あんかんてんせい):
何の心配もなく、穏やかにのんびりと過ごすこと。
「太平楽」と類義語の違い
三つの言葉はいずれも深刻に考えない態度を表しますが、対象になる場面が異なります。
| 語句 | ニュアンス |
|---|---|
| 太平楽 (たいへいらく) | 無責任なことを気楽に言ったり振る舞ったりする様子 |
| 勝手気まま (かってきまま) | 他人を顧みず自分の思うままに行動する様子 |
| 左団扇 (ひだりうちわ) | 働かずに楽な暮らしができる経済的な余裕 |
| 安閑恬静 (あんかんてんせい) | 心配事がなく心穏やかに過ごす状態 |
対義語
反対に、言葉や振る舞いを十分に慎むことを表す言葉には、次のものがあります。
- 謹言慎行(きんげんしんこう):
言葉や振る舞いを慎重にし、軽々しい言動を慎むこと。
英語表現
英語では、次のような表現が近いニュアンスを持ちます。
talk through one’s hat
知識も根拠もないことを、さも本当のことのように気楽に話す様子を表す表現。
He was just talking through his hat about the new project.
(彼は新しいプロジェクトについて、根拠もなく気楽なことを言っていただけだ。)
「太平楽」の舞と鴻門の会の剣舞
舞楽としての「太平楽」の由来には、諸説があります。
その一つが、秦の末に中国で劉邦と項羽が対峙した「鴻門の会」の剣の舞を模したというものです。
鴻門で開かれた宴で、項羽の武将・項荘は余興と称して剣を抜き、舞いながら隙を見て劉邦を討とうとしました。
これに気づいた項羽の叔父・項伯も剣を持って舞に加わり、自らの体で劉邦をかばい続けたと伝えられます。
この駆け引きは、項荘剣を舞う、意沛公に在りという言葉の由来にもなっています。
太平楽の別名の一つに「項荘鴻門曲」があり、剣を抜いて舞った項荘の名が入っています。
一方で、漢の高祖(劉邦)が項羽を討って天下を統一したさまを描いた曲とする解説もあり、由来は一つに定まっていません。

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