意味
「気息奄々(きそくえんえん)」とは、呼吸が弱りきって、いつ息が止まってもおかしくない状態を表す四字熟語です。
人の体についてだけでなく、会社や国、考え方などが勢いを失い、今にも滅びそうなありさまのたとえにも使われます。
同じ字を重ねた「気息奄奄」という書き方もあります。
- 気息(きそく):息。呼吸。
- 奄奄(えんえん):息が絶え絶えな様子。「奄」はおおう・ふさぐの意。
語源・由来
この言葉は、中国の西晋の時代に李密が皇帝に差し出した文書「陳情表」に登場します。
李密は生まれて半年で父を亡くし、4歳のときに母が再婚して家を離れたため、祖母の劉に育てられました。
のちに晋の武帝から皇太子に仕える役職に任じられましたが、年老いた祖母の世話をする人がほかにいないことを理由に辞退し、その事情を書き送ったのが「陳情表」です。
その中で、祖母の容体は次のように述べられています。
但以劉日薄西山,氣息奄奄,人命危淺,朝不慮夕。
(ただ、祖母の劉は西の山に沈みかけた日のようなもので、息も絶え絶えで命ははかなく、朝のうちに夕方のことも分からないありさまです)
李密は同じ文で、自分は44歳、祖母は96歳だと書き、陛下に尽くす日はまだ長いが、祖母に恩を返せる日は短いと訴えています。
召し出しと祖母の看病との板挟みになった自分の立場を、「狼狽」という語で表したのもこの文です。
使い方・例文
「気息奄々として」「気息奄々たる」の形で使うほか、「気息奄々の状態」のように名詞にかかる形もあります。
- ゴールした選手は気息奄々として、その場に座り込んだ。
- 主力の工場を失い、会社は気息奄々たるありさまだ。
- 山頂にたどり着いたときには、全員が気息奄々だった。
類義語・関連語
この言葉と同様に、弱りきって今にも絶えそうな状態を表す言葉には、次のようなものがあります。
- 青息吐息(あおいきといき):
困り果てたり苦しんだりして、ため息が出るような状態。 - 虫の息(むしのいき):
今にも絶えそうな、弱々しい呼吸。死にかけている様子。 - 半死半生(はんしはんしょう):
ほとんど死にかかっていて、生死の境にある様子。 - 風前の灯火(ふうぜんのともしび):
危険が迫り、今にも滅びたり消えたりしそうな状態。
「気息奄々」と類義語の違い
どれも追い詰められた状態を表しますが、「気息奄々」と「虫の息」は呼吸の弱さそのものに目を向けた言葉です。
「青息吐息」は苦しさから出るため息、「半死半生」は死にかけた体、「風前の灯火」は危険が迫っていることに重きがあります。
| 語句 | 中心にあること | 主に使われる対象 |
|---|---|---|
| 気息奄々 (きそくえんえん) | 呼吸が弱り、息が絶えそう | 人の体、転じて組織や国 |
| 青息吐息 (あおいきといき) | 苦しさで出るため息 | 困りごとを抱えた人や商売 |
| 虫の息 (むしのいき) | 今にも絶えそうな呼吸 | 死にかけた人や動物 |
| 半死半生 (はんしはんしょう) | 生死の境にある体 | 大けがをした人など |
| 風前の灯火 (ふうぜんのともしび) | 危険が目の前に迫ること | 命や組織、地位など |
英語表現
at one’s last gasp
最後のひと息のところにある、という直訳どおり、死にかけている様子や、力が尽きかけている様子を表す言い回し。
The old man was at his last gasp.
(その老人は気息奄々としていた。)
on its last legs
倒れる寸前の足で立っている様子から、物や組織がつぶれかけている状態を指す表現。
The company is on its last legs.
(その会社は気息奄々たるありさまだ。)
「気息奄々」の陳情表を読み、武帝は召し出しを取りやめた
歴史書『晋書』の李密の伝記によると、武帝は「陳情表」を読んで、次のように言いました。
士之有名,不虛然哉
(名の知られた人物というのは、評判だけのものではないのだな)
武帝はそのまま李密の召し出しを取りやめ、李密は祖母のもとにとどまりました。
祖母が亡くなって喪が明けたあと、あらためて同じ役職で都の洛陽に召されています。
ただ、その後の出世は思うようにいきませんでした。
朝廷に後ろ盾がないまま漢中の太守(= 郡の長官)に回されたことを恨み、宴の席で詩を作るよう命じられた際に、朝廷に身内がいないなら故郷で田を耕すほうがよい、という意味の句を詠みました。
この句が武帝の怒りを買い、李密は官職を解かれて、そのまま家で亡くなっています。

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