意味
「手の舞い足の踏む所を知らず(てのまいあしのふむところをしらず)」とは、うれしさのあまり、思わず小躍りしてしまうという意味です。
手が舞い、足が地を踏んでいるのに自分では気づかないという言い方で、喜びで我を忘れ、有頂天になっている様子を表します。
また、あわてふためくという意味でも使われます。
語源・由来
この言葉は、儒教の経典『礼記』(= 礼についての記録や論をまとめた書物)の「楽記」(= 音楽について論じた篇)に由来します。
孔子の弟子の子貢が、楽師の師乙に、自分にはどんな歌が合うかを尋ねました。
師乙は性格ごとにふさわしい歌を挙げたあと、歌とは何かを説いて答えを結びます。
その結びにある、次の一節が由来です。
故歌之為言也,長言之也。說之,故言之;言之不足,故長言之;長言之不足,故嗟嘆之;嗟嘆之不足,故不知手之舞之,足之蹈之也。
(だから歌というものは、言葉を長く引きのばしたものです。うれしいから言葉にし、言葉で足りないから長く引きのばし、引きのばしても足りないから感嘆の声をあげ、それでも足りないと、手が舞い足が踏み鳴らされるのにも気づかなくなるのです。)
喜びが言葉に収まりきらず、ついには体が踊り出すという、歌と舞の起こりを述べた一節です。
日本語の「手の舞い足の踏む所を知らず」は、このうちの「不知手之舞之,足之蹈之」を訓読した形です。
使い方・例文
喜ぶ意味では、「手の舞い足の踏む所を知らず喜ぶ」のように、後ろに動詞を続けて使うこともできます。
- 志望校の合格発表で番号を見つけ、弟は手の舞い足の踏む所を知らず喜んだ。
- 初孫が生まれたと聞いて、祖父は手の舞い足の踏む所を知らずという様子だった。
- 突然の停電に店員たちは手の舞い足の踏む所を知らず、客の誘導も忘れていた。
類義語・関連語
喜んで小躍りする意味の語と、あわてふためく意味の語に分かれます。
- 欣喜雀躍(きんきじゃくやく):
スズメが跳ねるように小躍りして喜ぶこと。 - 狂喜乱舞(きょうきらんぶ):
我を忘れて踊り回るほどの大喜び。 - 有頂天(うちょうてん):
喜びで舞い上がり、ほかのことが目に入らない状態。 - 周章狼狽(しゅうしょうろうばい):
ひどくあわてふためくこと。
英語表現
jump for joy
喜びのあまり跳び上がるさまを表す英語の決まった言い方。
She jumped for joy when she heard the news.
(その知らせを聞いて、彼女は手の舞い足の踏む所を知らず喜んだ。)
「手の舞い足の踏む所を知らず」の前に、性格別の歌が並ぶ
師乙は、この一節の前で、どんな人にどの歌が合うかを性格ごとに答えています。
挙げられているのは、『詩経』の分類名である頌・大雅・小雅・風などです。
- 寬而靜、柔而正者宜歌頌:
心が広く静かで、柔らかく正しい人は頌。 - 廣大而靜、疏達而信者宜歌大雅:
度量が大きく静かで、物事に通じ誠実な人は大雅。 - 恭儉而好禮者宜歌小雅:
つつしみ深く礼を好む人は小雅。 - 正直而靜、廉而謙者宜歌風:
正直で静か、清廉で謙虚な人は風。
このあと師乙は商・斉の歌について述べ、歌の調子の上げ下げを形容したうえで、「不知手之舞之,足之蹈之」の一節で歌の起こりを述べて答えを締めくくっています。
なお、原文で「踏む」にあたる字は「踏」ではなく「蹈」です。

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