初めてのキャンプや海外留学など、不安そうな我が子の背中をあえて遠くから見守る時、親の胸には言葉にならない葛藤が生まれます。
手助けをしたい気持ちを抑え、成長を信じて突き放す。
そんな親の深い愛情のあり方を、「可愛い子には旅をさせよ」(かわいいこにはたびをさせよ)と言います。
意味・教訓
「可愛い子には旅をさせよ」とは、子どもが大切であるならば、親元で甘やかして育てるよりも、世の中の厳しさや苦労を経験させるべきだという教訓です。
苦労を知らずに育つと、将来困難に直面した際に乗り越える力が備わりません。
あえて試練を与えることこそが、真の意味で子どものためになるという教育的視点が込められています。
語源・由来
「可愛い子には旅をさせよ」の由来は、交通機関が発達していなかった時代の「旅」の過酷さにあります。
かつての旅は、野宿や空腹、病気、あるいは盗賊の襲撃といった命の危険が常に伴うものでした。
目的地にたどり着くこと自体が、強靭な精神力と知恵を必要とする「修行」だったのです。
親にとって、愛する我が子をそのような危険な環境へ送り出すのは断腸の思いでした。
しかし、その厳しい経験こそが一人前の大人として生き抜く力を養う唯一の道であるという、生活の知恵がこの言葉を生みました。
使い方・例文
子どもの自立を促す場面や、若者に対してあえて厳しい環境を用意する正当性を述べる際によく使われます。
例文
- 一人暮らしをさせるのも、可愛い子には旅をさせよの精神だ。
- 可愛い子には旅をさせよと言うし、夏休みのキャンプには一人で参加させよう。
- 親元を離れての進学は、まさに可愛い子には旅をさせよだ。
- 息子に厳しい家事の手伝いをさせるのは、可愛い子には旅をさせよという親心からだ。
類義語・関連語
「可愛い子には旅をさせよ」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 獅子の子落とし(ししのこおとし):
ライオンは我が子を深い谷底へ突き落とし、自力で這い上がってきた強い子だけを育てるという伝承から、厳しい試練を与えて鍛えること。 - 親の甘茶は子に毒(おやのあまちゃはこにどく):
親が子どもを甘やかしすぎることは、結果としてその子の将来を台無しにする毒のようなものだという戒め。 - 若い時の苦労は買ってでもせよ(わかいときのくろうはかってでもせよ):
若いうちにする苦労は将来の貴重な糧になるため、自ら進んで経験すべきだという教え。 - 艱難汝を玉にす(かんなんなんじをたまにす):
人は苦労や困難を乗り越えることによって、初めて立派な人間に磨き上げられるということ。
対義語
「可愛い子には旅をさせよ」とは対照的な意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 掌中の珠(しょうちゅうのたま):
手のひらの中にある宝石のように、片時も離さず非常に大切にしているもののたとえ。 - 箱入り娘(はこいりむすめ):
家の中に大切にしまっておくように、外に出さず世間の苦労をさせずに育てられた娘。 - 温室育ち(おんしつそだち):
厳しい環境を知らず、手厚い保護の下で大切に育てられ、世間知らずであること。
英語表現
「可愛い子には旅をさせよ」を英語で表現する場合、以下の定型句がよく使われます。
Spare the rod and spoil the child.
「鞭を惜しむと子どもはダメになる」
子どもを甘やかし、必要な教育的厳しさを与えないことは、結果としてその子を甘やかしてダメにするという意味です。
- 例文:
My grandmother believed in the saying “Spare the rod and spoil the child.”
(祖母は「鞭を惜しむと子どもはダメになる」という格言を信じていた。)
Travel broadens the mind.
「旅は知見を広める」
「旅」そのものが人間を成長させ、視野を広げるというポジティブな側面を強調する表現です。
まとめ
「可愛い子には旅をさせよ」という言葉は、突き放すことの難しさと、それゆえの深い愛情を教えてくれます。
現代における「旅」は、必ずしも遠くへ行くことだけではありません。初めての習い事、友人との葛藤、自分の責任でやり遂げる掃除。
日常に潜む小さな挑戦の一つひとつが、子どもたちを成長させる「旅」の入り口です。
親が先回りして障害を取り除くのではなく、子ども自身の足で歩ませる。その勇気が、豊かな未来を切り拓く力になることでしょう。





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