感情が激し、つい口を突いて出てしまう激しい言葉の数々。
SNSでの誹謗中傷や、激昂した相手から投げつけられる容赦ない言葉に、心を痛めた経験を持つ人も少なくないでしょう。
品位を欠いた、聞くに堪えないひどい言葉を並べて相手をなじる様子を、
「罵詈雑言」(ばりぞうごん)と言います。
意味
「罵詈雑言」とは、汚い言葉を並べて、相手を激しくののしること、あるいはその言葉自体を指します。
単なる悪口ではなく、ありとあらゆる言葉を動員して、相手を徹底的に攻撃するニュアンスが含まれます。
この言葉は、以下の要素で構成されています。
- 罵詈(ばり):声を荒らげてののしること。
- 雑言(ぞうごん):さまざまな、いい加減な悪口のこと。
「罵」も「詈」も、どちらも「ののしる」という意味を持っており、そこに「さまざまな悪口」を意味する雑言が加わることで、言葉の激しさが強調されています。
語源・由来
「罵詈雑言」の由来は、主に仏教用語や中国の古典に遡ります。
「罵詈」は、仏典において他人を侮辱し、名誉を傷つける罪の一つ(妄語・悪口など)に関連して古くから使われてきました。
また、中国の歴史書『史記』などの古典においても、相手を激しく非難する場面で「罵」や「詈」という漢字が頻出します。
特定のドラマチックなエピソードから生まれた故事成語というよりは、似た意味を持つ漢字を重ねて、その勢いや激しさを表現するために定着した言葉です。
古くから日本でも使われており、現代では主に「度を越した、ひどい言葉の羅列」という状況を指して用いられます。
使い方・例文
「罵詈雑言」は、一方的に激しい言葉を浴びせる、あるいは浴びせられるという極端な状況で使われます。
日常的な軽い口喧嘩ではなく、聞いている側が眉をひそめるような、人格を否定するような激しい文脈に適した言葉です。
例文
- 試合に負けた腹いせに、相手チームに対して「罵詈雑言」を浴びせるのはスポーツマンシップに反する。
- 匿名の掲示板では、特定の個人に対して恐ろしいほどの罵詈雑言が書き込まれていることがある。
- 些細な不注意から、近所の人に「罵詈雑言」を並べ立てられてしまい、すっかり落ち込んでしまった。
類義語・関連語
「罵詈雑言」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 悪口雑言(あっこうぞうごん):
口に任せて、さまざまな悪口を言うこと。 - 罵詈讒誣(ばりざんぶ):
激しくののしり、根も葉もない嘘をついて他人を陥れること。 - 罵倒(ばとう):
激しくののしり、相手をひどくけなすこと。
「罵詈雑言」は並べ立てられる言葉の「多さ・種類」に焦点が当たりますが、「罵倒」は言葉の「勢い・強さ」に重点を置くという微細なニュアンスの違いがあります。
対義語
「罵詈雑言」とは対照的な、相手を敬い称える言葉には以下のようなものがあります。
- 賛辞(さんじ):
相手を褒めたたえる言葉。 - 褒辞(ほうじ):
相手を褒める際に使われる言葉。 - 称賛(しょうさん):
よい点や成果などを、優れていると認めて褒めること。
英語表現
「罵詈雑言」を英語で表現する場合、以下のようなフレーズが使われます。
A stream of abuse
- 意味:「立て続けの罵倒」
- 解説:abuse(虐待、罵倒)が stream(流れ)のように絶え間なく続く様子を表し、日本語のニュアンスに非常に近い慣用表現です。
- 例文:
He unleashed a stream of abuse at the referee.
(彼は審判に対して罵詈雑言を浴びせた。)
Vituperation
- 意味:「罵倒、毒舌」
- 解説:極めて激しい言葉で非難することを指すフォーマルな名詞です。
誤用・注意点
「罵詈雑言」を使う際、いくつか注意すべき点があります。
まず、「雑言」を「雑談」のような軽い意味で捉えるのは誤りです。
あくまで「悪口」のバリエーションを指すため、少し不満を漏らした程度で「罵詈雑言を吐いた」とするのは大げさな表現になってしまいます。
また、この言葉自体に「品位に欠ける」「ひどい」というネガティブな評価が含まれています。
そのため、たとえ相手が間違っていたとしても、「彼に罵詈雑言を浴びせてやった」と公の場で言うと、言った本人の品格まで疑われてしまうリスクがあります。
状況を客観的に説明する際に用いるのが最も適切な使い方と言えるでしょう。
まとめ
激しい言葉を並べて相手をののしる「罵詈雑言」。
この言葉の成り立ちを知ると、それが単なる感情の爆発ではなく、言葉という刃を幾重にも重ねて相手を傷つける行為であることがよくわかります。
言葉には、人の心を癒やす力もあれば、深く傷つける力もあります。
負の感情に流されそうなときほど、この言葉の重みを思い出し、自身の発する言葉を冷静に見つめ直すことが、豊かな人間関係を築く一歩になることでしょう。





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