「あの人が『やる』と言ったなら、もう実現したも同然だ」。
世の中には、そんな絶大な信頼を寄せられる人がいます。
一諾千金(いちだくせんきん)は、たった一度の「うん、わかった」という承諾が、大金にも勝る重みを持つことを表す言葉です。
ビジネスや人間関係において、誠実さを称える最大級の賛辞として使われます。
「一諾千金」の意味
一度した約束には、千金(大金)に値するほどの価値があるということ。
転じて、決して約束を破らない誠実な人柄や、その言葉の重みを指します。
- 一諾(いちだく):たった一言の承諾。「いいよ」と引き受けること。
- 千金(せんきん):千枚の黄金。極めて高価で貴重なもののたとえ。
単に「約束を守る」だけでなく、その人の発言には絶対的な信用があるというニュアンスを含みます。
契約書や担保がなくても、「あの一言があるなら大丈夫だ」と周囲を安心させるほどの信頼関係を表します。
「一諾千金」の語源・由来
この言葉は、中国の歴史書『史記』に記された、漢の時代の武将・季布(きふ)の物語に由来します。
季布は、義理人情に厚い人物として知られ、一度引き受けたことはどんなに困難でも必ず成し遂げる男でした。当時の人々は、彼の実直さを称えてこう言いました。
「黄金百斤(ひゃっきん)を得るは、季布の一諾を得るに如かず」
(黄金百斤を手に入れるよりも、季布のたった一度の承諾を得るほうが価値がある)
黄金は使えばなくなりますが、季布が一度「承知した」と言えば、その約束は確実に守られ、いざという時に必ず自分を助けてくれるからです。
※故事の原文では「黄金百斤(百枚の黄金)」ですが、語呂が良く、より価値の大きさを強調する「千金」という表現に変化して定着しました。
「一諾千金」の使い方・例文
現代では、政治家や経営者など責任ある立場の人の発言や、確固たる信頼関係がある間柄で使われます。
例文
- 「社長の言葉は一諾千金だ。一度やると決めた事業は、どんな逆風でもやり遂げるだろう。」
- 「彼とは10年来の付き合いだが、まさに一諾千金、約束を違えたことは一度もない。」
- 「契約書がない口約束でも安心できる。あの人は一諾千金の人だからね。」
メディアでの使用例
具体的な作品名は挙げませんが、歴史小説やビジネス書のコラムなどで、信頼できるリーダーの資質を説明する際に「一諾千金の重み」といった表現で頻繁に引用されます。
「一諾千金」の類義語
約束や言葉の重みを表す類語です。
- 季布の一諾(きふのいちだく):
由来となった人物の名を冠した言葉。「一諾千金」と全く同じ意味。 - 武士に二言はない(ぶしにごんはない):
日本の武士道に由来する言葉。一度言ったことは取り消さないという強い決意を表す。 - 金石の交わり(きんせきのまじわり):
金や石のように堅固で、決して変わることのない固い友情や約束のこと。
「一諾千金」の対義語
約束を軽んじる様子を表す言葉です。
- 軽諾(けいだく):
深く考えずに安請け合いすること。「軽諾は必ず信寡(すく)なし(安請け合いする者は信用されない)」という老子の言葉が有名。 - 食言(しょくげん):
一度口に出した言葉を飲み込むこと。約束を破る、前言を取り消すという意味。 - 空手形(からてがた):
実行される見込みのない約束。「空約束」とも言う。
「一諾千金」の英語表現
英語圏にも、言葉の価値を「金(ゴールド)」にたとえる表現があります。
His word is as good as gold.
- 意味:「彼の言葉は金と同じくらい確かだ」
- 解説:その人が言ったことは間違いなく実行される、非常に信頼できるという意味の決まり文句です。
- 例文:
You can trust him. His word is as good as gold.
(彼を信用していいよ。一諾千金の人だ。)
A promise is a debt.
- 意味:「約束は借金である(=必ず返さなければならない)」
- 解説:約束を果たす義務の重さを説くことわざです。
まとめ
一諾千金とは、一度した約束には千金もの価値があるとする、最高レベルの信頼を表す言葉です。
古代中国の季布が、黄金よりも尊いものとして「信用」を歴史に刻んだように、誠実さは時代を超えて最も強力な武器になります。
安請け合い(軽諾)をせず、一つの約束を大切に守り抜く姿勢こそが、あなたの言葉に「千金の重み」を与えるのです。







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