天知る、地知る、我知る、人知る

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ことわざ 故事成語
天知る、地知る、我知る、人知る
(てんしるちしるわれしるひとしる)
短縮形:四知
異形:天知る地知る我知る子知る

15文字の言葉て・で」から始まる言葉

誰も見ていない場所で、ほんの出来心からルールを破ったり、隠し事をしてしまったり。
「これくらいなら誰にもバレないだろう」と高を括ってしまう心理は、誰の心にも潜んでいるものです。

そんな時に思い出したいのが、「天知る、地知る、我知る、人知る」という言葉です。
悪事や秘密は、どんなに巧みに隠したつもりでも、必ずいつかは露見するものだという戒めとして、古くから使われています。

意味・教訓

「天知る、地知る、我知る、人知る」とは、誰も見ていないようでも、天地の神々は見ており、自分自身とそこにいる相手は知っているのだから、悪事や秘密は必ず世間に知れ渡るという意味です。

単に「バレるからやめろ」という警告だけでなく、他人の目がなくとも「自分自身の良心」には嘘をつけないという、高い倫理観を説く言葉でもあります。

略して「四知(しち)」とも呼ばれます。

「天知る、地知る、我知る、人知る」の語源・由来

この言葉の由来は、中国の歴史書『後漢書』楊震伝(ようしんでん)にある故事です。

後漢の時代、楊震(ようしん)という非常に学識が高く、清廉潔白な役人がいました。
彼がある任地へ向かう途中、かつて彼が才能を見出して役人に取り立てた王密(おうみつ)という人物が、夜遅くにひっそりと訪ねてきました。王密は恩返しとして、楊震に黄金十金を贈ろうとします。

楊震がこれを受け取ろうとしないと、王密は言いました。
「夜も更けておりますし、このことは誰にも知られません(暮夜知る者無し)。どうぞお納めください」

すると楊震はこう答えて拒否しました。
「天がこれを知り、地がこれを知り、私が知り、あなたが知っている。どうして誰も知らないと言えるのか」

原文では「天知る、地知る、我知る、子(し)知る」と表現されています。「子(し)」は「あなた(王密)」のことです。現在では一般的に分かりやすく「人知る」と言い換えられて定着しました。

この言葉に王密は恥じ入り、黄金を下げて退出しました。この逸話から、秘密は保てないことのたとえとして使われるようになりました。

使い方・例文

「天知る、地知る、我知る、人知る」は、不正や嘘を戒める場面で使われます。
ビジネスにおけるコンプライアンス意識の啓発はもちろん、学校や家庭での「正直さ」を説く際にも適しています。

「誰にもバレないはずだ」という油断を指摘したり、自らの良心に問いかけたりする文脈で用いられます。

例文

  • 誰も見ていないからといってゴミを不法投棄してはいけない。「天知る、地知る、我知る、人知る」と言うだろう。
  • 完全犯罪を目論んだようだが、「天知る、地知る、我知る、人知る」で、結局は内部告発によって明るみに出た。
  • テストでカンニングをしようとしたが、「天知る、地知る、我知る、人知る」という言葉が頭をよぎり、思いとどまった。

類義語・関連語

「天知る、地知る、我知る、人知る」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • お天道様が見ている
    誰も見ていなくても、太陽(神様)は空からすべてを見ているので、悪いことはできないという日本の教え。
  • 壁に耳あり障子に目あり
    隠し事をしようとしても、どこで誰が聞いているかわからないということ。
  • 隠れたるより見わるるはなし
    隠し事は、かえって目立って露見しやすいということ。「見るる(みるる)」とも読みます。
  • 悪事千里を走る
    悪い行いや評判は、あっという間に世間に知れ渡るということ。

英語表現

「天知る、地知る、我知る、人知る」を英語で表現する場合、神や真実が知っているというニュアンスを用います。

God knows all.

  • 意味:「神はすべてをご存知だ」
  • 解説:誰も見ていなくても、神様は見ているというキリスト教的な倫理観に基づく表現です。

The truth will out.

  • 意味:「真実は露見する」
  • 解説:シェイクスピアの『ヴェニスの商人』にも出てくる表現で、秘密はいつか必ず明るみに出ることを意味します。
  • 例文:
    You can’t hide it forever. The truth will out.
    (永遠に隠すことなんてできないよ。真実は必ず露見するんだ。)

「四知」のエピソード

この言葉には「四知(しち)」という別名があります。

由来となった楊震は、この「四知」の精神を貫き、生涯にわたって私腹を肥やすことなく公正な政治を行いました。
そのため、彼の子孫たちはこの言葉を家訓とし、楊家は「四知堂」という堂号(一族の屋号のようなもの)を掲げるようになったと言われています。

単なる「密告への恐怖」ではなく、「自分自身に恥じない生き方」を貫いた楊震の態度は、現代においてもリーダーのあるべき姿として語り継がれています。

まとめ

「天知る、地知る、我知る、人知る」は、悪事や秘密は隠し通せるものではないという戒めであり、同時に自らの良心に従うことの大切さを説く言葉です。

他人の目をごまかすことはできても、自分自身の目をごまかすことはできません。「誰も見ていないから」と甘えが出そうになったとき、この言葉を思い出せば、胸を張って堂々とした行動を選択できることでしょう。

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