経験に裏打ちされた深い読みや、目先の利益にとらわれず数十年先まで見据えた計画。
若手には真似できない、熟練の知恵を感じさせる策に出会うことがあります。
そのような、計り知れない深さと経験の豊かさを表す言葉として、
「老謀遠略」(ろうぼうえんりゃく)があります。
一般的には「深謀遠慮」などがよく知られていますが、この言葉はさらに「老練な経験」というニュアンスを強調したい場面で使われる表現です。
意味
「老謀遠略」とは、経験を積んだ人による深いあざむきごとと、遠い将来のことまで見通した計画のことです。
単なる思いつきではなく、豊富な経験に基づいた巧みな策略であることを強調します。
- 老謀(ろうぼう):
経験豊かな老人、あるいは老練な人によるはかりごと。「老」は年齢だけでなく、経験の深さを称える意味を含みます。 - 遠略(えんりゃく):
遠い先の将来まで見通した計画。「遠謀」とも言います。
言葉の定着度について
「老謀遠略」は、漢字の意味としては成立していますが、「広辞苑」などの主要な国語辞典に見出し語として掲載されていない場合があります。
一般的には、後述する「深謀遠慮」や「老謀深算」という形の方が四字熟語として広く定着しています。
そのため、この言葉を使う際は「造語的な表現」あるいは「やや古風な表現」として受け取られる可能性があることを知っておくと良いでしょう。
語源・由来
「老謀遠略」には、特定の歴史的な物語(故事)があるわけではありません。
中国の古典において、経験豊富な策を指す「老謀」や、長期的な計画を指す「遠略」という言葉がそれぞれ使われており、それらが組み合わさったものと考えられます。
似た構成の言葉として、中国では「老謀深算」(ろうぼうしんさん)という成語が一般的です。
これは「老練なはかりごと」と「深い計算」を意味し、現代でもよく使われています。「老謀遠略」もこれに近い文脈で生まれた表現と言えるでしょう。
使い方・例文
日常会話で頻繁に使われる言葉ではありません。
主に文章語として、ベテラン政治家の手腕、老舗企業の長期経営戦略、あるいは歴史上の軍師の策などを評価する際に使われます。
例文
- 創業者の遺した経営計画は、まさに「老謀遠略」と呼ぶにふさわしく、今の会社の繁栄を支えている。
- 彼の政治手腕は「老謀遠略」に富んでおり、若手の議員では到底太刀打ちできない。
- 一見すると遠回りに見えるその策も、実は彼なりの「老謀遠略」なのかもしれない。
類義語・関連語
「老謀遠略」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
特に「深謀遠慮」は最も一般的で、誰にでも通じやすい表現です。
- 深謀遠慮(しんぼうえんりょ):
深く考えを巡らし、遠い先のことまで見通した計画のこと。ビジネスや日常で最も広く使われる類語です。 - 老謀深算(ろうぼうしんさん):
経験を積んだ人の、周到で深い考えのこと。「老謀遠略」とほぼ同じ意味で、四字熟語としてはこちらの方が辞書に載っていることが多いです。 - 深慮遠謀(しんりょえんぼう):
「深謀遠慮」と同じ意味で、語順を入れ替えた形です。
対義語
「老謀遠略」とは対照的な意味を持つ言葉は、考えが浅いことを指す以下の言葉です。
- 浅知短才(せんちたんさい):
知識が浅く、才能が乏しいこと。 - 浅慮(せんりょ):
浅はかな考え。 - 短慮(たんりょ):
考えが浅いこと。また、気の短いこと。
英語表現
「老謀遠略」を英語で表現する場合、深い計画性や先見の明を表す言葉を用います。
deep design
- 意味:「深い意図」「遠大な計画」
- 解説:”design” には「設計」のほかに「計画」「企て」という意味があります。
- 例文:
It was a deep design by the veteran politician.
(それはベテラン政治家による老謀遠略だった。)
far-sighted policy
- 意味:「先見の明のある政策」「遠大な策」
- 解説:”far-sighted” は「遠くが見える」「先見の明がある」という意味です。
- 例文:
His success is due to his far-sighted policy.
(彼の成功は、その老謀遠略によるものだ。)
言葉の背景
この言葉に含まれる「老」という漢字には、東洋的な価値観が反映されています。
現代語の「老人」には「体力が衰えた」というイメージが含まれることがありますが、漢語における「老」は、「経験を積んで円熟した」「完成された」という尊敬の意味合いを強く持ちます。
「先生」を中国語で「老師(ラオシー)」と呼ぶのもこのためです。
つまり「老謀」とは、単なる「お年寄りの知恵」ではなく、「達人の域に達したプロフェッショナルの戦略」というポジティブなニュアンスを含んでいるのです。
まとめ
経験豊かな深い知恵と、未来を見通す確かな計画性。
それが「老謀遠略」です。
ただし、一般的な会話やビジネス文書では、より知名度の高い「深謀遠慮」を使う方が無難な場合もあります。
「老謀遠略」は、相手の「経験(老練さ)」を特に強調したい場合や、あえて少し凝った表現を使いたい場面で選ぶと、そのニュアンスがより効果的に伝わることでしょう。





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