白河夜船

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ことわざ 四字熟語
白河夜船
(しらかわよふね)
異形:白川夜船/白河夜舟

7文字の言葉し・じ」から始まる言葉

日中の疲れが溜まっていて、気づいたら泥のように眠りこけてしまい、朝まで一度も目が覚めなかった。周囲で大きな音がしても全く反応しないほどの深い眠り。

そんな状況を、「白河夜船」(しらかわよふね)と言います。

意味

「白河夜船」とは、主に以下の2つの意味を持ちます。

  1. ぐっすりと眠り込んでしまい、何が起きてもまったく気づかないこと。(現代で最も一般的な意味)
  2. 知ったかぶりをすること。 見たこともないものを、さも見てきたかのように嘘をつくこと。

元々は「知ったかぶり」を指す言葉でしたが、現在では「前後不覚になるほどの熟睡」を指す言葉として定着しています。

  • 白河(しらかわ):京都の地名。
  • 夜船(よふね):夜に運行する船。

語源・由来

「白河夜船」の語源は、京都へ旅行に行ったと嘘をついた男の失敗談にあります。

昔、ある男が「京都へ行ってきた」と自慢話をしていました。
それを聞いた人が「京都の白河(しらかわ)はどうでしたか?」と尋ねたところ、男は「白河」を川の名前だと勘違いしてこう答えました。

「あいにく夜に船で通ったので、何も見ませんでした」

しかし、京都の「白河」は地名であり、そこに流れる白川も水深が浅く、船が通れるような川ではありません。このちぐはぐな言い訳によって、男が本当は京都に行っていないことがバレてしまいました。

この逸話から、「知ったかぶりをして嘘をつくこと」を「白河夜船」と言うようになり、男の言い訳の内容(夜に船で寝ていた)から転じて、「ぐっすり眠っていて何も気づかないこと」そのものを指すようになりました。

使い方・例文

「白河夜船」は、単なるうたた寝ではなく、「揺り動かしても起きない」「周囲の騒音に全く反応しない」といった、深い没入感を伴う睡眠に対して使われます。

家庭や学校、友人同士の会話などで、ユーモアを交えて熟睡ぶりを伝えるのに適しています。

例文

  • 昨夜は疲れ果てていて、雷が鳴っていたのに「白河夜船」で朝まで気づかなかった。
  • 映画のクライマックスだというのに、彼は隣で「白河夜船」を決め込んでいた。
  • 休日の父は、昼過ぎまで「白河夜船」で高いびきをかいている。
  • バスで終点まで乗り過ごしてしまうなんて、よほど「白河夜船」だったのだろう。

文学作品・メディアでの使用例

『白河夜船』(吉本ばなな)
現代日本文学を代表する作家、吉本ばななの初期の名作短編集および表題作です。
「眠り」をテーマにしたこの作品では、深い眠りが「生と死の境界」のような静謐なものとして描かれています。

いつも、眠り込む直前のあの感覚を思って、しらかわよふね、とつぶやく。……白河夜船。その響きが好きだった。

誤用・注意点

誤用されやすいポイントや注意点は以下の通りです。

  • 漢字表記の間違い
    地名の由来に基づき「白河夜船」と書くのが一般的ですが、辞書によっては「白川夜船」も許容されています。ただし、由来を知っている人から見ると「白河(地名)」であることが重要なので、「白河」と書く方が無難です。
  • 意味の伝達
    「知ったかぶり」という意味で使う場合、相手がその意味を知らないと「?」と思われる可能性があります。現代会話では文脈の補足が必要になるでしょう。

類義語・関連語

「白河夜船」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 熟睡(じゅくすい):
    ぐっすりと深く眠ること。日常的に最も使われる表現。
  • 人事不省(じんじふせい):
    病気や怪我、あるいは泥酔などで意識を失い、人の呼びかけにも反応しない状態。
  • 前後不覚(ぜんごふかく):
    何が起こったか分からないほど、意識がはっきりしない状態。熟睡や泥酔の形容に使われる。
  • 見てきたような嘘をつく(みてきたようなうそをつく):
    実際には見ていないのに、まるでその場にいて見てきたかのようにまことしやかに話すこと。
    「白河夜船」の本来の意味に近い。

対義語

「白河夜船」とは対照的な意味を持つ言葉は以下の通りです。

  • 不眠不休(ふみんふきゅう):
    眠ったり休んだりせずに事にあたること。
  • 輾転反側(てんてんはんそく):
    悩み事などがあり、布団の中で何度も寝返りを打ちながら眠れずにいること。
  • まんじりともせず
    一睡もしないさま。「一睡もしないで」という否定の文脈で使われる。

英語表現

「白河夜船」を英語で表現する場合、以下のような言い回しがあります。

fast asleep

  • 意味:「熟睡して」「ぐっすり眠って」
  • 解説:最も一般的で使いやすい表現です。
    “fast” は「速い」ではなく「しっかりと」「固定された」という意味で使われています。
  • 例文:
    The baby was fast asleep in the cradle.
    (赤ん坊はゆりかごの中で白河夜船だった。)

dead to the world

  • 意味:「死んだように眠って」「意識がない」
  • 解説:直訳すると「世界に対して死んでいる」となりますが、実際には「外界の音が聞こえないほど深く眠っている」という比喩的な慣用句です。
  • 例文:
    I was so tired that I was dead to the world until noon.
    (とても疲れていたので、昼まで白河夜船だった。)

トリビア:「白河」と「白川」の違い

由来となった京都の「白河」は、平安時代後期に白河天皇が法勝寺などの寺院を建立し、院政の拠点となった雅な地域(現在の京都市左京区岡崎周辺)を指します。

一方、そこを流れる川は「白川」と書きます。
比叡山から流れ出るこの川は、川底の砂が白いことからその名がつきました。白川は風情のある美しい川ですが、浅瀬が多く、とても船が行き来できるような川ではありません。

嘘をついた男は、この「地名の白河」と「川の白川」の違い、さらに「川の規模」さえも知らなかったため、決定的な赤っ恥をかくことになったのです。

まとめ

「白河夜船」は、ぐっすりと眠り込んで周囲の状況に気づかないことを表す言葉です。

元々は「知ったかぶり」をあざ笑う言葉でしたが、現在では心地よい熟睡や、泥のように眠る様子を表す言葉として広く親しまれています。
「昨日は白河夜船でね」と使えば、単に「爆睡した」と言うよりも、どこか文学的でユーモラスな響きを持たせることができるでしょう。

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