平穏無事

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四字熟語
平穏無事
(へいおんぶじ)

6文字の言葉へ・べ・ぺ」から始まる言葉

特別な事件も起こらず、ただ静かに時間が流れていく一日。
そんな日を「退屈だ」と感じることもあれば、嵐のような忙しさの後に「これこそが幸せだ」と噛み締めることもあるでしょう。
変わったことが何もなく、心穏やかに過ごせる状態。
日本語では、このような日常の尊さを「平穏無事」(へいおんぶじ)と言います。
当たり前の今日が明日も続くことの、静かな価値を教えてくれる言葉です。

意味

「平穏無事」とは、変わったことがなく、穏やかで安らかな様子を意味します。
心配事やトラブルに振り回されることなく、平穏な状態が保たれていることを指します。

  • 平穏(へいおん):波風が立たず、静かで落ち着いていること。
  • 無事(ぶじ):事故や病気などの災難がないこと。

単に「暇である」という意味ではなく、平和で安定した状態を肯定的に捉える際に使われます。
「無事」という言葉には、古くから「何事もないことが最上である」という日本人の価値観が深く反映されています。

語源・由来

「平穏無事」という言葉は、それぞれ安定した状態を指す「平穏」と「無事」を組み合わせて構成されています。

「平穏」は水面が静かに落ち着いている様子に由来し、社会や心の安定を意味します。
一方の「無事」は、もともと禅宗の言葉である「無事是貴人(ぶじこれきにん)」に由来します。
本来は「悟りを外に求めず、作為のない自然体でいること」を尊ぶ教えでしたが、それが転じて、日常生活における「災いがないこと」を指すようになりました。

特定の戦乱や事件から生まれた言葉ではありませんが、平穏を願う人々の祈りが形になった四字熟語と言えます。

使い方・例文

「平穏無事」は、近況報告や将来への願いを込める場面でよく使われます。
ビジネスよりも、家庭や地域の安定した暮らしを表現するのに適しています。

例文

  • 大きなトラブルもなく、今年も家族全員が「平穏無事」に過ごせたことが何より嬉しい。
  • 定年退職後は、住み慣れたこの町で「平穏無事」に暮らすのが一番の願いだ。
  • 激動のプロジェクトを終え、ようやく平穏無事なオフィス環境が戻ってきた。
  • 遠足が「平穏無事」に終わり、子供たちは満足げな表情で帰宅した。

文学作品・メディアでの使用例

『吾輩は猫である』(夏目漱石)

明治時代の文豪、夏目漱石は、変化のない平和な一日の質感を表現するためにこの言葉を用いました。
猫の視点から、人間世界の落ち着いた(あるいは停滞した)風景をスケッチするのにふさわしい表現です。

我輩はそれから毎日々々平穏無事な日を送って居る。其うちにいつの間にか、自分も一種の哲学者の様な顔付になって来た……

類義語・関連語

「平穏無事」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 無事息災(ぶじそくさい):
    病気や災難などの心配がなく、元気に暮らしていること。
  • 天下泰平(てんかたいへい):
    世の中がよく治まり、穏やかな様子。
  • 安泰(あんたい):
    物事が安定しており、危険がないこと。

対義語

「平穏無事」とは対照的な意味を持つ言葉には、激しい変化や困難を表すものが挙げられます。

  • 波瀾万丈(はらんばんじょう):
    変化が激しく、劇的な出来事が次々と起こること。
  • 多事多端(たじたたん):
    仕事や事件が多く、非常に忙しいこと。
  • 一触即発(いっしょくそくはつ):
    何かが起きればすぐに爆発しそうな、非常に危険な状態。

英語表現

「平穏無事」を英語で表現する場合、以下のフレーズがニュアンスをよく伝えます。

Peace and quiet

  • 意味:「平和と静けさ」
  • 解説:騒々しさやトラブルから解放された、静かで穏やかな状態を指す定番の表現です。
  • 例文:
    I finally enjoyed some peace and quiet at the local park.
    (ようやく地元の公園で、平穏無事な時間を楽しむことができた。)

All is well

  • 意味:「すべて順調である」
  • 解説:物事が何の問題もなく進んでおり、平穏であることを示すフレーズです。
  • 例文:
    As long as all is well, I have nothing more to ask for.
    平穏無事(すべて順調)であれば、これ以上望むことはない。)

豆知識:禅が教える「無事」の本当の豊かさ

私たちが普段使う「無事」は、単に「ケガがない」といった状態を指しますが、その背景には「無事是貴人(ぶじこれきにん)」という深い教えがあります。
これは、「外側の世界に何かを求めたり、無理に自分を変えようとせず、今の自分に満足して自然体でいる人こそが尊い」という意味です。

「平穏無事」という言葉の裏には、こうした「ありのままの日常を愛でる」という精神性が隠されています。
単に「何も起きない」ことを喜ぶのではなく、「何も起きないことの中にある豊かさ」に気づく。
それこそが、この言葉が持つ真の魅力かもしれません。

まとめ

忙しい現代社会において、「平穏無事」であることは、実は何よりも贅沢なことなのかもしれません。
特別なイベントや劇的な成功も素晴らしいものですが、何の変哲もない日常を穏やかに送れることの幸せを、この言葉は思い出させてくれます。
今日という一日が、あなたにとって「平穏無事」に過ぎていくこと。
それは決して「退屈」なのではなく、一つの大きな祝福と言えるのかもしれません。

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