一張羅

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慣用句 三字熟語
一張羅
(いっちょうら)

6文字の言葉」から始まる言葉
三字熟語 【個別】ことわざ・慣用句・四字熟語

親戚の集まりや大切な記念日、クローゼットの奥から丁寧に取り出すとっておきの一着。
そんな、自分が持っている中で最も上等な服や、たった一着しかない晴れ着のことを、
「一張羅」(いっちょうら)と言います。

意味

「一張羅」とは、持っている中で最も上等な衣服のことです。
また、他に代わりの服がなく、たった一着しか持っていない晴れ着を指すこともあります。

「一」はひとつ、「張」は衣服を数える単位、「羅」は薄織物(絹織物)を意味します。

語源・由来

「一張羅」の由来は、江戸時代以前の衣服の数え方と、貴重な絹織物にあります。

「張(ちょう)」という単位は、もともと布をピンと張って干したり、仕立てたりする様子から、衣服を数える際に使われていました。
また、「羅(ら)」は古代中国から伝わった高級な薄い絹織物を指します。

つまり、もとは「たった一着(一張)しかない高級な絹の服(羅)」という意味でした。
庶民が何着も服を持てなかった時代、冠婚葬祭などの特別な行事に着ていくための一番良い服を、大切に「一張羅」と呼ぶようになったのが始まりです。

使い方・例文

「一張羅」は、自分にとっての「勝負服」や、特別な場面で着る大切な一着を表現する際に使われます。
現在は、服そのものだけでなく、気合を入れて外出する様子を表す文脈でもよく用いられます。

例文

  • 昇進試験の面接には、新調した一張羅のスーツで挑む。
  • 友人の結婚式に参列するため、母から譲り受けた一張羅を出す。
  • 大好きなアーティストのコンサートへ、お気に入りの一張羅を着ていく。
  • 普段は質素な彼だが、今日は一張羅で見事に決めている。

文学作品・メディアでの使用例

『富嶽百景』(太宰治)

太宰治が山梨県の御坂峠に滞在していた際の心境や風景を描いた短編です。
貧困の中でも自尊心を保ち、夏用の薄い着物を大切に着ていた情景を表現する言葉として登場します。

一張羅の、それも夏用の薄い着物を、単(ひとえ)のようにして着て、…

類義語・関連語

「一張羅」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 晴れ着(はれぎ):
    儀式や祭礼、年中行事などに着る、華やかな衣服のこと。
  • 余所行き(よそゆき):
    外出する際や、他人の家を訪問する際に着るための改まった服。
  • 勝負服(しょうぶふく):
    ここ一番の大事な場面で、自信を持つために着用するお気に入りの服。

対義語

「一張羅」とは対照的な意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 普段着(ふだんぎ):
    日常の生活の中で、気兼ねなく着用する衣服のこと。
  • 部屋着(へやぎ):
    外出するためではなく、家の中でくつろぐために着る服。
  • 襤褸(ぼろ):
    使い古して破れた布や、ひどく汚れた衣服のこと。

英語表現

「一張羅」を英語で表現する場合、以下のような表現があります。

Sunday best

「日曜日の晴れ着」
かつて日曜日の教会礼拝に、最も良い服を着て出かけた習慣に由来する定型句です。

「一張羅」「晴れ着」
特別な日のための最高の装いというニュアンスで広く使われます。

  • 例文:
    She was dressed in her Sunday best for the ceremony.
    彼女は式典のために、一張羅を着ておしゃれをしていた。

one’s best clothes

「一番良い服」
持っている中で最も上等な服を指す、最も一般的で分かりやすい表現です。
特別な場面で着用する、手持ちの最高の一着を意味します。

  • 例文:
    I decided to wear my best clothes for the first date.
    初デートのために、一張羅を着ていくことにした。

豆知識:なぜ「張」と数えるのか

「一張羅」の「張」という単位は、現代ではあまり馴染みがありませんが、もともとは「引き延ばしたもの」を数える言葉です。
かつて衣服は、布をピンと張って糊付け(のりづけ)をしたり、裁断したりして仕立てていたため、「一張(いっちょう)」と数えられていました。

現在では衣服は「一着」と数えるのが一般的ですが、三味線や琴などの弦楽器、あるいはテント、網などは今でも「一張(いっちょう)」と数えることがあります。
これらはすべて「弦や布を張って使うもの」という共通点があり、言葉の中に古い習慣の名残が息づいています。

まとめ

クローゼットに一着あるだけで、背筋が伸び、心に自信を与えてくれる「一張羅」。
かつての「羅(絹)」がそうであったように、現代の私たちにとっても、それは単なる衣服以上の価値を持つ特別な存在と言えるでしょう。

大切な日のために一着を慈しみ、丁寧に袖を通す。
そんな所作は、慌ただしい日常の中でも、自分や相手を大切に思う気持ちを静かに思い出させてくれることでしょう。

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