額に汗して働く必要がなく、毎日をのんびりと優雅に過ごす。
将来への不安がないほど経済的に恵まれ、安楽な暮らしを送り続ける様子を、
「左団扇」(ひだりうちわ)と言います。
意味
「左団扇」とは、働かなくても暮らしていけるほど経済的に余裕がある状態を指します。
単に暇を持て余しているわけではなく、十分な蓄えや収入源があり、将来を案じることなく悠々と人生を楽しんでいるというニュアンスが含まれます。
語源・由来
「左団扇」の由来は、利き手ではない「左手」で団扇(うちわ)を使い、自分を扇ぐ動作にあります。
多くの人にとって、右手は「働くための手」でした。
その右手を休ませ、あえて使いにくい左手でゆったりと自分を扇いでいる姿は、あくせく働く必要のない贅沢な境遇の象徴となりました。
江戸時代の商家の主や、家督を譲った後の隠居などが、経済的な基盤を持って安楽に暮らす様子を指して使われるようになったのが始まりです。
使い方・例文
「左団扇」は、資産運用や事業の成功、あるいは遺産や幸運によって金銭的な不安が解消された場面で用いられます。
現代では、早期リタイアを実現した人や、宝くじなどで大きな富を得た人の暮らしぶりを表現するのに適しています。
例文
- 定年後は退職金と利子所得で左団扇の生活を送る。
- 若くして起業に成功した彼は、今や海外の別荘で左団扇らしい。
- 宝くじの一等に当選したからといって、一生左団扇でいられるとは限らない。
文学作品での使用例
『虞美人草』(夏目漱石)
親の財産を当てにして、自ら働く気のない若者の態度を嗜める場面で登場します。
一生左団扇で暮らすつもりか。
類義語・関連語
「左団扇」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 悠々自適(ゆうゆうじてき):
世俗の煩わしさから離れ、自分の思うままにのんびりと暮らすこと。 - 安楽(あんらく):
心身に苦痛がなく、安らかで楽しいこと。 - 栄耀栄華(えようえいが):
富や権勢を誇り、贅沢の限りを尽くすこと。
「左団扇」は特にお金に困っていない「経済的余裕」に焦点が当たりますが、「悠々自適」は精神的な自由や落ち着きに重きを置くという違いがあります。
対義語
「左団扇」とは対照的な意味を持つ言葉は、家計や生活が非常に苦しい状態を指します。
- 火の車(ひのくるま):
経済状態が非常に苦しく、やりくりに困っていること。 - 汲汲とする(きゅうきゅうとする):
目先のことに追い立てられ、余裕がない様子。 - 齷齪する(あくせくする):
目先の利害や仕事に追われ、心が落ち着かない様子。
英語表現
「左団扇」を英語で表現する場合、豊かさや安全な境遇を指す定型句を用います。
Live in clover
「クローバーの中で暮らす」
家畜の牛が好物のクローバーに囲まれて満足している様子から転じて、贅沢で安楽な暮らしを意味します。
- 例文:
After selling his company, he’s living in clover.
(会社を売却した後、彼は左団扇の生活を送っている。)
On easy street
「安楽な通りにいる」
経済的に完全に自立し、将来の不安が一切ない状態にあることを指す慣用句です。
- 例文:
If this investment pays off, we’ll be on easy street.
(この投資が当たれば、私たちは左団扇だ。)
注意点:使用時のニュアンス
「左団扇」は、必ずしもポジティブな文脈だけで使われるわけではありません。
汗水垂らして働く側から見て、「あの人は楽をしていていいな」という羨望や、少し皮肉を込めたニュアンスで使われることがあります。
そのため、自分の生活を指して「私は左団扇です」と言うと、謙虚さに欠け、自慢話のように聞こえてしまう恐れがあります。
基本的には他人の恵まれた境遇や、客観的な状態を指す言葉として使うのが無難です。
まとめ
経済的な不安から解放され、ゆったりとした時間を享受する「左団扇」。
それは、日々の努力が報われた一つの結果であり、多くの人が憧れる理想的な境遇と言えるでしょう。
忙しい毎日の中で、この言葉が象徴する「心の余裕」を少しでも持てるよう、時には右手を休めて深呼吸をする時間を作りたいものですね。








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