何十年に一度、あるいは一生に一度出会えるかどうかというほどの驚きを私たちに与えてくれる特別な存在があります。
その分野の歴史を根底から塗り替えてしまうような、比類なき才能。そんなめったに現れない傑出した人物を、
「不世出」(ふせいしゅつ)と言います。
意味・教訓
「不世出」とは、めったに世に現れないほど、ずば抜けて優れていることです。
- 不(ふ):打ち消しの意味。
- 世(せい):世代、あるいは時代。
- 出(しゅつ):現れること。
「何代もの間、世に出てこない」という意味から転じて、その時代において比べるものがないほど抜きん出た人物や才能を称える、最大級の賛辞として使われます。
語源・由来
「不世出」の語源は、古代中国の歴史書『漢書(かんじょ)』などの記述に見られます。
もともとは、優れた英雄や賢者が現れた際、その希少性を「世に出でざること久し(長い間、世に現れなかった)」と評したことが始まりです。
この言葉の背景には、並外れた才能は人間の努力だけで到達できるものではなく、天の意志や時代の巡り合わせによってのみもたらされる「天賦の才」であるという畏敬の念が込められています。
特定の逸話から生まれた言葉ではありませんが、歴史上の傑物や、一時代を築いた達人を形容する言葉として古くから重宝されてきました。
使い方・例文
その分野の歴史に名を刻むような、圧倒的な実績や才能を持つ人物を指して使われます。
日常の些細なことではなく、偉業を成し遂げた人物を評価する際や、追悼の場面などで用いられる重みのある言葉です。
例文
- 彼は将棋界における不世出の天才として、数々の記録を塗り替えた。
- その歌手は不世出の歌声を持ち、国境を越えて多くの人々を魅了した。
- 百年に一人の逸材と呼ばれた彼は、まさに野球界が生んだ不世出の打者だ。
- 恩師は教育界における不世出の指導者であり、多くの若者を導いた。
文学作品・メディアでの使用例
『燃えよ剣』(司馬遼太郎)
新選組副長・土方歳三の生涯を描いた名作です。
作中では、沖田総司の天才的な剣技や、歴史の転換期に現れる傑物たちの稀有な才能を表現する文脈で、その唯一無二さを強調するためにこの言葉が用いられています。
…あの男の剣は、まさに不世出というほかはない。…
類義語・関連語
「不世出」と似た意味を持つ言葉には、類稀な希少性を強調する表現があります。
- 稀世(きせい):
世の中にめったにないほど珍しく、優れていること。 - 絶世(ぜっせい):
その時代において並ぶものがないほど優れていること。 - 比類なき(ひるいなき):
比べるものがほかにないほど、抜きん出ていること。
「不世出」は特に「現れる」という出現の頻度に注目し、時間的な希少性を表現するニュアンスが強いのが特徴です。
対義語
「不世出」とは対照的な意味を持つ言葉は、平凡でありふれた様子を表します。
- 凡庸(ぼんよう):
平凡で、これといって優れた点がないこと。 - 月並み(つきなみ):
新鮮みがなく、ありふれていること。
英語表現
「不世出」を英語で表現する場合、世代に一人、あるいは比類なき才能といったニュアンスを用います。
Once-in-a-generation
「一世代に一人」という意味。
その時代において極めて稀で、特別な才能を指す際に最もよく使われる正確な表現です。
- 例文:
He is a once-in-a-generation talent in the world of physics.
彼は物理学界における不世出の才能だ。
Matchless
「比類なき」「並ぶものがない」という意味。
他の誰にも真似できない卓越した状態を指します。
- 例文:
Her matchless performance moved the entire audience.
彼女の不世出の演技は、観客すべてを感動させた。
まとめ
「不世出」という言葉は、私たちの想像を遥かに超える才能に出会ったときの驚きと、深い敬意を込めた表現です。
長い歴史の中でめったに現れない存在を目の当たりにできることは、その時代に生きる私たちにとっても一つの幸運と言えるかもしれません。
この言葉の重みを知ることで、時代を切り拓く特別な才能やその努力の結晶を、より深い意味で捉えられるようになることでしょう。





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