意味
- 不(ふ):打ち消しの意味。
- 世(せい):世代、あるいは時代。
- 出(しゅつ):現れること。
「何代もの間、世に出てこない」という意味から転じて、その時代において比べるものがないほど抜きん出た人物や才能を称える、最大級の賛辞として使われます。
語源・由来
「不世出」は、古代中国の歴史書に見える言葉です。
もともとは、並ぶ者のない功績や才能を、何代にもわたって世に現れないほどのものだと評する言い方でした。
この言葉の背景には、並外れた才能は人間の努力だけで到達できるものではなく、天の意志や時代の巡り合わせによってのみもたらされる「天賦の才」であるという畏敬の念が込められています。
歴史上の傑物や、一時代を築いた達人を形容する言葉として、古くから重宝されてきました。
使い方・例文
その分野の歴史に名を刻むような、圧倒的な実績や才能を持つ人物を指して使われます。
日常の些細なことではなく、偉業を成し遂げた人物を評価する際や、追悼の場面などで用いられる重みのある言葉です。
例文
- 彼は将棋界における不世出の天才として、数々の記録を塗り替えた。
- その歌手は不世出の歌声を持ち、国境を越えて多くの人々を魅了した。
- 百年に一人の逸材と呼ばれた彼は、まさに野球界が生んだ不世出の打者だ。
- 恩師は教育界における不世出の指導者であり、多くの若者を導いた。
類義語・関連語
「不世出」と似た意味を持つ言葉には、類稀な希少性を強調する表現があります。
- 稀世(きせい):
世の中にめったにないほど珍しく、優れていること。 - 絶世(ぜっせい):
その時代において並ぶものがないほど優れていること。 - 比類なき(ひるいなき):
比べるものがほかにないほど、抜きん出ていること。
「不世出」は特に「現れる」という出現の頻度に注目し、時間的な希少性を表現するニュアンスが強いのが特徴です。
対義語
「不世出」とは対照的な意味を持つ言葉は、平凡でありふれた様子を表します。
英語表現
「不世出」を英語で表現する場合、世代に一人、あるいは比類なき才能といったニュアンスを用います。
Once-in-a-generation
「一世代に一人」という意味。
その時代において極めて稀で、特別な才能を指す際に最もよく使われる正確な表現です。
He is a once-in-a-generation talent in the world of physics.
(彼は物理学界における不世出の才能だ。)
Matchless
「比類なき」「並ぶものがない」という意味。
他の誰にも真似できない卓越した状態を指します。
Her matchless performance moved the entire audience.
(彼女の不世出の演技は、観客すべてを感動させた。)
韓信を評した弁士の言葉
「不世出」の古い用例は、司馬遷の『史記』淮陰侯列伝にあります。
弁士の蒯通が将軍の韓信に向かって戦績を数え上げ、「功は天下に二つ無く、略は不世出なる者なり」と評した場面です。
立てた手柄に並ぶものはなく、はかりごとの才は何代に一度も現れない、という意味になります。
蒯通はこう持ち上げたうえで、韓信に劉邦から独立するよう勧めますが、韓信は応じませんでした。
この語の早い用例は、天下の行方を左右する説得の場面に置かれていたことになります。










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