誰からも注目されるような華やかな才能を持ちたいと願う一方で、現実は何事もなく過ぎていく日々に安堵する自分もいる。
そんな、特別に優れた点や、これといって際立った特徴が見られない様子を、
「凡庸」(ぼんよう)と言います。
意味・教訓
「凡庸」とは、これといって優れた点や際立った特徴がないことを指します。
平凡で、ごく一般的である様子を表現する際に用いられる言葉です。
単に「普通である」という意味だけでなく、文脈によっては「独創性に欠ける」「つまらない」といった、やや否定的な評価を含んで使われることもあります。
- 凡(ぼん):なみ、すべて。一般的で、ありふれていること。
- 庸(よう):つね、もちいる。いつも通りで、変化がないこと。
語源・由来
「凡庸」の語源は、古代中国の経典である『中庸』などに見られる「凡」と「庸」の組み合わせにあります。
「凡」は「なみ、すべて」を、「庸」は「つね、もちいる」を意味し、どちらも「普通で変わらないこと」を指す漢字です。
これらが重なることで、抜きん出た才能や個性が全く見当たらない、平均的な状態を強調する言葉として定着しました。
古くは指導者としての才覚が欠けていることを指しましたが、現代では人物の能力だけでなく、作品の質やアイデアの独創性など、幅広い対象に対して「代わり映えがしない」というニュアンスで使われています。
使い方・例文
「凡庸」は、人の性質や能力だけでなく、創作物や計画が「どこにでもあるような内容」であるときによく使われます。
例文
- 凡庸な成績だが、誠実な人柄でクラスメイトに慕われている。
- 流行に左右されない、ごく凡庸なデザインの椅子を購入した。
- 革新的なアイデアが出ず、結局は凡庸な企画に落ち着いた。
- 新作映画を観たが、展開が読みやすく凡庸な印象を受けた。
文学作品・メディアでの使用例
『イェルサレムのアイヒマン――悪の凡庸についての報告』(ハンナ・アーレント)
ナチスの戦犯であるアイヒマンの公判を傍聴した著者が、彼を極悪非道な怪物ではなく、ただ思考を停止して命令に従うだけの「極めて普通な人間」として描き、世に衝撃を与えた一冊です。
アイヒマンのなしたことは、……恐ろしく、かつ、凡庸であった。
誤用・注意点
「凡庸」を目上の人や、尊敬すべき相手に対して使うのは避けるべきです。
この言葉には「取り柄がない」「つまらない」という評価が含まれやすいため、相手を侮辱していると受け取られるリスクがあります。
例えば、相手を「親しみやすい普通の人」と表現したい場合に「凡庸な方ですね」と言うのは明確な誤用であり、失礼にあたります。
そのような場面では「庶民的」「気さく」「飾らない」といった、ポジティブなニュアンスを持つ言葉を選びましょう。
類義語・関連語
「凡庸」と似た意味を持つ言葉はいくつかありますが、文脈によって使い分けが必要です。
- 平凡(へいぼん):
優れた点や目立った変化がなく、普通であること。 - 月並み(つきなみ):
新鮮味がなく、ありふれていて退屈なこと。 - 人並み(ひとなみ):
世間一般の人と同じ程度であること。 - 陳腐(ちんぷ):
古くさくて、ありふれていること。特にアイデアや表現に使われます。
対義語
「凡庸」とは対照的な意味を持つ言葉は、抜きん出た才能や価値を示す言葉です。
- 非凡(ひぼん):
普通よりずっと優れていること。 - 傑出(けっしゅつ):
周囲よりもはるかに優れ、抜きん出ていること。 - 秀逸(しゅういつ):
他のものよりも一段と優れていること。 - 奇才(きさい):
世にまれな、優れた才能のこと。
英語表現
「凡庸」を英語で表現する場合、評価のニュアンスに応じて以下の表現が使われます。
Mediocre
「二流の」「平凡な」という意味で、期待されたほど良くない、あるいは期待外れだという否定的なニュアンスを含みます。
「期待外れの、平凡な」
期待された質に届かない、物足りない状況で使われる表現です。
- 例文:
The performance was mediocre at best.
その演奏は、良く言っても凡庸な出来だった。
Ordinary
「普通の」「並の」という意味で、中立的に「特別なことは何もない」ことを表します。
「ごく普通の、並の」
良い悪いといった主観的な評価をあまり含まず、平均的であることを指します。
- 例文:
He leads a very ordinary life.
彼はごく凡庸な生活を送っている。
まとめ
「凡庸」は、際立った個性のなさを表す言葉です。
現代社会では「個性的であること」や「非凡であること」が価値を置かれがちですが、誰もが特別な才能を持っているわけではありません。
この言葉は時に批判的に使われますが、自分のありのままの状態を客観的に捉えるための指標とも言えます。
言葉の持つ「普通であること」の重みを知ることで、自分や他者への評価に新しい視点が加わることになるでしょう。








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