月夜に提灯

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ことわざ 慣用句
月夜に提灯
(つきよにちょうちん)

9文字の言葉つ・づ」から始まる言葉
月夜に提灯 【個別】ことわざ・慣用句・四字熟語

すでに十分なものが揃っている場所で、さらに同じようなものを付け足そうとしても、それは意味をなさず無駄になってしまうことがあります。
こうした状況を、「月夜に提灯」(つきよにちょうちん)と言います。

意味・教訓

「月夜に提灯」とは、あっても何の役にも立たない、不必要で無駄なもののたとえです。

明るい月夜に、夜道を照らすための提灯を灯しても、その明かりは月光にかき消されてしまいます。
このことから、過剰な添え物や無意味な重複を批判・自嘲する際に使われます。

語源・由来

「月夜に提灯」の由来は、言葉通りの情景描写に基づいています。

「月夜」は月の光で明るい夜を指し、「提灯」は暗闇を照らす道具です。
明るい月夜には提灯などなくても十分に歩けるため、そこへ灯りを持ち出すことは全くの無意味です。
この「本来は便利な道具も、状況次第では無用の長物になる」という対比がことわざとなりました。

江戸時代には『江戸いろはかるた』の読み札として採用され、一般的な表現として定着しました。

使い方・例文

「月夜に提灯」は、ある行為や物が、その状況において過剰であったり、無駄な手間であったりすることを指摘する場面で使われます。

例文

  • 満腹の時に勧められた料理は、月夜に提灯だ。
  • 解決後に助っ人が来るのは、月夜に提灯というものだ。
  • 豪華な装飾にさらに飾りを足すのは、月夜に提灯だ。

誤用・注意点

「月夜に提灯」とよく似た言葉に「闇夜に提灯」がありますが、意味は正反対です。

「闇夜に提灯」は、暗闇の中で灯りが得られることから、非常にありがたいもの、頼りになるものを指します。一文字違いで「不必要なもの」から「待ち望んでいたもの」へと意味が転じてしまうため、混同しないよう注意が必要です。

類義語・関連語

「月夜に提灯」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 釈迦に説法(しゃかにせっぽう):
    知り尽くしている専門家に対して教えを説く無意味さ。
  • 屋上屋を架す(おくじょうおくをかす):
    屋根の上にさらに屋根を作るような、不必要な重複。
  • 夏の火鉢(なつのひばち):
    時期が外れていて、全く必要とされないもののたとえ。
  • 無用の長物(むようのちょうぶつ):
    あっても邪魔になるだけで、役に立たないもの。

対義語

「月夜に提灯」とは対照的な意味を持つ言葉は、以下の通りです。

  • 闇夜に提灯(やみよにちょうちん):
    困っている時に、まさに必要としていた助けが得られること。
  • 鬼に金棒(おににかなぼう):
    強いものがさらに良い条件を得て、より強力になること。
  • 旱に雨(かんてんにあめ):
    待ち望んでいたものがようやく手に入ること。

英語表現

「月夜に提灯」を英語で表現する場合、以下の定型句が使われます。

carry coals to Newcastle

「(石炭の産地である)ニューカッスルに石炭を運ぶ」
供給が十分な場所に、あえて同じものを持ち込む無駄な行為を指します。

  • 例文:
    Giving him a watch is like carrying coals to Newcastle.
    (彼に時計を贈るなんて、月夜に提灯だよ。)

like a fifth wheel

「5番目の車輪のような」
4輪で走る車にとって、5番目の車輪は不要で邪魔なものであることを表します。

  • 例文:
    I felt like a fifth wheel at their party.
    (彼らのパーティーで、自分は月夜に提灯のように感じた。)

豆知識:江戸の夜の明るさ

現代のような街灯も電飾もない江戸時代、月の光は夜道を歩くための唯一かつ絶大なライフラインでした。

満月の夜の明るさは、現代の数値で言えば約0.2ルクス程度とされています。
これは暗い街灯の下と同じくらいの明るさで、目が慣れれば大きな活字であれば読めるほどの強さがありました。
当時の人々にとって、月明かりだけで歩ける夜に、あえて高価な「和ろうそく」を提灯(ちょうちん)に灯して歩くのは、経済的にも労力的にも「滑稽なほどの浪費」に映ったのです。

また、当時の提灯は現代の懐中電灯のようにスイッチ一つで点くものではありません。
火打石で火を起こし、芯を整え、風に消えないよう気を使いながら扱う手間のかかる道具でした。
十分明るいのにその手間をかける姿が、この言葉に込められた「無駄の極み」という皮肉をより一層引き立てています。

まとめ

「月夜に提灯」は、満たされた状況での過剰な付け足しがいかに無意味であるかを教えてくれる言葉です。

何かをプラスすることだけが善ではなく、時には「何もしない」という判断が、相手への最善の配慮になることもあります。
言葉の背景にあるこの視点を意識することで、日常の振る舞いがより洗練された、スマートなものに変わっていくことでしょう。

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