意味
「月夜に提灯(つきよにちょうちん)」とは、明るい月夜に夜道を照らすための提灯を灯しても、その明かりが月光にかき消されてしまうように、持っていても意味が無い、余計で無駄な存在のことです。
このことから、過剰な添え物や無意味な重複を批判・自嘲する際に使われます。
また、必要のないぜいたくや奢りのたとえとしても使われます。
語源・由来
「月夜に提灯」の由来は、言葉通りの情景描写に基づいています。
「月夜」は月の光で明るい夜を指し、「提灯」は暗闇を照らす道具です。
明るい月夜には提灯などなくても十分に歩けるため、そこへ灯りを持ち出すことは全くの無意味です。
この「本来は便利な道具も、状況次第では無用の長物になる」という対比がことわざとなりました。

(写真:tutu、Wikimedia Commons/CC BY 4.0)
使い方・例文
「月夜に提灯」は、ある行為や物が、その状況において過剰であったり、無駄な手間であったりすることを指摘する場面で使われます。
例文
- 満腹の時に勧められた料理は、月夜に提灯だ。
- 解決後に助っ人が来るのは、月夜に提灯というものだ。
- 豪華な装飾にさらに飾りを足すのは、月夜に提灯だ。
誤用・注意点
「月夜に提灯」とよく似た言葉に「闇夜に提灯」がありますが、意味は正反対です。
「闇夜に提灯」は、暗闇の中で灯りが得られることから、非常にありがたいもの、頼りになるものを指します。
一文字違いで「不必要なもの」から「待ち望んでいたもの」へと意味が転じてしまうため、混同しないよう注意が必要です。
類義語・関連語
「月夜に提灯」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 釈迦に説法(しゃかにせっぽう):
知り尽くしている専門家に対して教えを説く無意味さ。 - 屋上屋を架す(おくじょうおくをかす):
屋根の上にさらに屋根を作るような、不必要な重複。 - 夏炉冬扇(かろとうせん):
夏の囲炉裏と冬の扇のように、時節外れで役に立たないもののたとえ。 - 無用の長物(むようのちょうぶつ):
あっても邪魔になるだけで、役に立たないもの。
対義語
「月夜に提灯」とは対照的な意味を持つ言葉は、以下の通りです。
- 闇夜に提灯(やみよにちょうちん):
困っている時に、まさに必要としていた助けが得られること。 - 鬼に金棒(おににかなぼう):
強いものがさらに良い条件を得て、より強力になること。 - 旱に雨(ひでりにあめ):
待ち望んでいたものがようやく手に入ること。
英語表現
「月夜に提灯」を英語で表現する場合、以下の定型句が使われます。
carry coals to Newcastle
「(石炭の産地である)ニューカッスルに石炭を運ぶ」
供給が十分な場所に、あえて同じものを持ち込む無駄な行為を指します。
Giving him a watch is like carrying coals to Newcastle.
(彼に時計を贈るなんて、月夜に提灯だよ。)
like a fifth wheel
「5番目の車輪のような」
4輪で走る車にとって、5番目の車輪は不要で邪魔なものであることを表します。
I felt like a fifth wheel at their party.
(彼らのパーティーで、自分は月夜に提灯のように感じた。)
「月夜に提灯」が無駄になるほど、満月の夜は明るい
街灯の無い江戸時代、月の光は夜道を歩くための大きな頼りでした。
満月の夜の明るさは、現代の数値で言えば約0.2ルクス程度とされ、目が慣れれば新聞の見出しのような大きな文字であれば読めるほどの強さがありました。
かつては月の明るい夜には提灯をともさないのが当たり前で、あえて高価な「和ろうそく」を提灯に灯して歩くのは無駄な出費でした。
また、当時の提灯は現代の懐中電灯のようにスイッチ一つで点くものではありません。
火打石で火を起こし、芯を整え、風に消えないよう気を使いながら扱う手間のかかる道具でした。
ただし商家などでは、繁盛ぶりを示すためにあえて灯をともすこともあり、「月夜に提灯も外聞」という言い方もありました。










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