意味
「手取り足取り(てとりあしとり)」とは、何から何まで行き届いた世話をし、細かく丁寧に教えるさまをいいます。
古くは、大勢で人の手足をかかえ持ったり押さえつけたりするさまや、大勢の人に妨げられるさまも表しました。
語源・由来
この言葉は、人の手を取り、足を取るという組み立てです。
古い使い方は文字どおりの意味で、『竹取物語』には、かぐや姫に求婚した中納言(= 朝廷の高い位の役人)の石上麻呂が、燕の巣から子安貝を取ろうとして落ちる場面があります。
落ちた先は鼎(= 煮炊きに使う大きな器)の上で、次の一節が続きます。
また鼎の上より、手とり足とりしてさげおろし奉る
(もう一度、鼎の上から、手を取り足を取ってお下ろし申し上げた)
白目をむいて倒れた中納言に人々が水を含ませ、息を吹き返したところで、皆で手足を抱えて下ろした、という場面です。
今ふつうに使うのは、細かいところまで世話をする、丁寧に教えるという意味のほうです。
使い方・例文
- 新人のころ、先輩が手取り足取り仕事の進め方を教えてくれた。
- 祖母にスマートフォンの使い方を手取り足取り説明した。
- 転校した日、隣の席の子が手取り足取り学校の決まりを教えてくれた。
類義語・関連語
どれも、細かいところまで気を配って人の面倒を見るさまを表す語です。
- 懇切丁寧(こんせつていねい):
細部まで気を配り、親切で丁寧なさま。 - 痒い所に手が届く(かゆいところにてがとどく):
細かい点まで気がつき、配慮が行き届いているさまのたとえ。 - 至れり尽くせり(いたれりつくせり):
配慮が十分に行き届き、申し分のないさま。 - 手塩にかける(てしおにかける):
自分で直接世話をして、大切に育てること。 - 世話を焼く(せわをやく):
自分から進んで他人の面倒を見ること。
英語表現
hold someone’s hand
基本から細かな点まで付き添って手助けする意。
My father held my hand through my first tax return.
(初めての確定申告は、父が手取り足取り手伝ってくれた)
walk someone through something
物事を一つずつ順を追って説明する意。
The teacher walked us through the experiment step by step.
(先生は実験の手順を一つずつ手取り足取り説明してくれた)
子安貝の正体は燕の古い糞
手足を抱えて下ろされた石上麻呂は、腰が動かないと言いながらも、子安貝をつかんだと喜び、明かりを持って来させて手を開きます。
ところが、握っていたのは燕がためておいた古い糞でした。
このとき中納言が口にした「あなかひなのわざや」(= ああ、貝の無いことよ)から、思いどおりにならないことを「かひなし」と言うようになった、と物語は語っています。
貝が無いことと、甲斐(= ききめ・張り合い)が無いことを掛けた話です。
中納言は腰の骨を折って弱っていき、ただ病気で死ぬことよりも、人に聞かれて笑われることを恥ずかしく思いました。



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