ことわざ

一文惜しみの百知らず

(いちもんおしみのひゃくしらず)

目先のわずかな出費を惜しんで、かえって大きな損をすること。

短縮形:一文惜しみ
異形:一文惜しみの百失い

14文字の言葉 / 「い」から始まる言葉
一文惜しみの百知らず ことば
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意味

「一文惜しみの百知らず(いちもんおしみのひゃくしらず)」とは、目先のわずかな出費を惜しんで、結果として大きな損をすることのたとえです。
「一文惜しみの百失い」ともいいます。

  • 一文(いちもん):昔の通貨の最小単位。ごくわずかな金額のたとえ。
  • 百(ひゃく):一文に対して、非常に大きな金額や価値のたとえ。
  • 知らず:重大な損失に気づかない愚かさを指す。

この言葉には、単にお金を惜しむことを戒めるだけでなく、視野が狭くなって物事の本質や全体像を見失うことへの警告も込められています。

語源・由来

「一文惜しみの百知らず」は、江戸時代の通貨単位「文(もん)」に基づいた言葉です。
当時、一文銭は最も価値の低い貨幣でした。

たとえば、屋根の小さな傷みを直す費用を惜しんで放置した結果、雨漏りが進んで柱が腐り、最終的に何倍もの修理代がかかる、といった損がこの言葉の指すものです。

本来の節約とは、支出を抑えることではなく、将来の大きな損失を防ぐために「今、何にお金をかけるべきか」を見極めることだと、この言葉は教えています。

使い方・例文

「一文惜しみの百知らず」は、節約のつもりが逆効果になった場面や、将来への投資を渋って失敗した際に使われます。

「一文惜しみの百知らず」は、家庭での買い物から、学校の部活動の備品管理、企業の設備投資まで、幅広い文脈で用いられる言葉です。

例文

  • 目先の得に執着して大損を招くのは、一文惜しみの百知らずだ。
  • 駐車代をケチって反則金を取られ、一文惜しみの百知らずを痛感した。

類義語・関連語

「一文惜しみの百知らず」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 安物買いの銭失い(やすものかいのぜにうしない):
    値段の安さに惹かれて質の悪いものを買い、結局は修理や買い替えで損をすること。
  • 鹿を逐う者は山を見ず(しかをおうものはやまをみず):
    目の前の獲物に夢中になり、周囲の状況や起こりうる危険が見えなくなること。
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対義語

「一文惜しみの百知らず」とは対照的な意味を持つ言葉は、賢い投資の重要性を説いています。

  • 損して得取れ(そんしてとくとれ):
    一時的には損をしても、将来の大きな利益のために今は身を切って投資せよという教え。
  • 海老で鯛を釣る(えびでたいをつる):
    わずかな元手(海老)を使い、多大な利益(鯛)を得ること。

英語表現

「一文惜しみの百知らず」を英語で表現する場合、以下の定型句が非常によく使われます。

penny wise and pound foolish

「安物買いの銭失い」「一文惜しみの百知らず」
小銭(ペニー)の節約には熱心だが、大金(ポンド)で愚かな失敗をすること。

Buying a cheap car without insurance is penny wise and pound foolish.
(保険に入らずに安い中古車を買うなんて、一文惜しみの百知らずだ。)

「一文惜しみの百知らず」の一文は、今の数十円ほど

江戸時代の一文を現代の金額に換算するのは容易ではなく、時代や物価によって幅がありますが、おおよそ数十円程度とする説が多く見られます。
日本銀行金融研究所貨幣博物館は、18世紀の1両を、米の値段で換算すると約8万円、大工の日当で換算すると約41万円と試算しています。
江戸中期の公定相場は1両=銭4,000文なので、一文はおよそ20円から100円に当たります。

太宰治の「裸川」では、人足が青砥藤綱をこの言葉で笑った

太宰治が井原西鶴いはらさいかくの『武家義理物語』をもとに書いた『新釈諸国噺』の一篇「裸川」には、この言葉が出てきます。
北条時頼に仕える青砥藤綱あおとふじつなが、川に落とした銭を拾わせるために三両を出して人足を集め、銭十一文をそろえて差し出した人足にさらに一両の褒美を与えます。
青砥が褒美を渡して立ち去った場面には、次のようにあります。

智慧の浅瀬を渡る下々の心には、青砥の深慮が解げしかね、一文惜しみの百知らず、と笑いののしったとは、いつの世も小人はあさましく、救い難いものである。
(『新釈諸国噺』「裸川」)

青砥は褒美を渡すとき、川に落ちた銭はむだに朽ちるだけだが、人の手に渡った金は世の中を回り続けると語っています。
人足たちはその考えが分からず、十一文のために大金を使う青砥をこの言葉で笑った、という場面です。
実はこの十一文は人足が自分の腹掛けから出した銭で、話はこのあと、うそに気づいた青砥がその人足に丸裸で川を掘り返させる展開になります。

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