鹿を逐う者は山を見ず

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故事成語
鹿を逐う者は山を見ず
(しかをおうものはやまをみず)
異形:鹿を追う者は山を見ず

13文字の言葉し・じ」から始まる言葉
鹿を逐う者は山を見ず 意味・使い方

目先の利益や特定の目標に心を奪われ、周囲の状況や起こりうる危険が全く見えなくなっている状態。
このような執着による視野の狭窄を表すのが、
「鹿を逐う者は山を見ず」(しかをおうものはやまをみず)です。

意味

「鹿を逐う者は山を見ず」は、目先の利益に夢中になるあまり周囲の状況や道理を顧みなくなるという意味です。

目の前の鹿を捕らえることだけに集中する狩人が、自分が険しい山の中にいるという全体像を把握できなくなる状況にたとえています。

語源・由来

中国の前漢時代に編纂された思想書『淮南子』の「説林訓」にある一節、
「獣を逐う者は目に太山を見ず(獣を追いかける者は、目の前にある大きな太山すら見えなくなる)」
に由来します。
この言葉がのちに変化し、「鹿を逐う者は山を見ず」という形で定着しました。

使い方・例文

「鹿を逐う者は山を見ず」は、物事に熱中しすぎてバランスを崩している状況への忠告や反省の場面で使われます。

  • 節約に夢中で家族の健康を損ねては、鹿を逐う者は山を見ずだ。
  • 売上を追うあまり顧客の信頼を失うとは、鹿を逐う者は山を見ずである。

類義語・関連語

「鹿を逐う者は山を見ず」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 木を見て森を見ず(きをみてもりをみず):
    細かい部分にこだわりすぎて、物事の全体像や本質を見失うこと。
  • 一葉目を覆えば泰山を見ず(いちようめをおおえばたいざんをみず):
    目の前の小さな事柄に気を取られ、物事の大局を見失うこと。
  • 金を攫む者は人を見ず(きんをつかむものはひとをみず):
    目の前の利益に目がくらみ、周囲の人間や世間の目が全く見えなくなること。

英語表現

chase the prey, miss the cliff

意味:目の前の獲物や利益だけを追うあまり、身に迫る危険や周囲の状況を見落とすこと。

  • 例文:
    He pushed for a quick deal and missed the contract risks entirely. Classic case of chasing the prey and missing the cliff.
    早期成約を急ぐあまり、契約上のリスクを完全に見落とした。鹿を逐う者は山を見ずの典型だ。

lose sight of the big picture

意味:特定の目標に執着したり細部に気を取られたりして、物事の全体的な視点を見失うこと。

  • 例文:
    He was so focused on winning the argument that he lost sight of the big picture.
    彼は議論に勝つことばかりに集中して、鹿を逐う者は山を見ずになっていた。

歩きスマホは、鹿を追う猟師と同じ

現代の日常的な光景にも、「鹿を逐う者は山を見ず」の心理が潜んでいます。

スマートフォンの画面に集中するあまり、周囲の交通状況や段差、すれ違う人の存在が視界から消える「歩きスマホ」は、目の前の鹿だけを追って山の険しさを忘れる狩人の状態と構造的に同じです。
通知やメッセージという小さな「獲物」に意識が釘付けになった瞬間、人は自分がどこにいるかを把握する能力を手放しています。

古代中国のことわざが描いた視野の狭窄は、狩猟の現場だけでなく、画面を片手に街を歩く現代人の姿にも、そのまま当てはまります。

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