意味
「鹿を逐う者は山を見ず(しかをおうものはやまをみず)」は、目先の利益に夢中になるあまり周囲の状況や道理を顧みなくなるという意味です。
目の前の鹿を捕らえることだけに集中する狩人が、自分が険しい山の中にいるという全体像を把握できなくなる状況にたとえています。
語源・由来
中国の前漢時代に編纂された思想書『淮南子』の「説林訓」にある、次の一節が由来です。
逐獸者目不見太山,嗜慾在外,則明所蔽矣。
(獣を逐う者の目には太山も見えず、欲望が外に向かっていると、ものを見る明らかさが覆われてしまう)
この言葉がのちに変化し、「鹿を逐う者は山を見ず」という形で定着しました。
使い方・例文
「鹿を逐う者は山を見ず」は、物事に熱中しすぎてバランスを崩している状況への忠告や反省の場面で使われます。
- 節約に夢中で家族の健康を損ねては、鹿を逐う者は山を見ずだ。
- 売上を追うあまり顧客の信頼を失うとは、鹿を逐う者は山を見ずである。
類義語・関連語
「鹿を逐う者は山を見ず」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 木を見て森を見ず(きをみてもりをみず):
細かい部分にこだわりすぎて、物事の全体像や本質を見失うこと。 - 一葉目を覆えば泰山を見ず(いちようめをおおえばたいざんをみず):
目の前の小さな事柄に気を取られ、物事の大局を見失うこと。 - 金を攫む者は人を見ず(きんをつかむものはひとをみず):
目の前の利益に目がくらみ、周囲の人間や世間の目が全く見えなくなること。
英語表現
lose sight of the big picture
意味:特定の目標に執着したり細部に気を取られたりして、物事の全体的な視点を見失うこと。
He was so focused on winning the argument that he lost sight of the big picture.
(彼は議論に勝つことばかりに集中して、鹿を逐う者は山を見ずになっていた。)
鹿を逐う者は山を見ずの「鹿」、宋代の禅籍にすでに見える
『淮南子』説林訓の原文は「獣を逐う者は目に太山を見ず」で、獣の種類は特定されていません。
鹿を追う形の「逐鹿者不見山」は、宋代の禅籍『林間録』などにすでに見え、日本でもこの鹿の形で定着しました。
同じ説林訓には「鹿を逐う者は兎を顧みず」という句もあります。
大きな獲物を追うときは小さな獲物に目もくれない、という意味で、こちらは集中している側から見た言い方です。













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