人は得てして、手元にあるものを超えて多くを望んでしまうものです。
しかし物事を長続きさせ、安定した土台を築くためには、まず自分の持っている「枠」を正確に把握しなければなりません。
そんな経済や生活における普遍的な鉄則を、
「入るを量りて出ずるを制す」(いるをはかりていずるをせいす)と言います。
意味
「入るを量りて出ずるを制す」とは、収入の額を正確に把握し、その範囲内に収まるよう支出をコントロールするという教えです。
「入る」は収入、「量りて」は計算して見当をつけること、「出ずる」は支出、「制す」は抑え管理することを指します。
使いたい額を先に決めるのではなく、確実な収入を基準にして支出を決める。
家計や財政の基本原則を、簡潔に言い切った表現です。
語源・由来
「入るを量りて出ずるを制す」の由来は、古代中国の儒教経典『礼記』の「王制」篇にあります。
もとは個人の家計ではなく、国家の財政運営について説かれた言葉です。
その年の農作物の収穫量を見極めてから支出計画を立てるべきという健全財政の考え方が、やがて家計や商売など広く一般の場面にも応用されるようになりました。
使い方・例文
家計のやりくりや企業の予算策定など、お金にまつわる計画性が求められる場面で使われます。
- 貯金をするために、入るを量りて出ずるを制すを徹底する。
- 会社の経営再建には、入るを量りて出ずるを制すが不可欠だ。
- 入るを量りて出ずるを制すというように、身の丈にあった生活をする。
読み方の注意
「入るを量りて出ずるを制す」は読み間違いの多い表現です。
「入る」を「はいる」、「出ずる」を「でる」と読むのは誤りで、それぞれ「いる」「いずる」と読みます。
「入日(いりひ)」「日出ずる国(ひいずるくに)」などと同じ読み方です。
人前で音読する機会があれば、注意しておきたいところです。
類義語・関連語
「入るを量りて出ずるを制す」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 量入制出(りょうにゅうせいしゅつ):
「入るを量りて出ずるを制す」をそのまま音読みの四字熟語にした言葉で、全く同じ意味。
(同義語として「量入為出(りょうにゅういしゅつ)」もあります) - 分相応(ぶんそうおう):
自分の身分や能力、財力にふさわしいこと。 - 足るを知る(たるをしる):
今の状況に満足し、それ以上の欲を持たないこと。
対義語
「入るを量りて出ずるを制す」とは対照的な意味を持つ言葉は以下の通りです。
- どんぶり勘定(どんぶりかんじょう):
細かく計算せず、大まかにお金の出し入れをすること。 - 自転車操業(じてんしゃそうぎょう):
借金を返すために借金を重ねるような、余裕のない苦しい資金繰りのこと。
英語表現
「入るを量りて出ずるを制す」を英語で表現する場合、以下の定型句がよく使われます。
Cut your coat according to your cloth.
直訳:布地に合わせてコートを裁断せよ。
意味:自分の持っている資力(布)に合わせて、計画(コート)を立てよ。
- 例文:
We can’t afford a new car. You must cut your coat according to your cloth.
新しい車を買う余裕はない。入るを量りて出ずるを制すことだ。
Live within one’s means
意味:収入の範囲内で生活する。
日常会話で頻繁に使われる表現です。
- 例文:
It is important to live within your means.
収入の範囲内で生活することが重要だ。
まとめ
「入るを量りて出ずるを制す」は、国家財政の原則として生まれながら、時代を超えて家計や商売の場にも根付いた言葉です。
収入という現実を起点に物事を考えるというシンプルな発想が、どの時代のどんな規模の話にも通じてしまう。
その普遍性こそが、この言葉を今も生き続けさせているのかもしれません。







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