入るを量りて出ずるを制す

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ことわざ 故事成語
入るを量りて出ずるを制す
(いるをはかりていずるをせいす)
短縮形:量入制出(りょうにゅうせいしゅつ:四字熟語版)
異形:入るを量りて出ずるを為す(なす)

14文字の言葉」から始まる言葉

「給料日前になると、なぜかお金がない」
「クレジットカードの請求額を見て青ざめた」。
そんな経験はありませんか?

家計であれ、ビジネスであれ、お金の悩みは尽きません。
しかし、健全な財政を保つためのルールは、実はたった一つのシンプルな原則に集約されます。

入るを量りて出ずるを制す
古代中国から伝わるこの言葉は、時代を超えて通用する「資産管理の黄金律」です。
この言葉の正しい意味と読み方、そして現代生活での活かし方を解説します。

「入るを量りて出ずるを制す」の意味・教訓

入るを量りて出ずるを制す(いるをはかりていずるをせいす)とは、収入の額を正確に計算し、その範囲内に収まるように支出をコントロールする、という意味の言葉です。

現代風に言えば、「収入に見合った生活をする」「予算内でやり繰りする」ということです。
経済的に破綻しないための最も基本的、かつ重要な教訓です。

  • 入る(いる):収入。入ってくるもの。現代語の「はいる」ではなく、古風に「いる」と読みます。
  • 量りて(はかりて):見当をつける、計算する。
  • 出ずる(いずる):支出。出ていくもの。「でる」ではなく「いずる」と読みます。
  • 制す(せいす):抑制する、管理する。

ポイントは順序にあります。「使いたい額(支出)」を先に決めてから収入を考えるのではなく、「確実な収入(入る)」を把握するのが先決であり、支出はその後に決めるべきだ、という手順を説いています。

「入るを量りて出ずるを制す」の語源・由来

この言葉の出典は、古代中国の儒教の経典『礼記(らいき)』にある「王制(おうせい)」という章です。

もともとは個人の家計に関する言葉ではなく、国家の財政運営について説いた政治的な指針でした。

「五穀の数を量りて、用を制す」
(その年の農作物の収穫量を見極めてから、国としての支出計画を立てる)

古代においては、穀物の収穫量がそのまま国の収入でした。凶作であれば支出を減らし、豊作であれば余裕を持つ。
国家の歳出は、その年の歳入に基づいて決定しなければならないという、健全財政のあり方を説いた一節が、後に広く一般の家計や商売にも応用されるようになりました。

「入るを量りて出ずるを制す」の使い方・例文

家計管理、企業の予算策定、貯金の計画など、お金にまつわる「計画性」が求められる場面で使われます。

例文

  • 「老後の資金不足が心配なら、まずは『入るを量りて出ずるを制す』で、今の生活水準を見直すことから始めよう。」
  • 「わが社の経営再建の第一歩は、『入るを量りて出ずるを制す』の徹底だ。無駄な経費を徹底的に削減する。」
  • 「ボーナス払いに頼って買い物をするのは危険だ。『入るを量りて出ずるを制す』こそが貯金の近道だ。」

ビジネスシーンでの使用上の注意

この言葉は「守り」に強い言葉です。そのため、借金をしてでも設備投資を行い、将来的に大きなリターンを狙うような「積極的な拡大局面」においては、やや消極的(保守的)な意見として受け取られることがあります。

企業のフェーズ(創業期か安定期か)に合わせて使い分ける必要があります。

「入るを量りて出ずるを制す」の類義語・関連語

  • 身の丈に合う(みのたけにあう):
    自分の地位や経済力にふさわしいこと。無理をしない生活態度。
  • 分相応(ぶんそうおう):
    自分の身分や能力にふさわしいこと。
  • 足るを知る(たるをしる):
    今の状況に満足し、不平不満を抱かないこと。欲張らない心のあり方。

「入るを量りて出ずるを制す」の対義語

収入を無視して使う、計画性がない状態を表す言葉が対義語となります。

  • 丼勘定(どんぶりかんじょう):
    細かく計算せず、大まかにお金の出し入れをすること。職人が腹掛けの「どんぶり(前掛けのポケット)」に無造作にお金を出し入れしていたことが由来。
  • 自転車操業(じてんしゃそうぎょう):
    借金を返すために別の借金をするなど、操業を止めるわけにはいかない苦しい経営状態。
  • 濫費(らんぴ):
    むやみに金銭や物を費やすこと。無駄遣い。

「入るを量りて出ずるを制す」の英語表現

Cut your coat according to your cloth

  • 直訳:布地に合わせてコートを裁断せよ。
  • 意味:「自分の持っている資力(布)に合わせて、計画(コート)を立てよ」
  • 解説:布が足りないのに大きなコートを作ろうとすれば、失敗して着られなくなります。身の丈に合った生活を説く、英語圏で最も有名なことわざです。

Live within one’s means

  • 意味:「収入の範囲内で生活する」
  • 解説:日常会話ではこちらの表現が頻繁に使われます。”Means”はここでは「資力、財力」を意味します。
  • 例文:
    It is important to live within your means to avoid debt.
    (借金を避けるためには、収入の範囲内で生活することが重要だ。)

「入るを量りて出ずるを制す」に関する豆知識

読み方の注意点:「いる」と「いずる」

このことわざは、読み間違いが非常に多い難読語句の一つです。

  • × 入る(はいる)○ 入る(いる)
  • × 出ずる(でる)○ 出ずる(いずる)

「入日(いりひ)」「入り口(いりぐち)」のように、「入」には「い」という読み方があります。
また「出ずる」は、古典文法における「出ず(いず)」の連体形です。「日出ずる国(ひいずるくに)」と同じ用法です。

人前で話す際、「はいるをはかりて〜」と読んでしまうと教養を疑われかねないため、注意が必要です。

まとめ – 自由を手にするための規律

「入るを量りて出ずるを制す」は、単なる「ケチになれ」という教えではありません。

お金の不安は、その多くが「見通しの甘さ」から来ています。収入という現実を直視し、その枠組みの中で工夫して暮らすこと。
それは窮屈なことではなく、むしろ借金や将来の不安から自分を解放し、精神的な自由を手に入れるための唯一の方法と言えるでしょう。

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