意味
「爪に火をともす(つめにひをともす)」とは、爪に灯した火をわずかな明かり代わりにするように、極限まで切り詰めた倹約をしたり、ひどく貧しい暮らしをしたりするというたとえです。
語源・由来
ろうそくや灯火用の油を惜しみ、代わりに自分の爪に火をともして明かりにする、という誇張表現から生まれました。
室町時代の『玉塵抄』(1563年)に「爪に火をとぼす」の形で出てきます。
身を削ってでも出費を抑えるほどの極端な執着心と困窮に由来します。
使い方・例文
「爪に火をともす」は、苦しい節約生活や過度な物惜しみを描写する場面で使われます。
- マイホーム資金を貯めるため、爪に火をともす生活を送る。
- 彼は資産家でありながら、爪に火をともす毎日を過ごしている。
- 物価高で家計が圧迫され、爪に火をともす思いでやりくりする。
「爪に火をともす」と「火の車」の違い
同じく経済的な苦しさを表す言葉ですが、指しているものが異なるため使い分けが必要です。
| 語句 | 指しているもの |
|---|---|
| 爪に火をともす | 出費を抑えようとする行動や態度 |
| 火の車 | 家計が赤字であるという状態 |
また、しみったれたというネガティブなニュアンスが強いため、相手の節約術を褒める言葉として使うのは不適切です。
類義語・関連語
「爪に火をともす」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 吝嗇(りんしょく):
極度に物惜しみをし、過剰に出費を嫌がる態度。 - 一文惜しみ(いちもんおしみ):
ごくわずかなお金であっても支払うのを渋る様子。一文惜しみの百知らずということわざがある。 - 食うや食わず(くうやくわず):
十分な食事も取れず、生きていくのがやっとの極貧状態。
対義語
「爪に火をともす」と反対の意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 金に糸目をつけない(かねにいとめをつけない):
金額に一切の制限を設けず、豪快にお金を使う行為。 - 湯水のごとく使う(ゆみずのごとくつかう):
水を使うように、惜しげもなく大量の財産を消費する様子。 - 豪遊(ごうゆう):
気前よくお金を払い、派手に遊び回る振る舞い。
英語表現
pinch pennies
意味:小銭を惜しんで極端に切り詰める様子
We have to pinch pennies to pay the rent.
(家賃を払うために、ひどく切り詰めた生活をしなければなりません。)
scrimp and save
意味:出費を削って懸命にお金を貯める行動
They scrimp and save for their future.
(彼らは将来のために、極端な節約をしてお金を貯めています。)
切った爪を燃やしてはいけない
日本には古くから、切った爪を火にくべることを忌む民間信仰が広く伝わっています。
爪は身体の一部であり、それを燃やすことは不吉を招く行為として、日常のタブーのひとつに数えられていました。
「爪に火をともす」という表現が単なる「貧乏」や「節約」の描写にとどまらず、これほど強い違和感と極端さを持つのは、そうした禁忌の感覚が下敷きにあるからだと考えられます。
世間の常識に反してまで出費を惜しむという二重の異常さが、表現に独特の切迫感を与えています。
この言葉は、ひどくけちな人を評するときにも使われます。
夏目漱石の『道草』(1915年)には、主人公健三の養父母である島田夫婦のけちぶりについて、「爪に火を点すってえのは、あの事だね」という評が健三の耳に入る場面があります。












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