意味
「器用貧乏(きようびんぼう)」は、なまじ器用であるために色々なことに手を出してしまい、かえってどれも中途半端になって大成しないことです。
器用な人は周りから何かと頼まれて重宝されますが、そのぶん一つのことに打ち込めず、本人は報われない、という含みもあります。
語源・由来
「器用貧乏」は、「器用」と「貧乏」を組み合わせ、器用さがかえって災いして貧しいままでいることを表した言葉です。
今の4字の形は、明治時代になってからの言い方とされます。
芥川龍之介の小説『老年』(1914年)には、三味線歌の歌沢を教える師匠も、俳諧の句の優劣を判定する点者もこなしながら落ちぶれていった老人を描く場面で、「器用貧乏と、持ったが病の酒癖とで」という一節が登場します。
使い方・例文
「器用貧乏」は、多才であるがゆえに専門性に欠け、損をしている状況を自嘲したり、他者を評したりする場面で使われます。
- 頼まれれば何でも引き受けてきたが、気づけば得意と言える仕事が一つもない。とんだ器用貧乏だ。
- 何を任せてもそつなくこなす彼は、部署を次々に回され、専門と呼べる仕事を持てずにいる。器用貧乏の典型だ。
- 彼女は職場の便利屋として重宝されているが、本人は器用貧乏だとこぼしている。
他者への使用における注意点
「器用貧乏」には「大成しない」「中途半端である」という否定的なニュアンスが含まれています。
そのため、多才な人を褒めるつもりで他人に対して使うと、相手の能力を低く見ていると受け取られるおそれがあります。
自己紹介などで謙遜して使う程度にとどめるのが無難です。
類義語・関連語
「器用貧乏」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 多芸は無芸(たげいはむげい):
多くの芸に通じている人は、かえって一つの芸にも秀でていないということ。 - 何でも屋(なんでもや):
様々な用事を請け負うが、特定の専門性を持たない人物。
対義語
「器用貧乏」と反対の意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
英語表現
Jack of all trades, master of none
直訳:どんな仕事もこなす男だが、どれ一つ極めていない
意味:何でもこなせるが、専門的なスキルは持っていない状態
He can fix anything in the office, but he’s a jack of all trades, master of none.
(彼は会社の物なら何でも直せるが、器用貧乏だ。)
才人・平賀源内の「器用貧乏」
「器用貧乏」には「器用貧乏人宝」という長い形があります。
意味は今の「器用貧乏」と同じです。
江戸時代の書き物には、「器用」の代わりに「細工」を使った「細工貧乏人宝」の形で出てきます。
平賀源内は、薬になる動植物を調べる本草学者で戯作者、摩擦で静電気を起こすエレキテルの修理・復元でも知られます。
その源内が、この言葉を自分に当てはめています。
『放屁論』後編(1777年)の巻末で、日本の役に立とうと大名のためにも策を練ったが用が済めば顧みられない、と書き、「細工貧乏人宝」と嘆いています。
そのころの源内は、香木の伽羅で櫛を細工して売る内職をしていました。
人には重宝がられても本人は報われない、という「器用貧乏」の嘆きを、櫛の細工で食いつなぐ本人が書いていたわけです。










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