帯に短し襷に長し

ことわざ 慣用句
帯に短し襷に長し(おびにみじかしたすきにながし)

14文字の言葉」から始まる言葉
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中途半端で、どうにも使い道がない。
そんな「帯に短し襷に長し(おびにみじかし たすきにながし)」という言葉があります。

日常生活や仕事の中で、「Aとしては足りないが、Bとしては余ってしまう」と感じる物や人に出会うことはないでしょうか。この言葉は、まさにそうした状況を的確に表現しています。

「帯に短し襷に長し」の意味・教訓

「帯に短し襷に長し」とは、中途半端で、どちらの用途にも役に立たないことのたとえです。

着物の「帯(おび)」として使うには短すぎるし、和服の袖(そで)をたくし上げるための「襷(たすき)」として使うには長すぎる。どちらの目的にも合わず、使い道がなくて困る、という意味合いを持っています。

物事がどっちつかずであったり、才能や能力が特定の要求にうまく合致しなかったりする状況を指します。

帯に短し襷に長し

「帯に短し襷に長し」の語源

この言葉の明確な出典(いつ、誰が言い始めたか)は定かではありませんが、江戸時代の『世話尽(せわづくし)』(1757年)という書物には「帯に短し襷に長し」という形で見られます。

着物が日常着であった時代、布の長さは非常に重要でした。帯にも襷にも使えない中途半端な長さの布は、まさに「役に立たないもの」の象徴だったのです。この具体的な比喩が、広く世間に定着したとされています。

「帯に短し襷に長し」の使い方と例文

物や人の能力が、求められる基準や用途にぴったり合わない時、その中途半端さを表すために使われます。やや否定的なニュアンスや、残念がる気持ちを含むことが多い表現です。

例文

  • 「この部屋は、一人で住むには広すぎるが、二人で住むには狭すぎる。まさに帯に短し襷に長しだ。」
  • 「彼は多くの知識を持っているが、どれも専門的とは言えず、帯に短し襷に長しで重要な仕事を任せられない。」
  • 「このスマートフォンは、価格の割に機能が少なく、かといって初心者向けというほど安くもない。帯に短し襷に長しな製品だ。」

類義語・関連語

  • 中途半端(ちゅうとはんぱ):
    どちらつかずで、物事が完結していない様子。
  • 器用貧乏(きようびんぼう):
    何でも一通りこなせるが、どれも中途半端で大成しないこと。
  • 多芸は無芸(たげいはむげい):
    多くの芸を持つことは、かえって専門的な芸がないのと同じだということ。
  • 虻蜂取らず(あぶはちとらず):
    二つのものを同時に得ようとして、結局どちらも失敗すること。

対義語

  • 適材適所(てきざいてきしょ):
    人の能力や特性にふさわしい地位や任務を与えること。
  • 過不足なし(かふそくなし):
    多すぎも少なすぎもせず、ちょうど良いこと。
  • うってつけ
    その目的や地位に、まさにふさわしいこと。
  • おあつらえ向き
    まるで注文して作らせたかのように、条件や要求にぴったり合うこと。
  • 帯に短く襷に長し
    (※「帯に短し襷に長し」と表記が似ていますが、意味は「ちょうど良い、ふさわしい」という正反対の意味になる、という説もあります。ただし、この解釈は一般的ではありません。)

英語での類似表現

too… to…, but too… to…

  • 意味:「〜するには〜すぎるが、〜するには〜すぎる」
  • 解説:「帯に短し襷に長し」の構造(Aには足りないがBには余る)をそのまま説明する形です。
  • 例文:
    This cloth is too short to be an obi, but too long to be a tasuki.
    (この布は、帯にするには短すぎるが、襷にするには長すぎる。)

caught between two stools

  • 意味:「二つの椅子の間に落ちる」
  • 解説:二つの椅子の両方に座ろうとして、結局どちらにも座れず間に落ちてしまう様子から。「虻蜂取らず」や「中途半端」に近いニュアンスを持ちます。
  • 例文:
    He tried to please both sides and ended up caught between two stools.
    (彼は双方の機嫌を取ろうとして、結局どっちつかず(帯に短し襷に長し)に終わった。)

neither here nor there

  • 意味:「ここでもなければ、そこでもない」
  • 解説:どちらでもない、中途半端だ、という意味のほか、「重要ではない、的外れだ」という意味でも使われます。
  • 例文:
    His opinion was neither here nor there.
    (彼の意見は、どっちつかずで(あるいは、的外れで)役に立たなかった。)

使用上の注意点

「帯に短し襷に長し」は、物事や人の能力を「中途半端で役に立たない」と評価する、ネガティブなニュアンスの強い言葉です。

特に人に対してこの言葉を使うと、「あの人は使えない」と断じているように聞こえ、相手を深く傷つける可能性があります。人物評として用いる際は、非常に慎重になるべき表現です。

まとめ – 「帯に短し襷に長し」から学ぶ知恵

「帯に短し襷に長し」は、物事や能力が特定の「型」にうまくはまらない時の中途半端さ、もどかしさを表す言葉です。

しかし、帯や襷という特定の用途に合わなかっただけで、その布(あるいは才能)が全くの無価値というわけではありません。視点を変えれば、別の用途で輝く可能性もあります。
この言葉は、物事の価値が「用途との一致」によって決まるという現実と、その「物差し」自体の限界を示唆しているとも言えるでしょう。

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