意味
「運根鈍(うんこんどん)」とは、物事を成し遂げるために不可欠な三つの条件、
すなわち「幸運」と「根気」、そして「粘り強さ」を並べた言葉です。
これら三つが揃って初めて、真の成功を掴み取ることができるという教訓を含んでいます。
「運根鈍」を構成する三つの要素は、それぞれ以下の意味を持っています。
- 運(うん):
自分の力だけでは制御できない、天の与えるチャンスや巡り合わせ。 - 根(こん):
途中で投げ出さず、たゆまず努力を続ける根気や気力。 - 鈍(どん):
小才に走らず、周囲に惑わされずに一つのことに愚直に打ち込む粘り強さ。
語源・由来
「運根鈍」は、三字の順を入れ替えて「運鈍根」とも言います。
明治に古河財閥を一代で築いた古河市兵衛は、「運鈍根」を信条にしたことで知られています。
特に三つ目の「鈍」は、現代では「頭の回転が遅い」といった否定的な意味で使われがちですが、この言葉においては「鈍いくらいの粘り強さ」という良い意味で使われます。
要領よく立ち回って近道を探すよりも、一歩一歩確実に進むことこそが、最終的に大きな運を呼び込むのだという、泥臭くも力強い日本人の成功哲学が反映されています。
使い方・例文
「運根鈍」は、長期的な取り組みが必要な場面や、成功した人の粘り強さを評価する際に用いられます。
ビジネスだけでなく、趣味の習得、受験、地域活動など、あらゆる「道のり」において指針となる言葉です。
例文
- 伝統工芸の世界で名を成すには、まさに運根鈍の精神が求められる。
- 「結果が出ないときこそ運根鈍を思い出し、腐らず続けなさい」と励まされた。
- 彼女の合格は才能以上に、運根鈍を地で行く粘り強さがあったからだ。
- スポーツでも最後は運根鈍が言うような、愚直な反復練習が勝敗を分ける。
類義語・関連語
「運根鈍」と通じる、努力や忍耐の重要性を説く言葉を挙げます。
- 石の上にも三年(いしのうえにもさんねん):
たとえつらくても、辛抱強く三年間続ければ報われるということ。 - 継続は力なり(けいぞくはちからなり):
小さな努力であっても、休まず続けることが大きな成果を生むということ。 - 一念通天(いちねんつうてん):
強い決意を持って努力し続ければ、その思いは天に通じ、必ず成し遂げられるということ。 - 愚公移山(ぐこういざん):
絶え間ない努力を続ければ、山を動かすような困難なことでも達成できるという例え。
対義語
「運根鈍」とは反対に、根気がなかったり、目先の器用さに頼ったりする様子を表す言葉です。
- 三日坊主(みっかぼうず):
飽きっぽく、物事が長続きしないこと。 - 小才に走る(こさいにはしる):
目先の利口さや、ちょっとした才能に頼って、物事の本質や大きな目的を見失うこと。 - 棚からぼたもち(たなからぼたもち):
自ら努力することなく、思いがけない幸運を手に入れること。
英語表現
英語には、「運根鈍」の三要素のうち「根」と「鈍」にあたる、粘り強さが報われることを言う次の言い回しがあります。
Persistence pays off
直訳は「粘り強さは報われる」で、「鈍(愚直な継続)」こそが最終的に成功をもたらすという、この言葉の核心を突いた表現。
Don’t give up; remember that persistence pays off.
(諦めてはいけない。粘り強さは必ず報われるのだから。)
足尾銅山の古河市兵衛、運鈍根の「鈍」は利口の反対
足尾銅山を経営した実業家の古河市兵衛は、1899年(明治32年)に出た名士の談話集に載った聞き取りで、「運鈍根」の三字を自分の言葉で説明しています。
運は天にあって人間にはどうにもできないもの、根は根気がよく辛抱強いことだと述べました。
「鈍」については「此れは智恵のあるものゝ反対なので、愚鈍といふことで御座います」(これは知恵のある者の反対で、愚鈍ということです)と言っています。
理由として古河は、利口で学問があるといろいろ考えすぎて大きな仕事をしかねる、商人も利口すぎると方々に手を出してどれも仕遂げにくい、と話しました。
自分の鉱山には博士も学士も西洋人もいるが、その人たちが自分に使われている、という例も挙げています。
「鈍」は今ふつう「粘り強さ」と説明されますが、古河自身は、考えすぎず手を広げない愚かさを「運鈍根」の「鈍」と呼んでいました。











コメント