思い立った初日は徹夜するほど熱中したのに、数日後にはすっかり放置してしまう。
そんな、極端にムラのある努力がいかに無意味であるかを戒めるのが、
「一暴十寒」(いちばくじっかん)です。
意味・教訓
「一暴十寒」とは、少しの間だけ努力しても、怠けている期間が長ければ成果は上がらないことのたとえです。
物事を成し遂げるには、断続的で極端な努力よりも、地道な継続こそが不可欠であるという教訓を含んでいます。
- 一暴(いちばく):一日だけ太陽の光に当てて温めること。(※「暴」は「曝」と同義)
- 十寒(じっかん):十日間、冷たい空気にさらすこと。
語源・由来
「一暴十寒」の由来は、中国の思想家・孟子(もうし)の言行録である『孟子』の「告子(こくし)上」にあります。
孟子は、いくら生命力の強い植物であっても「一日だけ日に当てて温め、その後十日間も冷たい場所に放置したのでは、決して育つことはない」と語りました。
これは、斉の宣王(せいせんおう)の周囲に立派な人物が少なく、よこしまな家臣が多い状況を植物に例えたものです。
孟子自身がたまに出仕して正しい道を説いても、王がすぐに周囲の悪影響を受けてしまうことを嘆き、教化の難しさを説いた逸話から生まれました。
使い方・例文
「一暴十寒」は、継続的な努力が必要な場面で、熱意が続かず途切れ途切れになっている状態を戒める場面で使われます。
- 一暴十寒ではダイエットは成功しない。
- 英語の勉強が一暴十寒になっている。
- 彼の練習態度はまさに一暴十寒だ。
類義語・関連語
「一暴十寒」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 三日坊主(みっかぼうず):
非常に飽きっぽく、物事が長続きしないこと。 - 竜頭蛇尾(りゅうとうだび):
初めは勢いが良いが、終わりにかけて失速してしまうこと。 - 熱しやすく冷めやすい(ねっしやすくさめやすい):
興味を持つのは早いが、すぐに飽きてしまう性質のこと。
対義語
「一暴十寒」とは対照的な意味を持つ言葉は、以下の通りです。
- 点滴穿石(てんてきせんせき):
小さな水滴でも、長く落ち続ければ石に穴を開けるように、わずかな努力でも根気よく続ければ成功するという意味。 - 継続は力なり(けいぞくはちからなり):
地道に続けることが、やがて大きな成果につながるということ。 - 石の上にも三年(いしのうえにもさんねん):
辛くてもじっと耐え忍んで継続すれば、やがて報われることのたとえ。
英語表現
「一暴十寒」を英語で表現する場合、以下の言葉が適しています。
blow hot and cold
直訳:熱くなったり冷たくなったりする
意味:熱中したり冷めたりする、気まぐれであること
- 例文:
He tends to blow hot and cold about his hobbies.
彼は趣味に対して一暴十寒になりがちだ。(熱しやすく冷めやすい)
by fits and starts
意味:発作的に、途切れ途切れに(断続的に)
- 例文:
She studied English by fits and starts.
彼女は英語を一暴十寒に勉強した(途切れ途切れに勉強した)。
「暴」の字に隠された本来の意味
「一暴十寒」の「暴」は、現代では「乱暴」「暴力」など荒々しい意味で使われますが、ここでは「曝(さらす)」と同じ字として用いられており、「太陽の光に当てて温める」という意味です。
植物を育てるための「日照」を表す穏やかな字が、「暴力」と同じ字であることは、言葉の成り立ちを理解する上で興味深い点です。









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