意味
「苟且(こうしょ)」とは、その場しのぎの間に合わせ、または物事をいい加減に済ませる様子を指します。
ただ一時的というだけでなく、「かりそめで不誠実だ」と批判する含みで使われます。
- 苟(こう):なおざり。いい加減。かりそめ。
- 且(しょ):しばらく。とりあえず。
語源・由来
「苟且」は古代中国の書物に出てくる語で、二字が揃った形は『漢書』王嘉伝に「苟且の意有る莫し」とあります。
「苟」は「なおざりにする(軽んじる)」、「且」は「当面の間」で、二字を合わせて「深く考えず、とりあえず済ませる」という意味になります。
日本でも、一時的な仮の状態や、いい加減な処置を指す言葉として文章の中で使われてきました。
今では、目の前の安楽にふけることを戒める四字熟語「苟且偸安(こうしょとうあん)」の形でもよく知られています。
使い方・例文
「苟且」は、間に合わせの処置や、長続きしない人間関係、まじめさを欠いた勉強の仕方などを言うときに使います。
例文
- 蛇口の漏水を布で縛るような苟且な修理では、根本的な解決にならない。
- テスト前の苟且な暗記は、試験が終わればすぐに忘れてしまうものだ。
- 彼は苟且の安眠を貪るばかりで、将来への備えを全くしようとしない。
- 誤解を解かずに苟且な妥協を重ねた結果、二人の仲は決定的に冷え込んだ。
誤用・注意点
「苟且」と意味が重なる言葉に「姑息(こそく)」がありますが、二つは含みが少し違います。
現代では「姑息」を「卑怯」という意味で使う人が増えていますが、本来の意味は「苟且」と同じ「一時しのぎ」です。
ただし、「苟且」が「いい加減、なおざり」という性質を強調するのに対し、「姑息」は「根本を避けて逃げる」というニュアンスが強くなります。
どちらも批判する言葉で、相手の判断や仕事に向けて使うととても失礼に聞こえるため、避けたほうが無難です。
類義語・関連語
「苟且」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 姑息(こそく):
根本的な解決をせず、その場しのぎの手段で済ませること。 - 苟且偸安(こうしょとうあん):
目の前の安楽にふけって、将来の災いを考えないこと。 - 当座しのぎ(とうざしのぎ):
その場を何とか取り繕って、一時的に間に合わせること。
対義語
「苟且」とは対照的な意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 終始一貫(しゅうしいっかん):
最初から最後まで、態度や方針が変わらず突き通されていること。 - 抜本的(ばっぽんてき):
物事の根本に立ち返り、原因を徹底的に取り除くこと。 - 恒久(こうきゅう):
一時的ではなく、いつまでも変わらずに長く続くこと。
英語表現
「苟且」を英語で表現する場合、次のような語があります。
makeshift
「間に合わせの」「一時しのぎの」
「とりあえずある物で作った」というニュアンスを含む、最も一般的な表現です。
They lived in a makeshift shelter after the storm.
(彼らは嵐の後、「苟且」のシェルターで過ごした。)
stopgap
「穴埋めの」「一時的な」
一時的に生じた隙間や問題を埋めるための、暫定的な処置を指します。
The measure was only a stopgap to prevent further loss.
(その措置は、さらなる損失を防ぐための「苟且」なものに過ぎなかった。)
「苟且」の「苟」は「いやしくも」と読む
「苟且」の「苟」は、訓読みで「いやしくも」と読む字です。
「かりにも」「まがりなりにも」という意味と、「いい加減に」という意味の両方を持ちます。
『論語』子路篇には、次の一句があります。
君子於其言,無所苟而已矣。
(君子は其の言に於いて、苟くもする所無きのみ)
君子は自分の言葉をいい加減には扱わない、という意味です。
これは孔子が「名を正す」ことを説いた場面の締めくくりに置かれています。
呼び名が正しくなければ言葉は通らず、言葉が通らなければ事は成らない、という筋道の最後に、言葉を粗末にしないという一言が来ます。
「苟且」の「苟」は、そこで戒められている側の「苟」です。










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