四字熟語 故事成語

苟且偸安

(こうしゃとうあん)

目先の安楽を貪り、将来の災いを考えないこと。


8文字の言葉こ・ご」から始まる言葉
苟且偸安 ことば
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意味

「苟且偸安」とは、目の前の安楽にふけって、将来の災難を考えないことを意味する四字熟語です。
ただ休んでいるのではなく、なすべきことを怠り、その場しのぎの平穏を得ようとする不誠実な姿勢を批判的に表現します。

  • 苟且(こうしょ):その場しのぎ。いい加減。
  • 偸安(とうあん):一時の安楽をぬすむ。

将来に大きなツケが回ってくると分かっていながら、今の苦労から逃げ出す心の弱さを戒める教訓が含まれています。

語源・由来

「苟且偸安」は、二つの語を組み合わせてできた四字熟語です。
四字が揃った形は『宋史』の劉光祖りゅうこうそ伝に見え、「苟且偸安なれば、則ち是れ久遠に国を誤る」と記されています。

「苟且」は古くから「なおざり」や「間に合わせ」を意味し、「偸安」は安らぎを「偸(ぬす)む」、つまり正当ではない方法で一時的な安心を得ることを意味しました。
これらが組み合わさり、国家の危機や重大な課題を前にしながら、抜本的な対策を講じずに目先の平穏を貪る政治的な怠慢を指す言葉として定着しました。

「苟且」は『漢書』に、「偸安」は前漢の賈誼かぎが書いた『新書』に、それぞれ別々にさかのぼる言葉です。
日本でも、現状に安んじて向上心を欠く風潮を批判する文脈で用いられてきました。

使い方・例文

「苟且偸安」は、自分自身の甘えを律する場面や、将来を見据えない無責任な対応を指摘する際に用いられます。

例文

  • 借金を重ねて遊興にふけるのは、まさに苟且偸安の極みだ。
  • 苟且偸安に流されず、今こそ抜本的な組織改革に着手すべきである。
  • 受験前にこたつで丸まってテレビばかり見る苟且偸安な日々を過ごした。
  • 苟且偸安の報いとして、数年後に大きな苦境に直面することになった。

誤用・注意点

「苟且偸安」は「正当な休息」とは明確に区別されます。
心身の回復を目的とした休みではなく、「やるべきことから逃げている」という否定的な文脈で使われる言葉です。

また、「姑息(こそく)」と意味が似ていますが、「姑息」が一時しのぎの「手段」を指すのに対し、「苟且偸安」はその手段によって得られる「一時の楽(らく)」という心理状態に焦点が当たっています。

強い批判のニュアンスを含むため、他人の正当な休暇やリフレッシュを指して使うのは不適切であり、失礼にあたります。

類義語・関連語

「苟且偸安」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 因循姑息(いんじゅんこそく):
    古い習慣に頼って改めようとせず、その場しのぎで物事を済ませること。
  • 偸安(とうあん):
    目先の安楽にふけること。
  • 当座しのぎ(とうざしのぎ):
    根本的な解決をせず、その場だけを何とか取り繕うこと。
  • 刹那的(せつなてき):
    後先を考えず、今この瞬間だけを充実させようとする様子。

対義語

「苟且偸安」とは対照的な意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 抜本塞源(ばっぽんそくげん):
    災いの原因を根本から取り除き、再び起こらないようにすること。
  • 勇往邁進(ゆうおうまいしん):
    困難を恐れず、目標に向かって勇ましく突き進むこと。
  • 不撓不屈(ふとうふくつ):
    どんな困難にあっても、決して心がくじけないこと。

英語表現

「苟且偸安」を英語で表現する場合、以下の定型表現がニュアンスをよく伝えます。

taking the line of least resistance

「最も抵抗の少ない道を選ぶ」

努力や苦労を避け、最も楽な方法や安易な解決策に逃げる態度を指します。

He is just taking the line of least resistance instead of facing the problem.
(彼は問題に向き合わず、ただ「苟且偸安」に流されている。)

living in a fool’s paradise

「愚者の楽園に住む」

将来の危険に気づかず、あるいは目を背けて、根拠のない幸福感に浸っている状態を指します。

Ignoring the crisis is like living in a fool’s paradise.
(危機を無視するのは、「苟且偸安」の安らぎに浸っているようなものだ。)

「偸安」は薪の下に火を置いて眠ること

「偸安」の出どころは、前漢の賈誼かぎが書いた『新書』の数寧すうねい篇です。

「火を抱きて之を積薪の下にきて其の上にぬ。火未だ燃ゆるに及ばず、因りて之を安しと謂うは、偸安なる者なり」。
積み上げた薪の下に火種を入れ、その薪の山の上で寝る。
まだ燃え出していないから安全だと言い張る——それが「偸安」だと賈誼かぎは書きました。

賈誼かぎはこの直後に「方今の勢い、何を以て此に異ならん」と続けます。
いまの朝廷がまさにその状態だ、という当てこすりです。
目先の安楽をむさぼるという意味は、この比喩から出ています。

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