死ねば死に損、生くれば生き得

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ことわざ 慣用句
死ねば死に損、生くれば生き得
(しねばしにぞんいくればいきとく)
短縮形:死に損生き得
異形:死ねば死に損、生くれば生き徳/死ねばゴミ、生くれば仏

15文字の言葉し・じ」から始まる言葉

大きな失敗をして財産を失ったり、理不尽な仕打ちを受けて絶望の淵に立たされたりすると、何もかもが嫌になってしまうことがあります。
しかし、たとえどんなに無様な姿を晒してでも、命を繋いでさえいれば、いつか必ず幸運が巡ってくるものです。
そのような生への執着と希望を肯定する言葉を、
「死ねば死に損、生くれば生き得」(しねばしにぞん、いくればいきとく)と言います。

意味・教訓

「死ねば死に損、生くれば生き得」とは、死んでしまえばすべてが終わりで損をするだけだが、生きていれば必ず良いことに巡り合えるという意味です。

この言葉の核心は、「生き続けることこそが最大の利益である」という点にあります。
どれほど苦しい状況であっても、命を捨てずに生き抜くことが、将来の幸福を掴むための唯一かつ絶対の条件であると説いています。

語源・由来

「死ねば死に損、生くれば生き得」は、江戸時代の庶民の間で生まれ、口承されてきた言葉です。

江戸時代の国語辞書『俚言集覧』(りげんしゅう覧)にも記載があり、当時から広く知られていたことが分かります。
「生き得」は「生き徳」とも書かれ、生きていくことで得られる徳(利益)を指しています。
なお、この言葉は『江戸いろはかるた』の類句としても知られていますが、
江戸版の「し」の札の多くは「死んで花実が咲くものか」が採用されています。
本句はそれと対をなすような、より口語的で力強い励ましの言葉として定着しました。

使い方・例文

「死ねば死に損、生くれば生き得」は、過酷な状況にある人を勇気づける際や、自分自身の心を奮い立たせる際に用いられます。
「命さえあれば再起できる」という文脈で、日常の挫折から重大な困難まで幅広く使われます。

例文

  • 事業に失敗して借金を抱えたが、死ねば死に損、生くれば生き得だと言い聞かせて再出発する。
  • 酷い失恋で落ち込む友人に、死ねば死に損、生くれば生き得と声をかけ、一緒に食事へ出かけた。
  • どんなに辛いことがあっても、死ねば死に損、生くれば生き得だから、まずは今日を生きよう。

文学作品・メディアでの使用例

『パンドラの匣』(太宰治)
結核療養所を舞台としたこの作品では、戦後の混乱期における生への希望が描かれています。
登場人物の「ひばり君」が、死の影が漂う中で仲間を鼓舞するようにこの言葉を口にします。

死ねば死に損、生くれば生き得。と、こう言うんだ。わかったか。」

類義語・関連語

「死ねば死に損、生くれば生き得」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 命あっての物種(いのちあってのものだね):
    何事も命があってこそ可能になるので、命を何より大切にすべきだという意味。
  • 死んで花実が咲くものか(しんではなみがさくものか):
    死んでしまっては、成功して名声を博したり、幸せを味わったりすることはできないという意味。
  • 生きてるだけで丸もうけ(いきてるだけでまるもうけ):
    タレントの明石家さんま の座右の銘として有名な言葉。
    「死ねば死に損、生くれば生き得」の現代的な表現と言え、生身の人間として存在していること自体の価値を肯定しています。

対義語

「死ねば死に損、生くれば生き得」とは対照的な意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 死に花を咲かせる(しにばなをさかせる):
    死に際に立派な行いをして、一生の最期を華やかに飾ること。生よりも「死に方」に価値を置く考え。
  • 身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ(みをすててこそ浮かぶせもあれ):
    自分の命を投げ出す覚悟で物事に当たってこそ、初めて活路が見出せるという意味。

英語表現

「死ねば死に損、生くれば生き得」を英語で表現する場合、以下の定型表現が適切です。

Better a living dog than a dead lion.

「死んだライオンより、生きている犬の方がマシである」
聖書(伝道の書)に由来する諺です。どれほど威厳のある強者(ライオン)であっても死んでしまえば終わりであり、弱者(犬)であっても生きている方が価値があるという、本句に近いニュアンスを持ちます。

  • 例文:
    I don’t care if I look miserable. Better a living dog than a dead lion.
    どんなに無様でも構わない。死んだライオンより、生きている犬の方がマシだ。

While there is life, there is hope.

「命がある限り、希望はある」
命さえあれば、どんな困難な状況からでもやり直せるという普遍的な希望を説く表現です。

現代に受け継がれる「生き得」の哲学

「死ねば死に損、生くれば生き得」の精神は、現代でも多くの人々に勇気を与えています。
その代表例が、明石家さんまの座右の銘である「生きてるだけで丸もうけ」です。
この言葉は、彼がかつて直面した凄惨な航空機事故(搭乗予定を直前で変更し難を逃れた経験)などを経て、命の尊さを実感したことから生まれたと言われています。

娘のIMALU(いまる)さんの名前も、「きているだけでまるもうけ」に由来していることは有名です。
江戸時代の庶民が培った「泥臭くても生き抜く」というリアリズムは、形を変えながら今も私たちの背中を押し続けているのです。

まとめ

「死ねば死に損、生くれば生き得」という言葉は、私たちの生への執着を肯定し、勇気づけてくれます。
人生には時として、すべてを諦めたくなるような瞬間が訪れるかもしれません。
しかし、ただ「生きていること」そのものが最大の勝機であり、幸運を掴むための唯一の条件なのです。
この言葉は、明日への希望を捨てず、どんな時も前を向いて歩き続けるための、古くて新しい知恵と言えることでしょう。

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