老いて学べば死して朽ちず

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ことわざ 慣用句
老いて学べば死して朽ちず
(おいてまなべばししてくちず)

13文字の言葉」から始まる言葉

定年を迎え、これまでの仕事とは全く無縁だった歴史の勉強を始めたり、新しい楽器に挑戦したりする人がいます。
周囲からは「今さら学んで何になるのか」と聞かれることもあるかもしれません。
しかし、いくつになっても知的好奇心を持ち続け、知識を深める姿は、その人の魂をいつまでも輝かせ、周囲に深い感銘を与え続けます。
そんな、生涯を通じて学び続けることの尊さを、
「老いて学べば死して朽ちず」(おいてまなべばししてくちず)と言います。

意味・教訓

「老いて学べば死して朽ちず」とは、晩年になってから学んだことは、たとえ死んだ後でもその人の精神的な遺産として残り続けるという意味です。

「もう年だから学んでも遅い」と諦めるのではなく、人生の終盤における学びこそが人間の品格を完成させ、肉体が滅びた後もなお色あせない価値を持つという教訓が込められています。
現代で言うところの「生涯学習」の精神を、最も気高く表現した言葉と言えるでしょう。

語源・由来

「老いて学べば死して朽ちず」の由来は、江戸時代後期の儒学者、佐藤一斎(さとういっさい)が著した随筆集『言志四録』(げんししろく)の「言志晩録」にある一節です。

一斎はその中で、人生の三段階における学びの効果を説きました。
若いうちに学べば働き盛りに役立ち、壮年期に学べば老いても衰えず、老いて学べば死んでもその名は朽ちない」という内容です。

佐藤一斎は幕末の多くの志士たちに大きな影響を与えた人物であり、この言葉は今もなお、生涯学習の重要性を伝える最高の金言として親しまれています。

使い方・例文

「老いて学べば死して朽ちず」は、高齢になってから何かを学び始めた人を称賛する際や、自分自身の向上心を奮い立たせる場面で使われます。

例文

  • 80歳で英語の勉強を始めた祖母の姿は、まさに「老いて学べば死して朽ちず」を体現している。
  • 「老いて学べば死して朽ちず」と言うように、新しい知識を得る喜びは生涯の宝物だ。
  • 定年後に地域の歴史を研究し、一冊の本にまとめた彼の情熱は「老いて学べば死して朽ちず」の言葉通りだ。

誤用・注意点

「老いて学べば死して朽ちず」は、個人の精神的な豊かさを称える言葉であり、「死後も有名になるべきだ」という名誉欲を肯定するものではありません。

また、この言葉には「死」という直接的な表現が含まれているため、相手によっては不謹慎あるいは縁起が悪いと感じさせてしまう恐れがあります。
特に健康に不安を感じている方や、死を意識しすぎる傾向のある方に対して直接使うのは避け、自分自身の座右の銘や、前向きに活動している方への最大級の賛辞として用いるのが適切です。

類義語・関連語

「老いて学べば死して朽ちず」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 生涯学習(しょうがいがくしゅう):
    人々が生涯のあらゆる段階において、自発的に行う学習のこと。
    現代の教育理念ですが、その根底にある「学ぶことに終わりはない」という思想は、佐藤一斎の教えと深く共鳴しています。
  • 学問に老少なし(学問になかどしなし):
    学問を始めるのに、年齢の若さや老いは関係ないという意味。
    中世の禅の教えや教育論に端を発し、江戸時代の「寺子屋」などでも生涯学習の重要性を説く際に広く用いられました。
  • 死して不朽(ししてふきゅう):
    肉体は滅びても、その人の業績や精神、優れた徳は後世まで残り続けること。
    中国最古の歴史書の一つ『左伝(さでん)』に見える概念で、人格を高め、優れた言説を残すことの永遠性を説いています。

対義語

「老いて学べば死して朽ちず」とは対照的な意味を持つ言葉は以下の通りです。

  • 老いぬれば学び難し(おいぬればまなびがたし):
    歳をとってしまうと、新しいことを覚えたり身につけたりするのは困難であるという意味。
    鎌倉時代の説話集『沙石集(させきしゅう)』などに見られる「歳をとってからでは手遅れだ」という現実的な自戒や、若いうちの研鑽を促す教訓からきています。
  • 少くして学ばざれば老いて悔ゆ(わかくしてまなばざればおいてくゆ):
    若い時に努力して学んでおかないと、歳をとってから後悔することになるという戒め。
    宋の時代の儒学者、朱熹(しゅき)が説いた「朱子十悔(しゅしじっかい)」の一つに数えられる言葉です。

英語表現

「老いて学べば死して朽ちず」を英語で表現する場合、以下のようなフレーズがあります。

Never too old to learn

「学ぶのに遅すぎるということはない」
年齢に関わらず、いつでも新しいことを学び始めることができるという最も一般的な表現です。

  • 例文:
    My grandfather started coding at 70; it’s never too old to learn.
    祖父は70歳でプログラミングを始めた。学ぶのに遅すぎることはない。

Live as if you were to die tomorrow. Learn as if you were to live forever.

「明日死ぬかのように生きよ。永遠に生きるかのように学べ。」
ガンジーの名言として知られ、日々を大切に生きることと、無限に学び続ける姿勢を説いた言葉です。

  • 例文:
    His motto was “Learn as if you were to live forever.”
    彼の座右の銘は「永遠に生きるかのように学べ」だった。

西郷隆盛も愛した「座右の書」

「老いて学べば死して朽ちず」が収められた『言志四録』は、西郷隆盛が終生持ち歩き、その中から101箇条を自ら書き抜いて大切にしたことで知られています。

著者である佐藤一斎は、この壮大な随筆集を40年以上の歳月をかけて、80歳を過ぎるまで書き続けました。
彼自身が、まさに晩年まで思考を深め、筆を止めず、この言葉を自らの生き方で証明した人物でもあります。

現代においても、定年退職は「学びの終わり」ではなく、利害関係に縛られない「真の生涯学習の始まり」であると捉える人が増えています。
一斎の言葉は、人生100年時代を生きる私たちにとって、より切実な重みを持って響きます。

まとめ

「老いて学べば死して朽ちず」という言葉は、私たちに「学びは時間や年齢に支配されない」という力強い希望を与えてくれます。
肉体的な若さを保つことは難しくても、新しい知識に触れ、知性を磨き続けようとする情熱は、人を内側から若々しく保ちます。

この言葉を胸に留めることで、いくつになっても「今が一番若い」という瑞々しい気持ちで、新しい世界へ一歩を踏み出す勇気が湧いてくることでしょう。

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