慣用句 故事成語

一頭地を抜く

(いっとうちをぬく)

他よりも一段と抜きん出て優れていること。

異形:一頭地を出だす

8文字の言葉」から始まる言葉
一頭地を抜く ことば
スポンサーリンク

意味

「一頭地を抜く」とは、他よりも一段と抜きん出ていることを意味します。
大勢の人の中で、知識、技術、才能などが際立って優れている状態を表す慣用句です。

「一頭」は頭一つ分、「地」は場所や位置のことです。周囲の人々よりも頭一つ分だけ高い位置に抜け出ている様子から、並外れた優秀さを例える言葉となりました。

語源・由来

元の時代(1345年完成)に編纂された歴史書『宋史(そうし)』や、11世紀の北宋の文人である欧陽脩(おうようしゅう)が記した書簡(『与梅聖兪書』)に由来します。

当時の官僚登用試験(科挙)で試験官を務めていた欧陽脩は、若き受験生であった蘇軾(そしょく)が書いた文章のあまりの素晴らしさに衝撃を受けました。
欧陽脩は友人の梅堯臣(ばいぎょうしん)に宛てた手紙の中で、「この老いぼれは道を譲り、彼を頭一つ分先に出させてやらなければならない(一頭地を出だす)」と、若き才能を大絶賛しました。

この「一頭地を出だす(譲って先に出させる)」という言葉が日本に伝わり、のちに自らの実力で他を追い抜くニュアンスへと変化し、「一頭地を抜く」として定着しました。

使い方・例文

「一頭地を抜く」は、集団の中で圧倒的な実力や才能を示す場面で使われます。

  • 彼のピアノの演奏技術は、コンクール出場者の中で一頭地を抜いていた。
  • 企画の着眼点において、彼女は同期の中で一頭地を抜く存在だ。
  • 今年の新入生の中で、彼の語学力は一頭地を抜いている。

類義語・関連語

「一頭地を抜く」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 群を抜く(ぐんをぬく):
    多くのものの中で、ひときわ優れていること。
  • 白眉(はくび):
    同類の中で、最も傑出している人や物のこと。
  • 鶏群の一鶴(けいぐんのいっかく):
    多くの凡人の中に、一人だけ優れた人物が交じっていることのたとえ。

対義語

「一頭地を抜く」とは対照的な意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

英語表現

「一頭地を抜く」を英語で表現する場合、以下のような定型句があります。

stand head and shoulders above

意味:他よりもずば抜けて優れていること。

He stands head and shoulders above the rest of the team.
(彼はチームの他のメンバーより一頭地を抜いている。)

be a cut above

意味:他よりも一段レベルが高いこと。

Her design is a cut above the others.
(彼女のデザインは他より一頭地を抜いている。)

先達の謙虚な言葉が、いつの間にか逆の意味で使われている

語源となった欧陽脩の言葉「一頭地を出だす」は、本来「若者に道を譲って、頭一つ分前に出してやろう」という、権威ある先達の深い敬意と謙虚さから発せられた言葉でした。

しかし、日本に伝わって定着していく過程で、言葉の主体が「才能を引き上げる側」から「自ら才能を示す側」へと変化しました。
近代以降の日本語の中で、この言葉はしだいに、自らの才能や努力によって能動的に「他者を追い抜く」という意味合いで広く使われるようになっています。

先人が後進を評価するために使った謙虚な言葉が、今では自分の実力を誇る側の言葉として使われている点に、この語のねじれがあります。

スポンサーリンク

コメント