病治りて医師忘る

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ことわざ
病治りて医師忘る
(やまなおおりていしわする)
異形:病治れば医師忘る

12文字の言葉」から始まる言葉

病気のときは必死で医師に頼り、心から感謝する。
しかし治った途端、その恩義をすっかり忘れて平然としている。
そんな人間の身勝手な一面を「病治りて医師忘る」(やまいなおりていしわする)と言います。

意味・教訓

「病治りて医師忘る」とは、苦しい時に受けた恩義も、その苦しみが去ってしまうと簡単に忘れてしまうことのたとえです。

病気で苦しんでいる最中は医者を頼り切り、治してくれたことへの感謝に溢れています。
ところが、病気が完治して健康になると、医者の恩などこれっぽっちも思い出さなくなるという、人間の現金な性質を皮肉っています。
単に記憶が薄れることではなく、自分勝手な忘却や不義理な態度を戒める教訓として使われます。

語源・由来

「病治りて医師忘る」の由来は、古くからの日常生活における直接的な経験にあります。
人間にとって病は最も切実な苦しみの一つであり、その解放の喜びが大きすぎるあまり、あるいは平穏が当たり前になるあまり、苦境を支えてくれた存在への意識が薄れてしまう。
こうした普遍的な心理が、医者と患者という象徴的な関係を通して言葉となりました。

特定の文学作品を出典とするものではありませんが、江戸時代にはすでに「病治れば医師忘る」などの形で広く親しまれていました。

使い方・例文

困った時だけ人に頼り、解決した途端に連絡を絶つような不義理な態度を指摘する場面で使われます。

例文

  • 借金を返した途端に挨拶もしないとは、まさに病治りて医師忘るだ。
  • 病治りて医師忘るにならぬよう、当時の恩を常に忘れない。
  • 窮地を脱した後の彼の冷淡さは、病治りて医師忘るそのものだ。

類義語・関連語

「病治りて医師忘る」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 喉元過ぎれば熱さを忘れる(のどもとすぎればあつさをわすれる):
    苦しい経験も、過ぎ去ってしまえばその苦痛を忘れてしまうこと。
  • 雨晴れて笠を忘る(あめはれてかさをわする):
    雨がやむと、お世話になった雨具のありがたみを忘れてしまうこと。
  • 暑さ忘れて陰忘る(あつさわすれてかげわする):
    暑い時に世話になった木陰のありがたさを、涼しくなると忘れてしまうこと。
  • 苦しい時の神頼み(くるしいときのかみだのみ):
    普段は信心深くないのに、困った時だけ神仏に祈り、解決すると忘れること。

対義語

「病治りて医師忘る」とは対照的な意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 結草報恩(けっそうほうおん):
    死んだ後でも、受けた恩に報いようとすること。
  • 臥薪嘗胆(がしんしょうたん):
    将来の成功のために、今の苦労や悔しさを忘れずに耐え忍ぶこと。
  • 恩に着る(おんにきる):
    受けた恩をありがたく思い、感謝の気持ちを抱き続けること。

英語表現

「病治りて医師忘る」を英語で表現する場合、以下の定型句がよく使われます。

Danger past, God forgotten.

意味:危険が去れば、神のことは忘れられる。
危機を脱した後は、助けを求めた神への感謝を忘れてしまうという、人間の現金さを表す代表的な表現です。

  • 例文:
    He promised to change, but “danger past, God forgotten.”
    (彼は変わると約束したが、病治りて医師忘るだった。)

Once on shore, we pray no more.

意味:一度岸に上がれば、もはや祈らない。
船が難破しそうな時は必死に祈るが、無事に陸に着けば祈るのをやめてしまうことに由来します。

感謝を忘れないための戒め

「病治りて医師忘る」は、私たちの心の奥にある身勝手さを映し出す鏡です。
人は苦境にあるときは謙虚になりますが、恵まれた環境に慣れると、そのありがたみを当然のように感じてしまいます。

この言葉は、他人の不義理を批判するためのものではありません。
自分自身もまた、喉元を過ぎれば感謝を忘れてしまう弱さを持っている。
その自覚を促し、平穏な時こそかつての助けに思いを馳せるための警鐘です。

まとめ

「病治りて医師忘る」は、医者と患者の関係を借りて、人間の移ろいやすい感謝の念と身勝手さを鋭く指摘した言葉です。

日常が平穏になると、かつての困難やそれを支えてくれた人々の存在を、つい忘れてしまう。それが人間です。しかしこの言葉を胸に留めておくことで、当たり前の中に隠れた恩義に気づき、より誠実な人間関係を築く第一歩になるはずです。

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