一衣帯水

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四字熟語 故事成語
一衣帯水
(いちいたいすい)

7文字の言葉」から始まる言葉
一衣帯水 意味・使い方

「海や川を挟んでいるとはいえ、船に乗ればあっという間に着いてしまう距離」。
そんなふうに、川や海峡などの狭い水域を挟んで、二つの土地が極めて近くに隣り合っている状態を表したのが、「一衣帯水」(いちいたいすい)です。

意味

「一衣帯水」とは、一本の帯のように細く狭い川や海峡のことです。
転じて、そのような狭い水域を挟んで二つの地域が極めて近く接している関係を意味する四字熟語として用いられます。

  • 一衣帯(いちいたい):一枚の着物の帯。一本の帯。
  • (すい):川や海などの水域。

語源・由来

「一衣帯水」は、中国の歴史書『南史』(陳後主紀)に由来する故事成語です。

6世紀末、中国大陸を統一しようとしていた隋(ずい)の初代皇帝・文帝(楊堅)が、長江(揚子江)の南にある国・陳(ちん)を討伐しようとした際の言葉が語源です。

文帝は、「私は民の父母である。どうして一筋の帯のような狭い川(長江)があるからといって、苦しむ陳の民を救わずにいられようか」と語り、長江を「一衣帯水」と表現して軍を進めました。
この故事から、水域を挟んで極めて近い距離にあることを指す言葉として定着しました。

使い方・例文

「一衣帯水」は、海峡や川などを挟んで隣接する国や地域間の、地理的な近さを表現する場面で使われます。

  • 日本と韓国は、海を隔てて一衣帯水の位置にある隣国だ。
  • 本州と四国は、瀬戸内海を挟んで一衣帯水の関係にある。
  • 両市は川を挟んで一衣帯水の距離にあり、交流が盛んだ。

類義語・関連語

「一衣帯水」と同じく、距離が極めて近いことを示す四字熟語や慣用句を紹介します。

  • 目と鼻の先(めとはなのさき):
    距離が極めて近いことのたとえ。
  • 指呼の間(しこのかん):
    大声で呼べばすぐに届くほどの、極めて近い距離。
  • 一牛鳴地(いちぎゅうめいち):
    牛の鳴き声が聞こえるほどの、極めて近い距離。

対義語

「一衣帯水」とは対照的に、距離が非常に遠く離れていることを示す言葉です。

  • 天涯海角(てんがいかいかく):
    空の果てと海の果て。非常に遠く離れていること。
  • 万水千山(ばんすいせんざん):
    数多くの川や山。転じて、道のりが非常に遠く険しいこと。

英語表現

「一衣帯水」のニュアンスを英語で表現する場合、以下のようになります。

separated by a narrow strip of water

意味:狭い水域によって隔てられている。一衣帯水。

  • 例文:
    Japan and Korea are separated by a narrow strip of water.
    日本と韓国は一衣帯水の間柄にある。

友好の言葉ではなく「侵略の口実」だった

現代のニュースや外交の場において、「一衣帯水」は「海を挟んだお隣さん同士、仲良くしましょう」という友好的な文脈で使われることがほとんどです。

しかし、語源となった隋の文帝の言葉を振り返ると、その実態は「長江の向こうで苦しんでいる民を救わねばならない(だからあの国を滅ぼす)」という、戦争を開始するための大義名分でした。
「川が狭いからすぐに行ける」という言葉は、かつては親愛の情ではなく、圧倒的な軍事力を背景にした「侵略の宣言」だったのです。平和な交流を象徴する言葉に変化した歴史の皮肉が、この言葉の裏には隠されています。

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