核心に直接手をつける前に、周囲の障害や関係者から順番に押さえていく戦略的な動き方。
このような戦法を表すのが、「外堀を埋める」(そとぼりをうめる)です。
意味
外堀を埋めるとは、目的を達成するために、周囲の障害や問題から順に少しずつ解決していくという意味です。
本題に直接切り込むのではなく、まずは周りの環境を整えたり、関係者を味方につけたりして、事が有利に進むよう戦略的に動くニュアンスを持ちます。
- 外堀(そとぼり):
城の周りに二重にめぐらせた堀のうち、外側の堀。転じて、物事の周辺や外側。 - 埋める(うめる):
くぼみや穴に物を詰めて平らにする。隙間をなくす。
語源・由来
「外堀を埋める」は、江戸幕府を開いた徳川家康の巧みな戦術から生まれました。
慶長19年(1614年)、家康は豊臣秀頼の大坂城を攻めました。
これが「大坂冬の陣」です。
しかし難攻不落の大坂城は容易に落ちず、両軍は和睦を結びます。
その条件は「外堀のみを埋める」というものでした。
しかし家康はこの取り決めを無視する形で、外堀だけでなく内堀まで埋め立ててしまいます。
豊臣側の抗議も退けられ、大坂城は防御力を完全に失いました。
翌年の「大坂夏の陣」で無防備になった城は攻め落とされ、豊臣家は滅亡しました。
この出来事から、本陣を攻める前にまず周辺の防御を崩していく戦法が言葉として定着しました。
使い方・例文
- 部長の承認を得るため、先に各部門の担当者へ根回しして外堀を埋めた。
- 転職の意思を固める前に、家族や親友に相談して外堀を埋めておいた。
- 反対意見が出ないよう、会議の前日までにデータと実績を揃えて外堀を埋めた。
類義語・関連語
「外堀を埋める」の類義語には、以下のような言葉が挙げられます。
- 将を射んと欲すれば先ず馬を射よ(しょうをいんとほっすればまずうまをいよ):
大きな目的を達成するため、まずは標的の周囲にいる者や頼みとする基盤から攻め落とすこと。 - 根回し(ねまわし):
事をスムーズに進めるため、事前に関係者の同意や協力を得ておくこと。 - 地固め(ぢがため):
物事を本格的に始める前に、基礎や土台をしっかりと築いて安定させること。 - 布石を打つ(ふせきをうつ):
将来起こるかもしれない事態に備えて、あらかじめ手配や準備をしておくこと。
「外堀を埋める」と類義語の違い
これらは本題へ入る前に周辺から固めていく点で共通していますが、標的を物理的・心理的に追い込むか、円滑な進行のために平和的な同意を得るかというニュアンスで使い分けます。
| 語句 | 目的・対象 | ポジネガのニュアンス |
|---|---|---|
| 外堀を埋める | 障害の排除や 逃げ道の封鎖 | 相手を追い込む 戦略的な響きが強い |
| 将を射んと欲すれば先ず馬を射よ | 標的の支援者や 周辺基盤の切り崩し | 目的達成に向けた冷徹で 合理的な戦術 |
| 根回し | 関係者の事前の 同意・協力獲得 | 摩擦を避けるための 平和的な調整 |
対義語
「外堀を埋める」の対義語には、以下のような言葉が挙げられます。
- 単刀直入(たんとうちょくにゅう):
前置きや事前の準備なしに、いきなり本題に入ること。 - 直球勝負(ちょっきゅうしょうぶ):
小細工や駆け引きをせず、真正面から正々堂々と立ち向かうこと。
英語表現
laying the groundwork
意味:事前の準備をする、地固めをする
- 例文:
He is laying the groundwork for the new project.
彼は新しいプロジェクトのために外堀を埋めている。
tighten the noose
意味:包囲を徐々に狭める、逃げ場をなくす
- 例文:
The negotiators slowly tightened the noose, leaving no room for refusal.
交渉担当者たちは徐々に外堀を埋め、拒否の余地をなくしていった。
周りの賛成が逃げ道をなくす心理的背景
恋愛や交渉の場面で、本人に直接話を持ちかける前に、周囲の友人や同僚から先に味方につける作戦がよくとられます。
外堀を埋められた側がどうしても断りづらくなってしまう背景には、心理学における「社会的証明の原理」が深く関わっています。
社会的証明の原理とは、周りの多くの人が賛成している状況を見ると、無意識のうちに「それが正しい」と思い込んでしまう心の働きのことです(1984年に心理学者ロバート・チャルディーニが提唱)。
自分が信頼する上司や友人たちが次々と賛成に回っていく姿を見ると、直接説得されるよりも自然に気持ちが傾いてしまいます。
外堀を埋めるという行為は、単に相手の逃げ道を物理的に塞ぐだけでなく、「みんなが良いと言うなら間違いないだろう」という心理を巧みに突いた戦法なのです。







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