巧みな駆け引きで相手を出し抜き、まんまと利益を勝ち取る。
そんな狡猾な立ち回りを指すのが、「権謀術数」(けんぼうじゅっすう)です。
意味
「権謀術数」とは、人を欺くために巧みに練られた、さまざまな策略やはかりごとという意味です。
正々堂々とした手段ではなく、裏で人を出し抜こうとする狡猾さを含み、否定的な意味合いで使われることがほとんどです。
- 権謀(けんぼう):その場しのぎの計略。
- 術数(じゅっすう):人を欺く手練手管。
語源・由来
「権謀術数」は、中国南宋時代の儒学者朱熹(朱子)が著した『大学章句序』に由来する言葉です。
朱熹はこの序文の中で、古代の聖王たちが道を説いていた時代が過ぎ去った後、世の中に功名や利益だけを追い求める「権謀術数」の類や、諸学派の怪しげな技が入り乱れるようになったと嘆いています。
そうした風潮が人々の目を惑わせ、仁義という本来大切にすべき道徳を覆い隠してしまったため、君主は正しい政治の道理を聞く機会を失い、民もまた恩恵を受けられずにいる、と説きました。
もともとは褒め言葉ではなく、道を外れた生き方を戒める文脈で使われた言葉です。
使い方・例文
「権謀術数」は、裏で駆け引きや騙し合いが渦巻く状況を批判的に述べる際に使われます。
- 政界は権謀術数が渦巻く、油断ならない世界だ。
- 彼は権謀術数を弄して、ライバルを蹴落とした。
- あの企業の内部は権謀術数が飛び交っていた。
類義語・関連語
「権謀術数」と同様に、人を出し抜く駆け引きを表す言葉には以下のようなものがあります。
「権謀術数」と類義語の違い
どちらも人を欺いたり出し抜いたりする駆け引きを表しますが、視点には違いがあります。
「権謀術数」は人を欺く策略そのものを幅広く指すのに対し、「手練手管」は人の心を操る巧みさに焦点を当て、「合従連衡」は利害に応じて協力関係を組み替える駆け引きを指します。
| 語句 | ニュアンス | 主に使う場面 |
|---|---|---|
| 権謀術数 (けんぼうじゅっすう) | 人を欺く策略全般 | 政治、組織内の駆け引き |
| 手練手管 (てれんてくだ) | 人の心を操る巧みさ | 対人関係、交渉 |
| 合従連衡 (がっしょうれんこう) | 利害に応じた協力関係の組み替え | 外交、企業提携 |
英語表現
machinations
陰謀めいた策略を指す表現。政治的な駆け引きなど、水面下で進む企みを語る際に使われる。
The company’s rise was the result of years of political machinations.
(その企業の躍進は、長年の権謀術数の結果だった。)
Machiavellian
目的のためなら手段を選ばない、狡猾で計算高いさまを表す表現。
His Machiavellian tactics won him the election, but cost him his reputation.
(彼は権謀術数を尽くして選挙に勝ったが、評判を落とした。)
本来は戒めの言葉だった
朱熹が『大学章句序』で「権謀術数」を持ち出したのは、この言葉を推奨するためではなく、聖王の道が忘れ去られた時代への警鐘として書いたものでした。
朱熹にとって「権謀術数」は、仁義という本来の道徳から外れた、戒めるべき生き方の代名詞だったことになります。
しかし後の時代、この言葉は本来の文脈から離れ、単に「巧妙な策略」を指す言葉として独り歩きするようになりました。
批判のために書かれた表現が、時代を経て中立的な、あるいは実務的な駆け引きを語る言葉として定着した例といえます。









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