意味
「大向こうを唸らせる」とは、優れた技巧によって、多くの人々を感心させ、人気を博するという意味です。
もとは役者が見巧者の観客を感嘆させることを指し、そこから一般に、実力で大勢を納得させることを表すようになりました。
- 大向こう(おおむこう):芝居小屋の一番後方の安い立ち見席、またそこに集う目の肥えた客。
- 唸る(うなる):感心のあまり声を漏らすこと。
語源・由来
「大向こう」とは、歌舞伎の芝居小屋で舞台から最も遠い後方にある、料金の安い席を指す言葉です。
そこは安価な席でありながら、芝居に通い慣れた目の肥えた客、いわゆる見巧者が多く集まる場所でもありました。
役者にとっては、正面の高級な席の客だけでなく、この大向こうの厳しい客まで感嘆させてこそ本物の芸だという考え方があり、そこから「大向こうを唸らせる」という言い回しが生まれたとされています。
やがて芝居に限らず、多くの人々を実力で感心させることを広く指す表現として使われるようになりました。
使い方・例文
「大向こうを唸らせる」は、優れた技や実力で人々を感心させた場面で使われます。
- 若手役者の熱演が、大向こうを唸らせた。
- 彼のスピーチは聴衆の大向こうを唸らせる内容だった。
- あの決勝点で、観客の大向こうを唸らせた。
英語表現
「大向こうを唸らせる」に近いニュアンスを持つ英語表現には、以下のようなものがあります。
Bring down the house
直訳は「劇場を崩す」。観客が大喝采や大笑いで沸き立つほどの見事なパフォーマンスを表す表現。
Her final performance brought down the house.
(彼女の最後の演技は観客を熱狂の渦に巻き込んだ。)
Wow the crowd
直訳は「観客を驚嘆させる」。見事な技や演出で見ている人々を感心させることを表す表現。
The gymnast’s final routine wowed the crowd.
(体操選手の最後の演技は観客を驚嘆させた。)
歌舞伎の「目利き」が支えた芸の質
「大向こうを唸らせる」という言葉の背景には、江戸時代の観客文化があります。
正面の高い席を買う客だけでなく、安い席にも通い詰める芝居好きの目利きがいたからこそ、役者は手を抜けず、芸を磨き続けたと言われています。
これは現代のライブ公演やスポーツ観戦にも通じる構図で、熱心な常連客の厳しい目こそが、演じ手や競技者の実力を鍛え上げる土壌になっているのかもしれません。









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