歌舞伎から生まれた言葉一覧|黒幕・十八番・どんでん返しなど36語

歌舞伎から生まれた言葉一覧 特集
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2025年に公開された映画『国宝』は、邦画実写の興行収入で歴代1位を記録する大ヒットとなり、歌舞伎の世界への関心が高まっています。
実は、黒幕・十八番・どんでん返しなど、日常でよく使う言葉の中にも歌舞伎の舞台から生まれたものが数多くあります。
舞台の仕掛け、役者、演技、場面という由来ごとに分類してまとめました。

舞台の仕掛けから生まれた言葉

  • 黒幕:
    舞台の暗転や場面転換に使う黒い幕。
    転じて、裏で指図する影の実力者のこと。
  • 差し金(さしがね):
    歌舞伎で、黒塗りの竹の棒の先に針金を付け、その先の蝶や人魂などを後見が操る小道具。
    人形浄瑠璃で人形の指を動かす細い鉄の棒も差し金といい、陰で人を操る意味はこちらから出たともいわれる。陰で人を操ることのたとえ。
  • 黒衣(くろご):
    役者の演技を裏で支える黒装束の後見役。
    姿が無いものとして扱う舞台の約束事から。「くろこ」とも読む。
  • 裏方:
    客席から見えない場所で舞台を支える係。
    表に出ず実務を担う人を指す言葉に。
  • どんでん返し:
    大道具を90度倒して裏の絵を立てる「強盗返しがんどうがえし」という仕掛け。
    話や形勢が正反対に逆転することのたとえ。
  • こけら落とし:
    新築の劇場工事で出た木くず(こけら)を払い清めたこと。
    新装開場の初興行を指す。
  • 幕を引く:
    場面の終わりに引き幕を閉めること。
    物事に区切りをつけることのたとえ。
  • 幕切れ(まくぎれ):
    各場の終わりに幕が閉まること。
    物事の結末そのものを指す言葉になった。
  • のべつ幕なし:
    幕を下ろさず演目を続けて上演すること。
    絶え間なく続く様子のたとえ。

役者と配役から生まれた言葉

  • 十八番(おはこ):
    最も得意とする芸や技のこと。
    「おはこ」は大切な物を箱にしまう「箱入り」の略とされる。「十八番」の字は、市川團十郎家が「歌舞伎十八番」の台本を箱に入れて保存したからとも、歌舞伎役者が得意の当たり芸を「十八番」と呼んだからともいわれる。
  • 立役者(たてやくしゃ):
    主役を務める男性役「立役」から。
    物事を成功に導いた中心人物のこと。
  • 二枚目:
    劇場の看板で2番目に名を書かれた美男役の俳優。
    美男子を指す言葉になった。
  • 三枚目:
    看板の3番目に名を書かれた道化役の俳優。
    おどけた役回りの人のこと。
  • 千両役者:
    年間千両を稼いだ人気役者から。
    実力・人気ともに抜きんでた人を指す。
  • 一枚看板:
    上方の劇場で、外題げだいを大書きし主な役者の絵姿を描いた大きな飾り看板。
    一座の中心の役者、転じて組織を代表する人物のたとえ。
  • お家芸:
    役者の家に代々伝わる得意の演目。
    得意分野そのものを指す言葉になった。
  • 花形(はながた):
    人気があって一座を代表する役者「花形役者」の略。
    ある分野で人気を集める人のたとえ。
  • 色男(いろおとこ):
    顔立ちのよい男、美男子のこと。また、情夫や好色な男を指すこともある。
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演技と台詞から生まれた言葉

  • 見得(みえ):
    役者が動きを止めて決めるあの独特の姿勢。
    大げさな態度や虚勢を指す言葉になった。
  • とちる:
    役者が台詞や動作を間違えること。
    しくじる・失敗するという意味で広く使われる。
  • 捨てぜりふ:
    台本にない即興の台詞。
    立ち去り際に相手へ投げつける言葉のこと。
  • だんまり:
    黙ったままでいる様子のこと。
    歌舞伎では、暗闇の中で登場人物が無言のまま探り合う演出をこの名で呼ぶ。
    演出の名は「黙りだまり」から転じたものとみられる。
  • めりはり:
    邦楽で、声や音を低く弱めることと高く強めることをいう語。
    歌舞伎では、台詞回しの強弱・高低・伸縮の技術を指す。
    物事に強弱をつけることのたとえ。
  • ケレン味(けれんみ):
    早替わりや宙乗りなど見た目本位の演出「外連」から。
    奇抜で人目を引く表現のこと。

場面と展開から生まれた言葉

  • 大詰め:
    芝居の最終の幕や最後の場面。
    江戸時代の歌舞伎では、前半の演目「一番目狂言」の最終幕を指した。
    物事の終盤、最終段階を指す言葉になった。
  • 正念場(しょうねんば):
    役の本心を見せる大切な場面「性根場」から。
    実力が問われる重要な局面のこと。
  • 大向こうを唸らせる(おおむこうをうならせる):
    劇場奥の安席にいる目の肥えた客を感嘆させること。
    実力で人々を感心させることのたとえ。
  • 花道を飾る:
    客席を貫く花道での晴れ舞台。
    去り際に華々しい成果を残すことのたとえ。
  • 板につく:
    役者の演技が舞台の床板に馴染んで見えること。
    立場や役割に馴染む様子のこと。
  • 見せ場:
    役者の演技が最も光る、見る価値のある場面。
    物事の中で最も注目される部分のこと。
  • 大喜利(おおぎり):
    一日の興行の最後に付ける出し物「大切り」から。転じて、寄席で最後の演者の後に大勢で珍芸などを見せる、演芸の一形式となった。
  • 愁嘆場(しゅうたんば):
    登場人物が身の上の不幸を嘆き悲しむ場面。
    悲劇的で痛ましい状況のこと。
  • 世話女房(せわにょうぼう):
    庶民の暮らしを描く「世話場」に登場する、家庭を切り盛りする女房役。
    よく尽くす妻のたとえ。
  • 泥仕合(どろじあい):
    泥田を舞台にした争いの場面から。
    互いの弱みを暴き合う醜い争いのこと。
  • どさ回り:
    常打ちの小屋を持たず地方を巡業すること。
    地方巡業や下積みの仕事を指す言葉に。
    「どさ」は田舎・地方を指す。
  • 愛想づかし(あいそづかし):
    相思相愛だった男女が縁を切る場面。
    相手に愛想を尽かして冷たくすることのたとえ。

能楽は武家の芸、歌舞伎は庶民の芝居小屋

歌舞伎とほぼ同じ時代に栄えた能楽のうがく(= 能と狂言を合わせた芸能の総称)は、江戸幕府の式楽しきがく(= 公式の儀式で演じる芸能)として武家に愛好され、庶民が気軽に見物できる娯楽ではありませんでした。
一方の歌舞伎は、江戸三座(中村座・市村座・森田座)をはじめとする芝居小屋で、木戸銭きどせん(= 入場料)さえ払えば誰でも見られる庶民の娯楽として賑わっていました。

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