二字熟語

黒衣

(くろご)

黒ずくめの装束で舞台を支える役。転じて、表に出ず人を支える人。

異形:黒子

3文字の言葉 / 「く・ぐ」から始まる言葉
黒衣 ことば
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意味

「黒衣(くろご)」とは、歌舞伎や人形浄瑠璃の舞台で、黒ずくめの装束をまとって舞台を支える役を指します。
舞台の上では黒は「見えない」という約束になっており、観客も黒衣がそこにいないものとして芝居を見ます。
転じて、表に出ずに人や物事を支える立場もいいます。

語源・由来

この言葉は、舞台の上で黒を「何も無いこと」を示す色とする取り決めから生まれました。
場面の転換や夜の場面に黒い幕を使うように、歌舞伎では黒がそのまま背景として扱われます。
全身を黒い装束で覆い、黒い布で顔まで隠した姿も同じ扱いを受け、舞台に立っていながら存在しないものとされました。
歌舞伎で黒衣を務めるのは多くが役者の弟子で、小道具を渡したり、早替わりの着付けを手伝ったりと、芝居が滞りなく運ぶように動きます。
人形浄瑠璃では、人形を操る人自身が黒衣をまとって舞台に出ます。
姿が見えていても見えないことにするというこの約束から、「黒衣」はやがて表に出ずに人を支える立場の例えにも使われるようになりました。

役者の後ろに控える黒衣
1932年の歌舞伎の舞台に控える黒衣

使い方・例文

現代では「黒衣に徹する」「黒衣に回る」の形で、裏方の立場を自分から選ぶ場面に使われます。

例文

  • 社長就任を辞退し、黒衣に徹して後進を支える道を選んだ。
  • この映画の面白さは、黒衣となった脚本家の腕によるところが大きい。
  • 交渉をまとめたのは、黒衣に回って動いた古参の社員だった。

本来の読みは「くろご」、「くろこ」は後から広まった読み

本来の読みは「くろご」で、「くろこ」は後から広まった読み方です。
「黒子」という書き方も当て字で、この字はもともと「ほくろ」と読みます。
どちらも今では広く通用していますが、舞台の世界では「黒衣」「くろご」が本来の形とされています。

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類義語・関連語

この言葉と同じように、表に出ずに人や物事を支える立場を表す言葉には、以下のようなものがあります。

  • 裏方(うらかた):
    客席から見えない場所で舞台を支える係。転じて、表に立たずに実務を担う立場。
  • 縁の下の力持ち(えんのしたのちからもち):
    人目につかないところで、他人のために苦労や努力を重ねる人。
  • 後見(こうけん):
    舞台で役者のそばに控えて演技を助ける役。黒衣もこの一つ。

「黒衣」と類義語の違い

どれも表に出ない立場を表す言葉ですが、黒衣だけは、客席から見えているのに見えないことにするという点が異なります。

語句人目との関係
黒衣
(くろご)
見えているが、見えないものとして扱われる
裏方
(うらかた)
客席から見えない場所で働く
縁の下の力持ち
(えんのしたのちからもち)
働きが人に知られないまま終わる

対義語

反対に、人目を集める中心の立場を表す言葉は以下の通りです。

  • 立役者(たてやくしゃ):
    物事を成功に導いた中心人物。
  • 花形(はながた):
    ある分野で人気を集め、注目を浴びる人。

英語表現

英語では、表に出ないまま支える立場を次のように言い表します。

work behind the scenes

表舞台に出ない場所で物事を動かすことを表す言い回し。

She prefers to work behind the scenes rather than take the credit.
(彼女は手柄を受け取るより、黒衣に徹することを好みます。)

unsung hero

名前が挙がらないまま働きを支えた人を指す言い方。

The unsung hero of the project was the engineer who never spoke at meetings.
(その企画の黒衣は、会議で一度も発言しなかった技術者でした。)

雪の場面では、黒衣は白い装束に着替える

舞台一面が雪で覆われる場面では、黒い装束はかえって浮き上がってしまいます。
そこで雪の場面では、白ずくめの「雪衣ゆきご」に着替えます。
同じ理由で、水中の場面には浅葱あさぎ色の「水衣みずご」、海中の場面には波模様の「浪衣なみご」があります。
黒そのものに姿を消す力があるのではなく、背景に溶け込むから「見えない」という約束が成り立ちます。
装束の色が変わっても役目は同じで、小道具を渡し、早替わりを手伝い、幕が引かれるまで舞台の隅に控えています。

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