易者身の上知らず

スポンサーリンク
ことわざ 慣用句
易者身の上知らず
(えきしゃみのうえしらず)

11文字の言葉」から始まる言葉

「人の将来は見通せるのに、自分の明日のことも分からない…」

人の悩みには的確に助言できる人が、いざ自分の問題となると、どうして良いか分からず途方に暮れてしまう。

易者身の上知らず(えきしゃみのうえしらず)」は、まさにこのような皮肉な状況を表すことわざです。これは、専門家が陥りがちな盲点を鋭く突いた言葉と言えるでしょう。

「易者身の上知らず」の意味・教訓

「易者身の上知らず」とは、「易者(えきしゃ=占い師)は他人の運勢や身の上は占うが、自分自身の運命や境遇についてはかえって分からないものだ」という意味です。

これが転じて、「他人のことについては専門家として鋭い分析や助言ができるのに、自分のこととなると全く分からなくなる」という状況のたとえとして使われます。

この言葉の核心は、「灯台下暗し(とうだいもとくらし)」にも通じるもので、自分自身を客観的に見ることはいかに難しいか、という教訓を含んでいます。

「易者身の上知らず」の語源

このことわざの語源は、言葉通りの情景に由来します。

易者」は占い師のこと、「身の上」はその人の境遇や運命を指します。
他人の人生相談に乗り、未来を予言する易者が、自分のこと(身の上)は「知らず」(分からない)という、その職業の特性を皮肉った表現がそのまま定着しました。

特定の歴史的な逸話(故事)に基づくものではなく、人々の生活実感から生まれたことわざです。

使用される場面と例文

このことわざは、「専門家が自分のこと(または家族のこと)になると、その専門性を発揮できない」という状況で、皮肉やユーモアを込めて使われます。

例文

  • 「恋愛コンサルタントとして多くの人を結婚に導いた彼が、自分は独身のままだ。まさに「易者身の上知らず」だ。」
  • 「いつもは冷静に市場を分析する投資家が、自分の資産運用で大失敗した。「易者身の上知らず」とはこのことだ。」
  • 「子育てアドバイザーが『うちの子が言うことを聞かなくて…』と悩んでいる。「易者身の上知らず」なものですね。」

類義語・言い換え表現

「易者身の上知らず」には、職業を変えただけの非常に多くの類義語が存在します。これらはすべて「専門家が自分のことには無頓着・無能である」という共通の意味を持っています。

  • 医者の不養生(いしゃのふようじょう):
    他人の健康には厳しい医者が、自分は不摂生なこと。
  • 坊主の不信心(ぼうずのふしんじん):
    人に教えを説く僧侶が、自分は信仰心がないこと。
  • 紺屋の白袴(こうやのしろばかま):
    染物屋が、自分は染めていない白い袴をはいていること。
  • 髪結いの乱れ髪(かみゆいのみだれがみ):
    髪結いが、自分の髪は乱れたままなこと。
  • 大工の掘っ建て(だいくのほったて):
    立派な家を建てる大工が、自分は粗末な家に住んでいること。

対義語

「易者身の上知らず」(自分のことを知らない)とは正反対の、「自分のことをよく知っている」という意味の言葉が対義語となります。

  • 自知の明(じちのめい):
    自分自身の能力、立場、長所や短所をわきまえている、賢明さのこと。『老子』の「人を知る者は智なり、自ら知る者は明なり」という言葉に由来します。
  • 彼を知り己を知る(かれをしりおのれをしる):
    敵(相手)のことも自分のこともよく知ること。孫子の兵法に出てくる言葉で、自分を客観視することの重要性を示しています。

英語での類似表現

「易者身の上知らず」の「自分のことは分からない」というニュアンスを直接伝える英語表現と、類語の「紺屋の白袴」などに近い表現を紹介します。

A fortune-teller cannot tell his own fortune.

  • 直訳:「占い師は自分自身の運勢を占うことはできない。」
  • 解説:「易者身の上知らず」をそのまま英語にした表現で、意味が伝わります。

The shoemaker’s children go barefoot.

  • 直訳:「靴屋の子供は裸足で行く。」
  • 解説:「医者の不養生」や「紺屋の白袴」の英語表現としてよく使われます。「専門家が自分の(家族の)ことをおろそかにする」という意味で、広く応用できます。

まとめ – 「易者身の上知らず」から学ぶ知恵

「易者身の上知らず」は、専門家への皮肉であると同時に、人間という存在の本質を突いた言葉です。

私たちは、他人のことであれば冷静に、客観的に分析し、的確なアドバイスができるものです。しかし、いざ自分のこととなると、欲望や不安、思い込みといった感情が邪魔をして、途端に視野が狭くなってしまいます。

「自分のことこそ、一番見えていないのかもしれない」

このことわざは、常に自分自身を客観視しようと努める謙虚さの大切さを、私たちに教えてくれているようです。

スポンサーリンク

コメント