下手の考え休むに似たり

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ことわざ
下手の考え休むに似たり
(へたのかんがえやすむににたり)
短縮形:下手の考え
異形:馬鹿の考え休むに似たり

14文字の言葉へ・べ・ぺ」から始まる言葉

将棋や囲碁の対局で、次の手が決まらずに盤面をじっと見つめ続ける。
傍目には真剣そのものに見えますが、頭の中がこんがらがっているだけで、実は何も進んでいない……。

下手の考え休むに似たり」は、そんな報われない努力や時間の浪費を、少しシニカルに、しかし的確に表現したことわざです。

「下手の考え休むに似たり」の意味

「下手の考え休むに似たり」とは、技術や知恵の未熟な者が、いくら時間をかけて考え込んでも良い案は浮かばず、それは休んでいる(何もしていない)のと同じことであるという意味です。

「時間をかければ良い結果が出る」という考えを否定し、基礎能力や知識がない状態での「悩み」は「無駄」であると断じる、厳しい教訓を含んでいます。

  • 下手(へた):技術が劣っている人。知識や経験が浅い人。
  • 休むに似たり:休んでいるのと変わらない。成果がゼロであること。

「下手の考え休むに似たり」の語源・由来

この言葉の由来は、囲碁や将棋の世界にあります。

腕前の低い人(下手)ほど、局面の判断ができずに長考に陥りがちです。しかし、いくら時間をかけても、結局は悪手を指してしまったり、単純な見落としをしたりします。
その様子を見た周囲の人が、「あんなに長く考えてもダメな手を打つのなら、考えている時間は寝て休んでいるのと同じようなものだ」と揶揄したのが始まりとされています。

ここから転じて、ビジネスや学問など、あらゆる分野での「不毛な長考」を指す言葉として定着しました。

「下手の考え休むに似たり」の使い方・例文

現代では、他人に使うと侮辱になるため、主に自分自身の非効率さを自虐する際や、親しい間柄で「悩みすぎだ」と指摘する際に使われます。

例文

  • 素人の私が故障したエアコンを前に腕組みしていても、「下手の考え休むに似たり」だ。さっさと業者に電話しよう。
  • 「下手の考え休むに似たり」と言うだろう。いつまでも一人で抱え込まず、詳しい先輩に聞きに行こう。
  • テスト中に難問で止まってしまったが、「下手の考え休むに似たり」と思い直し、次の問題へ進んだ。

文学作品での使用例

  • 福翁自伝(福沢諭吉):
    下手の考え休むに似たりで、出来ないことは出来ないとして断念するに若(し)くはない」
    ※「悩むより、潔く諦めて次へ進め」という文脈で使用されています。

「下手の考え休むに似たり」の類義語・派生語

馬鹿の考え休むに似たり(ばかのかんがえやすむににたり)

「下手の考え~」から派生した言葉。
「下手(技術的な未熟さ)」が「馬鹿(知能的な愚かさ)」に置き換わっており、より意味が強く、攻撃的なニュアンスになります。現在ではどちらも同じ意味で使われます。

その他

  • 石臼を箸で刺す(いしうすをはしでさす):
    箸で重い石臼を持ち上げようとするような、無理で不可能なことのたとえ。
  • 枯れ木に花は咲かぬ(かれきにはなはさかぬ):
    生気のないものからは何も生まれないこと。
    →逆の意味:枯れ木に花咲く

「下手の考え休むに似たり」の対義語

「考えること」や「相談すること」には価値があると説く言葉です。

  • 三人寄れば文殊の知恵(さんにんよればもんじゅのちえ):
    凡人(下手)であっても、三人集まって相談すれば、素晴らしい知恵が出るものだという教え。独りよがりな思考の対案として使われます。
  • 念には念を入れよ(ねんにはねんをいれよ):
    時間をかけて慎重に検討することを良しとする言葉。

「下手の考え休むに似たり」の英語表現

英語にも「未熟な思考」の無意味さを説く表現があります。

A fool’s thinking amounts to nothing.

  • 意味:「愚か者の思考は、何物にもならない(ゼロに等しい)」
  • 解説:「休むに似たり(成果ゼロ)」のニュアンスに近い表現です。

Don’t waste your time thinking about things you can’t change.

  • 意味:「変えられないことを考えて時間を無駄にするな」
  • 解説:能力不足で解決できないことを悩む徒労を戒める、現代的なフレーズです。

「下手の考え休むに似たり」に関する豆知識:プロでも同じ?

将棋の世界には、「長考に好手なし(ちょうこうにこうしゅなし)」という格言もあります。

これは「下手」に限らず、プロの棋士であっても、長考に沈んでいる時は迷いが生じている証拠であり、あまり良い手を指せないことが多い、という意味です。
直感(第一感)が正しいケースは多く、迷えば迷うほど判断が鈍るというのは、熟練者にも共通する人間の心理的特徴なのかもしれません。

まとめ – 行動への切り替えスイッチ

「下手の考え休むに似たり」は、私たちに「思考の損切り」の大切さを教えてくれます。

知識や経験が足りない状態で悩み続けても、時間の浪費になるだけです。
この言葉が頭をよぎったら、それは「考えるのをやめて、調べたり相談したりするフェーズに移るべき」というサインです。
悩む時間を「学ぶ時間」や「行動する時間」に変えることが、下手(未熟者)を脱出する一番の近道と言えるでしょう。

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