意味
「念には念を入れよ(ねんにはねんをいれよ)」とは、一度気をつけたことでも、もう一度重ねて確かめ、慎重に進めるべきだという教えです。
「念」には「心に深く思うこと」「注意を向けること」といった意味があり、すでに注意を払った状態に、ダメ押しでもう一度注意を重ねることで、絶対に失敗を防ごうとする極めて慎重な姿勢を表しています。
語源・由来
「念」はもともと「心に深く思うこと」を表す言葉で、仏教においては「仏の姿を心に思い浮かべること」や「経文を唱えること」を指していました。
それが次第に「注意する」「気を配る」という意味でも使われるようになり、「念を入れる」(=間違いがないよう細かく気を配る)という表現が定着しました。
「念には念を入れよ」は、その「念」を重ねることで、徹底した慎重さを戒めとして表現したものです。
江戸のいろはかるたでは、「ね」の札に「念には念を入れよ」が採られています。
上方のいろはかるたでは、同じ「ね」の札に「猫に小判」が採られています。
使い方・例文
「念には念を入れよ」は、絶対に失敗が許されない重要な場面や、取り返しのつかない事態を防ぐための心構えとして使われます。
- 外出前に火の元と戸締りを何度も確認する。念には念を入れよの通りだ。
- 念には念を入れて、明日の旅行の持ち物をもう一度確認する。
- 重要な契約書にサインをする前に、念には念を入れて記載内容を見直した。
類義語・関連語
「念には念を入れよ」と似た意味を持つ言葉には以下のようなものがあります。
- 石橋を叩いて渡る(いしばしをたたいてわたる)
堅固な石の橋であっても、叩いて安全を確かめてから渡るほど、極めて慎重に事を行うこと。 - 転ばぬ先の杖(ころばぬさきのつえ)
失敗しないように、前もって十分な準備や用心をしておくことのたとえ。 - 浅い川も深く渡れ(あさいかわもふかくわたれ):
浅そうに見える川でも、深い川を渡る時のように用心して渡れという戒め。
対義語
「念には念を入れよ」とは対照的な意味を持つ言葉は以下の通りです。
- 行き当たりばったり(ゆきあたりばったり):
事前の計画や準備を全くせず、その場の成り行きに任せて行動すること。 - 泥縄(どろなわ):
事が起こってから、慌てて対策や準備をすること。「泥棒を捕らえてから縄を綯う」の略。 - 渇して井を穿つ(かっしていをうがつ)
喉が渇いてから井戸を掘り始めること。準備不足で手遅れであることのたとえ。
英語表現
「念には念を入れよ」を英語で表現する場合、以下のフレーズがよく使われます。
Better safe than sorry
意味:後で後悔するよりも、安全な策をとるほうが良い。
I packed an umbrella just in case. Better safe than sorry.
(念のため傘を持ってきたよ。念には念を入れよだからね。)
Look before you leap
直訳:跳ぶ前によく見よ。
意味:行動を起こす前に、状況をよく確認して慎重になれという教訓。
You should read the contract carefully. Look before you leap.
(契約書は注意深く読むべきだ。念には念を入れよ。)
Make assurance double sure
直訳:確かなことを二重に確かにする。
意味:確実なことを、さらに確実にする。
シェイクスピア『マクベス』の台詞から広まった言い回しです。
芥川龍之介、念には念を入れよをもじった題で反論
芥川龍之介は大正十四年、「燕雀生」という人物が雑誌「文芸春秋」三月号に寄せた「泥古残念帖」に対し、言葉の解釈の誤りを四か条にわたって指摘する文章を書きました。
題は「念仁波念遠入礼帖」で、「念には念を入れ帖」を漢字の当て字で書いたものです。
文章の結びで、芥川はこの題を付けた理由を次のように書いています。
文芸春秋の読者には少年の人も多かるべし。斯る読者は泥古残念帖にも誤られ易きものなれば、斯て念には念を入れて「念仁波念遠入礼帖」を艸すること然り。
(「文芸春秋」の読者には少年も多いだろう。そうした読者は泥古残念帖にも惑わされやすいので、念には念を入れてこの一文を書いた。)
署名は「大鵬生」で、相手の筆名の燕雀(ツバメやスズメ)に対して、大鵬(伝説上の巨大な鳥)を名乗っています。












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