ビジネスシーンや日々の生活において、「限られた時間で最大の成果を出したい」と考えることはありませんか?
ひとつの行動で、思いがけず二つの良い結果が得られたとき、私たちはこの言葉を使ってその効率の良さや幸運を表現します。
一挙両得とは、まさにそんな「おいしい状況」を端的に表す四字熟語です。
「一挙両得」の意味
一つの行動をすることで、同時に二つの利益を得ること。
- 一挙(いっきょ):一つの動作、一つの企て。
- 両得(りょうとく):二つの利益を得ること。
本来の目的だけでなく、別のメリットも同時に手に入ったときや、効率よく成果を上げた状況に対して使われます。
「一挙両得」の由来
中国の歴史書『晋書』にある、束皙(そくせき)という人物の伝記に由来します。
当時、日照り続きで困窮していた民衆に対し、束皙は「普段は農業に従事させ、農閑期には武術の訓練をしてはどうか」と皇帝に提案しました。
これにより、食料不足の解消(農業)と、治安維持や国防(武術)の二つを同時に解決できるとし、これを「一挙両得」と表現しました。
この故事から、一つの対策で二つの問題を解決する、あるいは二つの利益を得ることを指すようになりました。
「一挙両得」の使い方・例文
主にビジネスや学習、スポーツなどの場面で、効率の良さや成果の大きさを肯定的に評価する際に使われます。
「一石二鳥」とほぼ同じ文脈で使えますが、漢語由来の硬い響きがあるため、より公的な文書やスピーチなどでも好まれます。
例文
- 「通勤時間に英会話を聞くのは、移動と学習を兼ねた一挙両得の習慣だ。」
- 「この新しいシステムを導入すれば、コスト削減と業務効率化の一挙両得が期待できる。」
- 「ダイエットのために始めた料理だったが、節約にもなり一挙両得だった。」
文学作品での使用例
詩人・中原中也の随筆には、子供時代の遊びを回想する中でこの言葉が使われています。
手で口を覆うて「ウーウー」と唸るのであるが、さうすると、インディアンのやうな声が出て、それが面白いのと、さうしてゐると手が温まるのとで、呼ぶことゝ手を温ためることゝ、一挙両得といふわけである。
(中原中也『金沢の思ひ出』より)
寒い冬、口に手を当てて声を出す遊びが、楽しさと防寒の両方を満たしていた様子を「一挙両得」と表現しています。
「一挙両得」の類義語・関連語
- 一石二鳥(いっせきにちょう)
一つの石を投げて二羽の鳥を落とすこと。「一挙両得」と全く同じ意味だが、こちらはイギリスのことわざが明治時代に翻訳されたもの。「一挙両得」の方が歴史は古いが、現代会話では「一石二鳥」の方がカジュアルに使われる傾向がある。 - 一挙両全(いっきょりょうぜん)
一つの行動で二つの物事を完全に成し遂げること。「両得」が利益を得ることに重きを置くのに対し、「両全」は物事を全うすることに焦点を当てている。 - 一箭双雕(いっせんそうちょう)
一本の矢で二羽の鷲(わし)を射落とすこと。弓の名手の腕前を称える言葉から転じた。
「一挙両得」の対義語
- 二兎を追う者は一兎をも得ず(にとをおうものはいっとをもえず)
欲張って同時に二つのものを手に入れようとすると、結局どちらも失敗すること。「一挙両得」が結果としての成功を表すのに対し、こちらは欲張りすぎることへの戒めである。 - 虻蜂取らず(あぶはちとらず)
二つのものを同時に得ようとして、結局両方とも逃してしまうこと。
「一挙両得」の英語表現
Kill two birds with one stone
- 意味:「一つの石で二羽の鳥を殺す」
- 解説:日本の「一石二鳥」の語源となった表現。「一挙両得」の英訳としても最も一般的。
- 例文:
Cycling to work kills two birds with one stone; it saves money and keeps you fit.
(自転車通勤は一挙両得だ。お金の節約になるし、健康維持にもなる。)
「一挙両得」に関する豆知識
「一石二鳥」との微妙なニュアンス差
現代の日本では、「一挙両得」よりも「一石二鳥」の方が圧倒的に知名度が高いと言われています。
しかし、目上の人への報告やビジネス文書においては、「一石二鳥」だと少し軽い印象を与えてしまう場合があります。
- 一石二鳥:日常会話、カジュアルな場面、偶然ラッキーだった場合。
- 一挙両得:ビジネス文書、公的なスピーチ、計画的な成果報告。
このように使い分けると、より教養ある大人の表現として相手に伝わります。
中国の歴史書に由来する「一挙両得」には、重厚な響きと「策を講じて成果を得た」という知的なニュアンスが含まれているからです。
まとめ – 欲張らず、賢く成果を
「一挙両得」は、単なるラッキーを表すだけでなく、限られたリソース(時間や労力)をいかに有効活用するかという「知恵」の言葉でもあります。
あれもこれもと無計画に手を出すのは「虻蜂取らず」になりかねませんが、一つの行動に複数の意味を持たせる工夫は、忙しい現代を生き抜くための大切な視点かもしれません。
日々のタスクの中で、「これをすることで、他にどんな良いことがあるだろう?」と少し視点を広げてみると、思いがけない「一挙両得」が見つかるでしょう。







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