意味
「あちら立てればこちらが立たぬ(あちらたてればこちらがたたぬ)」とは、一方を良くしようとすればもう一方が悪くなり、双方を同時に満足させることができない状態を指します。
どちらの選択をしても、選ばれなかった側に不都合や不満が生じてしまう、ジレンマに陥った状況のたとえです。
ここでの「立てる」とは、相手の面目や立場を尊重し、優遇することを意味します。
「立たぬ」は、面目が保てない、あるいは物事が成立しないということです。
単に二つのうち一つを選ぶのが難しいだけでなく、背景に人間関係のしがらみや、利害の対立が含まれる場面で使われるのが特徴です。
語源・由来
ここでの「立つ」という表現は、単に物理的に立ち上がることではなく、世間に対する面目や名誉が保たれることを意味しています。
同じ意味で、「あなた立てればこなた立たぬ」という言い方もあります。
使い方・例文
人間関係の調整や、相反する条件を同時に満たさなければならない場面で使われます。
論理的な選択というよりは、感情的な板挟みや「申し訳なさ」が伴う文脈でよく用いられます。
例文
- 兄を褒めれば妹がすねる。あちら立てればこちらが立たぬで苦労する。
- 別々に誘われ、どちらを選んでも角が立つ。あちら立てればこちらが立たぬだ。
- 開発すれば経済は潤うが自然は壊れる。あちら立てればこちらが立たぬだ。
類義語・関連語
「あちら立てればこちらが立たぬ」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 痛し痒し(いたしかゆし):
かくと痛いし、かかないと痒い。どちらにしても具合が悪く、どうしていいか迷うこと。 - 帯に短し襷に長し(おびにみじかしたすきにながし):
中途半端で、どちらの役にも立たず、どっちつかずであること。 - 前門の虎、後門の狼(ぜんもんのとら、こうもんのおおかみ):
一つの災難を逃れても、また別の災難が襲ってくること。あるいは進退窮まる状況。 - 板挟み(いたばさみ):
対立する二つの勢力の間に入って、どちらの味方もできず、苦しい立場に置かれること。
対義語
「あちら立てればこちらが立たぬ」とは対照的な状況を示す言葉です。
英語表現
「あちら立てればこちらが立たぬ」のニュアンスに近い英語表現を紹介します。
You can’t please everyone
直訳は「すべての人を満足させることはできない」で、全員の期待に同時に応えることはできないと認める際に使われる表現。
The CEO wants to cut costs, but the staff wants higher pay. You can’t please everyone.
(CEOはコスト削減を、スタッフは賃上げを求めている。あちら立てればこちらが立たぬだ。)
You can’t have your cake and eat it too
直訳は「ケーキを食べるのと、持っておくことの両方はできない」で、二つの良いことは同時に成立しないというトレードオフの状況を表す表現。
You want more free time and more money? You can’t have your cake and eat it too.
(もっと自由な時間が欲しくて、お金ももっと欲しい? それはあちら立てればこちらが立たぬというものだ。)
あちら立てればこちらが立たぬ、両方立てれば身が立たぬ
このことわざは、後ろに「両方立てれば身が立たぬ」と続けて言われることもあります。
一方を立てれば他方が立たず、かといって両方の顔を立てようとすれば、今度は自分の立場が保てなくなる、という意味です。
「顔を立てる」「面目が立つ」と同じく、ここでの「立つ」も面目や立場が保たれることを表しています。










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