失意泰然

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四字熟語 故事成語
失意泰然
(しついたいぜん)

7文字の言葉し・じ」から始まる言葉

受験に失敗したとき、大切な試合で負けてしまったとき。
あるいは、一生懸命準備したことが台無しになったとき、人は誰しも深く落ち込み、余裕を失ってしまうものです。
しかし、そんな逆境の最中にこそ、その人の真価が問われます。
思うようにいかない苦しい状況にあっても、あわてず、騒がず、どっしりと落ち着いて構えていること。
そのような揺るぎない心の在り方を、
「失意泰然」(しついたいぜん)と言います。

意味・教訓

「失意泰然」とは、思い通りにいかず落胆しているときこそ、あわてずゆったりと構えるべきだという教訓です。

この熟語を構成する言葉の意味は以下の通りです。

  • 失意(しつい):望みが外れてがっかりすること。
  • 泰然(たいぜん):物事に動じず、落ち着いている様子。

失敗したときに自暴自棄になったり、周囲に当たり散らしたりするのではなく、静かに次の機会を待つ強さを説いています。

語源・由来

「失意泰然」の語源は、中国・明(みん)代の学者、崔銑(さいせん)が記した「六然訓」(ろくぜんくん)にあります。

「六然訓」は、自身の修養のために定めた六つの行動指針です。
その最後に「失意のときは泰然とすべし」という意味で記された一節が、四字熟語として定着しました。

この教えは、江戸時代の儒学者・佐藤一斎(さとういっさい)が、その著書『言志四録』(げんししろく)の冒頭で紹介したことにより、日本でも広く普及しました。
武士や指導者層が、困難に直面した際の理想的な精神状態として、今日まで語り継がれてきた言葉です。

使い方・例文

「失意泰然」は、不運に見舞われた人を励ます際や、自分を奮い立たせるための座右の銘として用いられます。

例文

  • 志望校の判定が悪くても、彼は「失意泰然」として淡々と勉強を続けている。
  • 大会で初戦敗退を喫したが、監督は失意泰然とした態度で選手たちをねぎらった。
  • 「失敗したときこそ『失意泰然』であれ。取り乱しては次の手を見誤るぞ」と祖父に教わった。
  • プレゼンがうまくいかなかった日の夜、私は「失意泰然」と自分に言い聞かせ、温かいお茶を飲んで早く寝ることにした。

文学作品・メディアでの使用例

『言志四録』(佐藤一斎)

幕末の志士たちにも多大な影響を与えた、佐藤一斎による語録集です。
心の持ちようを説く「六然訓」の一節として、この言葉が登場します。

自処超然処人藹然有事斬然無事澄然得意淡然失意泰然

(自分自身についてはこだわらず、人に接するときは和やかに、事に当たるときはきっぱりと、何もないときは澄んだ心で、成功したときは淡々と、失敗したときはゆったりと構えるべきである。)

類義語・関連語

「失意泰然」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 不撓不屈(ふとうふくつ):
    強い意志を持って、どんな困難にもくじけないこと。
  • 明鏡止水(めいきょうしすい):
    邪念がなく、静かに落ち着き払った心境のこと。
  • 平然(へいぜん):
    物事に動じず、平気でいる様子。

対義語

「失意泰然」とは対照的な意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 右往左往(うおうさおう):
    混乱して、あっちへ行ったりこっちへ行ったりとうろたえること。
  • 意気消沈(いきしょうちん):
    元気をなくして、がっかりすること。
  • 自暴自棄(じぼうじき):
    希望を失い、自分の身を粗末にしたり投げやりになったりすること。

英語表現

「失意泰然」を英語で表現する場合、以下のようなフレーズが使われます。

Take it in one’s stride

  • 意味:「不運や困難を冷静に処理する」
  • 解説:予期せぬトラブルや失敗が起きても、慌てずに当たり前のこととして受け流すニュアンスです。
  • 例文:
    Even after failing the exam, she took it in her stride.
    (試験に落ちた後も、彼女は失意泰然としていた。)

Keep one’s chin up

  • 意味:「顔を上げておく」「意気消沈しない」
  • 解説:困難な状況でも希望を捨てず、毅然とした態度を保つことを意味する慣用句です。
  • 例文:
    Try to keep your chin up even in difficult times.
    (苦しい時こそ、失意泰然とした態度を心がけなさい。)

知っておきたい豆知識

「失意泰然」は、セットとなる得意淡然(とくいたんぜん)と併せて覚えることで、その真価がより明確になります。

これは「物事がうまくいっているときこそ、おごらずあっさりしていなさい」という教えです。
人間は、絶好調のときには慢心しやすく、絶不調のときには卑屈になりやすい生き物です。
だからこそ、崔銑や佐藤一斎は、その両極端な状況において「平常心」を保つことの重要性を説きました。

得意淡然、失意泰然」という八文字の教えは、プロ野球の監督や企業の経営者など、プレッシャーの激しい世界に身を置く人々にとって、自分を見失わないための究極のバランス感覚として愛されています。

まとめ

「失意泰然」という言葉は、私たちに「失敗した後の振る舞い」こそが重要であることを教えてくれます。
落ち込むのは自然なことですが、その感情に飲み込まれず、あえてゆったりと構えてみる。
そうすることで、状況を冷静に見つめ直し、次のチャンスを掴むための活路が見えてくることでしょう。
もしあなたが今、何らかの困難に直面しているのなら、背筋を伸ばし、深く息を吐いて、「泰然」としてみることから始めてはいかがでしょうか。

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